ドイツのゲーム会社を徹底解剖!有名な会社から今後の展望まで紹介
2025年3月13日
「ドイツのゲーム」というとボードゲームを想像する人が多いかもしれません。しかし、ドイツにはビデオゲームを開発・リリースしているゲーム会社も多数ありますし、世界的に有名なタイトルも存在します。
そこでこのコラムでは、まずドイツを代表するゲーム会社や代表作を紹介したうえで、ドイツゲーム業界のキャリア情報や今後の展望などを解説していきます。
ドイツに本社を置く有名ゲーム会社
ここではドイツに本社を置く有名ゲーム会社を厳選して4社紹介します。
Crytek(クライテック)
Crytek(クライテック)は1999年に、ドイツの中央部にある都市コーブルクで設立されています。2025年2月現在、本社はドイツのフランクフルトに位置しており、35ヶ国から集まった250人を超える人が働いています。また、本社以外にトルコのイスタンブールとウクライナのキーウにも拠点を置いています。
代表的タイトルとしては、「クライシス」シリーズ(リリースはElectronic Arts)、「ライズ:サン・オブ・ローマ」、「Tha Climb」などがあります。
また、Crytek(クライテック)はゲームエンジン:CryEngineも提供しています。CryEngineは高度なグラフィック制作機能を有しており、FPSやVRコンテンツの分野で高い評価を受けています。
Crytek - video game developer, makers of CRYENGINE
YAGER(ヤーガー)
YAGER(ヤーガー)は1999年に設立されたゲーム会社で、2025年現在、ドイツのベルリンに本社があります。
YAGER(ヤーガー)はゲームを愛する5人の友人によって作られた小さな会社でしたが、四半世紀を超える歴史の中で、30ヶ国以上から130人を超える従業員が結集する規模に成長しています。
YAGER(ヤーガー)の代表的タイトルとしては、「Dreadnought」、「Spec Ops: The Line」、「HYENAS」などがあります。
また、上記の「Spec Ops: The Line」はドイツゲーム業界で権威ある多数の賞を複数年にわたって獲得しており、YAGER(ヤーガー)のゲーム開発力を示しています。
公式サイト:YAGER - TRUE TO THE GAME
InnoGames(イノゲームス)
InnoGames(イノゲームス)は2007年にドイツの北側にある都市シュターデで設立されています。
InnoGames(イノゲームス)を設立したのは、Hendrik KlindworthとEike Klindworthの兄弟とMichael Zillmerの3人です。彼らはそもそも自分たちの楽しみでゲーム開発を行っていましたが、開発したゲームが好評を得たことでゲーム開発と運営に専念するために学業をやめ、イノベイティブなゲームを作る夢にかけました。その後InnoGames(イノゲームス)はモバイルゲームとブラウザゲームの両面で活躍するドイツ有数の企業に成長し、現在では350人超の従業員を抱える規模になっています。
InnoGames(イノゲームス)の代表作としては、「Forge of Empires」、「Sunrise Village」、「Heroes of History」などがあります。
公式サイト:Free Online Games - Play Strategy Games and RPG Online for free!
Deck13 Interactive(デック13)
Deck13 Interactive(デック13)は、Armin Burger、Florian Stadlbauer、Frank Föhl、Jan Kloseの4人が2001 年に設立した企業です。2000年代にポイント&クリックアドベンチャーゲームでヒットしたことで会社としての位置を確立、その後RPGでもヒット作を得てアクション指向も取り入れていきます。
さらに、ハンブルクに2つ目のスタジオを設置、アクションRPG「Lords of the Fallen」が世界的にヒットしたことでドイツを代表するゲーム会社に成長し、現在は80人を超える従業員が働いています。その後はインディーズ デベロッパーにも手を貸すなどしながら、Deck13 Interactive(デック13)は現在も発展を続けています。
Deck13 Interactive(デック13)の代表作としては、「The Surge」シリーズ、「TransOcean」シリーズ、「Lords of the Fallen」などがあります。
公式サイト:Deck13 Interactive |
ドイツに拠点を持つ海外の有名ゲーム会社
ドイツには海外の有名ゲーム会社の拠点も複数あるため、以下で代表的な2社を紹介します。
Ubisoft Germany
UbisoftはGuillemot 兄弟が1986年に設立した会社で本社はフランスにありますが、ドイツ西部にある都市デュッセルドルフにUbisoft Central Europeという拠点を置いています。Ubisoftは世界各地に拠点があり、全体で21,000人もの従業員をもつ巨大ゲーム会社です。
代表作としては、「アサシンクリード」シリーズ、「レインボーシックスシージ」、「STARWARS OUTLAWS」などがあります。Ubisoftは多数のゲームを開発・リリースしていますが、特にアクションゲームやFPS系のタイトルが有名です。
公式サイト:Ubisoft Central Europe
