ゲームAIの技術とは?種類や活用例を解説!


2024年7月5日

近年あらゆる場面で活用されるようになっている「AI」は、実はゲームの分野では数十年前から広く利用されています。とはいえ、「ゲームAI」という名称に馴染みがない人は少なくないですし、その活用法や今後どのような影響を及ぼしそうなのかを知らない人も多いでしょう。

 

そこでこのコラムでは、ゲームAIとはなにか、という点から解説し、活用例などを紹介していきます。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

 

ゲーム業界で活躍する「ゲームAI」

この項目では、まず「ゲームAI」がどんなものかを解説し、さらに近年のゲームAI導入による変化や、ゲームの歴史や分類なども紹介します。

 

ゲームAIってなに?

そもそも「AI」とは、Artificial Intelligenceの略語で、日本語では人工知能と訳されています。社会一般で言うAIは、「人間が実現する知性や知覚を人工的に再現するための存在」と位置づけられますが、「ゲームAI」という言葉は少し文脈が異なります。

 

ゲームにおけるAIにはいくつかの種類がありますが、おそらく多くの人にとって分かりやすいのは、NPCを動かすAIでしょう。NPCとは、ノンプレイヤーキャラクターの略語で、プレイヤーが操作せず、プログラムで動くゲーム内のキャラクターです。そしてこのNPCにゲームのルールや流れにそって、もっともらしい動きをさせているのはゲームAIです。

 

上記のNPCを動かすAIのように、特定のタスクに限定した役割をになうAIを特化型AIと呼びます。一方、状況や場面を限定せず、多くのケースに自律的に対処できるAIを汎用型AIと呼びます。

 

ゲーム内に組み込まれているAIは特定の状況・動作に特化していますから、すべてのゲームAIは汎用型ではなく特化型AIであると限定して良いでしょう。

 

ゲームAIでゲームはどう変わったか

ゲームAIは機械学習と呼ばれる手法によって、大きく変化しました。機械学習とは、膨大なデータを読み込ませることでAIの目的に対する精度を上げる方法です。

 

機械学習の手法は1950年代にはすでに存在していますが、ビッグデータが扱えるようになった2010年代以降に大きな発達を見せています。

 

機械学習とAIの可能性を明確に示すものの好例に、将棋やオセロなどの対戦型戦略ゲームがあります。将棋やオセロなどにおいて、十分な機械学習をしていないAIは、状況に応じて戦術を選ぶことができませんし、過去の人間が積み重ねてきた「定石」を利用する能力もありません。しかし、オセロやチェスを行うAIに、戦術や人間のクセなどを機械学習によって大量に読み込ませると、歴史上の名勝負やさまざまな戦術を踏まえた打ち方ができるようになり、プロ選手にさえ勝てるような勝負が可能となります。

 

ゲームAIの歴史は意外に古い?

ゲームAIの歴史は実は非常に古く、1970年代後半に登場した「スペースインベーダー」や1980年にリリースされた「パックマン」にも活用されていたことがわかっています。そのため、ゲームAIはすでに半世紀に近い歴史をもっているわけです。とはいえ、1970年代当時はCPUのスペックが低かったこともあり、AIの機能や役割はごくシンプルなものでした。

 

1980年代は家庭用ゲーム機が一般に浸透していく中でゲームが複雑化し、NPCにゲームAIが活用されるケースが増えますが、それでもAIにできることはまだ少なく、固定的な動作がいくつかできる程度でした。

 

1990年代になると、ゲームの3D化や複雑化が進み、NPCに自律的な動きをさせるゲームAIが増えていきます。また、囲碁やチェスなどの戦略を要する対戦ゲームではAIの高度化が進み、少しずつプロ棋士がAIに勝てなくなっていきます。そして1997年にはチェスの世界チャンピオンがAIに破れていますし、囲碁でも2017年には最強と呼ばれた棋士がAIに3連敗するという事態が起こっています。これはAIが過去の対戦や人間が積み重ねてきた定石や戦術を学習して、複雑な手順を踏めるようになったからです。

 

そして2010年以降は、ゲーム内の動きを受け持つゲームAI以外に、ゲーム開発やデバッグにもAIが使用されるようになっています。

 

ゲームAIでできる主な3つの分類

ゲームAIは、主としてキャラクターAI、メタAI、ナビゲーションAIの3種類に分類されます。

 

キャラクターAIはNPCを動かすためのゲームAIで、ゲーム内の環境や場面にあわせて、自律的な動きを選択します。NPCはプレイヤーが直接目にする存在なので、ゲームAIが導入されていることを感じやすいのではないかと思います。

 

一方メタAIは、ゲームの展開やプレイヤーのレベルに応じて適切な敵キャラクターを登場させたり、ゲーム全体のバランスを調整したりするゲームAIです。ゲームの全体像を見てやるべきことを判断する特徴から、メタAIは「監督」と表現されることもあります。メタAIが発達したことによって、かつては開発者が手間暇をかけて行っていたゲームバランスの調整を担当させることも可能となっています。

 

ナビゲーションAIは、RPGなどでマップ上の地形を把握し、キャラクターAIとメタAIに移動をナビゲーションする目的をもっています。人間であればマップを見て目的の場所にキャラクターを移動させるルートを考え、ほかのルートを通りながら元の位置に戻ることは容易ですが、プログラムで動くNPCはそのような距離判断やルート取りが得意ではありません。そのためナビゲーションAIがその機能を補い、NPCの動作を違和感のないものにしてくれるのです。

 

ゲームAIを活用するメリット

ゲームAIを活用すると、NPCの動作や発言を人間らしくできますし、クリーチャーにリアルさを与えるなどしてゲームの臨場感を高めることも可能です。

 

また、プレイヤーのレベルにあわせて、難しすぎず簡単すぎないようにゲームバランスを調整することで、ユーザーの楽しみを高めたり、飽きさせない展開を維持したりすることに役立ちます。

 

ゲームAIを活用した代表作

この項目では、ゲームAIを有効活用した代表的なタイトルを紹介します。

 

『シャドウ・オブ・モルドール』

『シャドウ・オブ・モルドール』は2014年にワーナー・ブラザースがリリースしたアクションアドベンチャーゲームです。

 

敵キャラクターの成長や階級的上下関係、勢力の関係性などがゲームAIによって変動するように開発されており、プレイヤーは敵の成長や関係性を見ながら自分に有利になるように行動しなければなりません。

 

『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』

『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』はコナミが2015年にリリースしたタクティカル エスピナオージ オペレーションです。小島秀夫氏が監督を務めたことでも知られています。

 

このゲームでは、AIがプレイヤーの行動を踏まえて敵の動きを選択するので、プレイヤーは自分の動きに応じる敵に対応する必要があります。

 

「ファイナルファンタジーXV」

『ファイナルファンタジーXV』はスクウェア・エニックスが2016年にリリースしたRPGです。

 

このタイトルではゲームAIの主たる種類と言われるキャラクターAI、メタAI、ナビゲーションAIの3種類が活用されていることで、ゲームの流れが自然に仕上がっています。

 

ゲーム業界でのAIの活用例

この項目では、ゲーム業界でAIが活用されている活用例を紹介します。

 

AIによるキャラクター音声とモーションの作成

ゲーム内のキャラクターの音声やモーションの作成にもAIは活用されています。バーチャルなキャラクターの動きは、かつては不自然なものになりがちでしたが、人間の動作をモーションキャプチャでデータ化し、AIを使って生成させることで、キャラクターの感情にあわせた自然な動きができるようになっています。

 

プレイヤーの適切レベルでの対戦

プレイヤーがCPUと対戦する際、以前は簡単に勝てすぎたり、まったく歯が立たなかったりしてユーザーが楽しめない状況がしばしばありました。

 

しかしゲームAIを活用することで、プレイヤーのレベルにあわせた対戦が自然とできるようになっています。これによってプレイヤーは適切なレベルと対戦してスキルアップできますし、強力な相手や楽に勝てる相手との対戦を選択することも容易になりました。

 

チート行為の監視

オンラインゲームで行われるチート行為は、プレイヤーにとってもゲーム会社にとっても迷惑でしかありません。そのため近年は、AIを活用してチート行為の監視が行われています。

 

ゲームAIを活用するために必要なスキルとは

ここからは、ゲーム開発に携わる人にとってゲームAIを十分に活用していくために必要なスキルを解説します。

 

ゲームプログラミングの基礎知識

ゲームAIを活用する主たる職種はエンジニアです。エンジニアであるためには、そもそもプログラミングの基礎知識が必要です。

 

使用する言語は企業や開発内容によって異なりますが、RubyやJava、C++などの言語に関する基礎知識は習得しておくようおすすめします。

 

ゲームAIプログラミングの基礎

ゲームAIの開発で使用されることが多い言語としては、Pythonが代表的です。

 

Pythonは文法がわかりやすく、初心者でも比較的身につけやすいメリットがあります。また、PythonはAI開発に加えて機械学習でも使用されているので、今学んでおくことで将来的にも役立つ可能性が高い言語です。

 

ゲームの流行を把握する力と分析力

ゲームAIを十分に活用するには、ゲーム業界のトレンドを把握するスキルが必要です。近年多くのゲームがゲームAIを使っていますが、その使用方法はさまざまに異なるので、新たな潮流を把握するためにトレンドのチェックは欠かせません。

 

また、ゲームAIはゲームバランスを調整する機能ももっているので、どのようなプレイ感、プレイ体験のゲームがユーザーに受け入れられているのかも知っておく必要があります。

 

ゲームAIがゲーム業界の未来を支える存在に

ゲームAIは、現状メタAIやキャラクターAI、ナビゲーションAIなどのゲーム内のものとして活用されています。

 

このようにゲーム内での動きに関してゲームAIを活用していく場合も、さらなる発展が期待できます。たとえば当コラムの「ゲームAIを活用した代表作」の欄で紹介した『シャドウ・オブ・モルドール』や『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』のように、AIによってゲームの挙動が予測しにくいものになることで、過去にないゲーム体験を得られる可能性があります。

 

また、AIはゲーム内だけでなく、ゲーム開発の外側を支える存在としても期待されています。すでに今現在でもデバッグにAIを使うことは珍しくありません。従来はデバッグやテストに多くのマンパワーが投入されていましたが、AIは開発に手間をかけたとしてもトータル的なコスト削減に貢献します。

 

さらに、大量の情報から有益なデータを見つけ出すデータマイニングや、動作や挙動のシミュレーションにもAIは向いています。ほかにも開発支援や自動バランス調整、インターフェース用AIなど、さまざまな分野でAIが活用されることが期待できます。

 

このように多方面にAIの影響が及ぶようになれば、ゲームのあり方自体が変わっていく可能性もあります。より大きな可能性として、ユーザーの生体信号を読み込むことによって個々のユーザーにあわせたゲームが展開されれば、ゲーム体験が人によって全く異なるものになるかもしれません。

 

このように、ゲーム開発におけるAIの活用方法はまだまだ多くの可能性をもっているので、今後もゲームAIの発展から目が離せないのは確かです。

 

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