Electronic Arts Germany
Electronic Artsは1982年に設立されており、本社をアメリカ カリフォルニア州レッドウッドシティに置くゲームソフトウェア開発会社です。世界各地に拠点を置くグローバル企業ですが、ドイツではケルンに拠点を置いています。この拠点には、開発機能だけでなくパブリッシング機能があるほか、財務や人事などの部署も設置されています。
Electronic Artsは40年以上の歴史をもつゲーム会社なので有名作品は多数ありますが、代表作としては「Apex Legends」、「シャドウ オブ ザ ダムド」、「StarWars」シリーズなどがあります。
公式サイト:エレクトロニック・アーツの拠点 - EA公式サイト
ドイツのゲーム会社が開発した注目タイトル
ここからは上記で紹介したドイツのゲーム会社が開発した注目タイトルを紹介します。
1. Crysisシリーズ(Crytek)
「Crysis」シリーズはCrytekが開発した代表作のひとつで、リリースはElectronic Artsが行っています。第1作目は2007年にリリースされて世界的に好評を得たため、その後シリーズ化され3作目まで作られています。
シリーズに共通するのは、ナノスーツと呼ばれる強化武装を装着して行うバトルですが、戦う相手はエイリアンや人間などさまざまです。
リアルなグラフィックと先が気になるストーリー展開、ナノスーツの機能を使ったバトルなどが特徴で、世界的にヒットしたアクションFPSのひとつです。
公式サイト:「クライシス」シリーズ - EA公式サイト
2. Spec Ops: The Line(YAGER)
「Spec Ops: The Line」は「Spec Ops」シリーズの1作で、ドイツのYAGERが開発し、2K Gamesが2012年にリリースしています。ジャンルとしてはTPSで、荒廃したドバイでのリアルな戦闘が魅力です。
映画「地獄の黙示録」を思わせる戦争の無残さを克明に描いたことや、ストーリーテリングの見事さなどでカルト的な評価を得た怪作です。
また、ジミ・ヘンドリックスなどの有名ミュージシャンの音楽が起用されていたことでもSpec Ops: The Lineは話題になりました。
3. The Surgeシリーズ(Deck13)
「The Surge」シリーズは、ドイツのDeck13が開発、海外ではFocus Home Interactive、日本ではオーイズミ・アミュージオがリリースしています。ジャンルとしてはアクションRPGで、荒廃した未来社会で生き残りをかけて戦います。バトルや武装強化の面白さだけでなく、謎解き要素も楽しめる点も魅力です。第1作目は2017年、第2作目は2019年にリリースされています。
「The Surge」シリーズはマシンオイルと錆の匂いがしてくるような重機系アクションですが、ホラー味もあることから、ソウルライクなゲームとしても人気があります。
ドイツのゲーム業界における求人・キャリア情報
この項目では、ドイツのゲーム業界における求人やキャリア情報を記載します。
ドイツのゲーム会社で働く魅力とは?
ドイツは平均的に日本より給与水準が高く、労働条件も良いとされています。また、欧米諸国の中では比較的就労可能なビザが取りやすい点で、ドイツは海外からの労働者に人気が高い国としても知られています。
ドイツ語での会話が基本なので、英語ができるだけでは難しいですが、IT系やゲーム開発関連の技術があれば語学の苦手さが緩和されることもあり得ます。また、決して多いとは言えませんがドイツのゲーム会社でも日本語対応ができる人を求めることもあるので、ドイツでの就労を目指すなら日本語が生かせる職場を目指す手もあります。
さらに、ドイツは日本より休みが多いため、ワークライフバランスを優先する人にとっては高い魅力があります。
日本人がドイツのゲーム会社で働くためのポイント
日本人がドイツのゲーム会社で働くために特に重要なのは、ビザ取得、言語スキル、ゲーム開発スキルですが、言語とゲーム開発スキルについては次項で解説します。
ドイツに長期的に住んでいる家族がいる場合やドイツ国籍の人と結婚する場合などはビザが取りやすいですが、そうでなければ就労先を先に決めてビザ申請するのが一般的です。
ドイツでは日本のように新卒者を採用して育てるより、必要な業務のためにスキルがある人を採用する傾向が強いため、エントリーする際はゲーム開発スキルをしっかりアピールしましょう。ドイツでは日本の学歴はほとんど意味を持たないので、ポートフォリオや開発実績などで実力を見せることに集中してください。
求められるスキルとキャリアパス
ゲーム開発者として転職するのであれば、ゲーム開発スキルは欠かせません。とはいえ、求めるスキルは会社によって異なるので、まずエントリーする企業の応募条件を熟読してスキルに不足がないかを確認してください。
また、日本では謙虚に振る舞うことや聞かれたことに順次答えていくことが美徳とされますが、ドイツでは異なります。ドイツ人は聞かれないことでもアピールする傾向が強いので、聞かれなくても自分のスキルをどんどん提示しましょう。
また言語スキルは英語、ドイツ語ともにビジネスレベルに達していることが必須と考え、しっかり学習してください。
ドイツのゲーム業界における今後の展望と課題
この項目では、ドイツのゲーム業界の市場や今後の展望について解説します。
市場拡大に向けた動向
アプリプロモーションサービスASO Worldが2023年9月に出した「2023年ドイツのモバイルゲーム市場動向」の報告によれば、ドイツのゲーム産業が長期的に成長を続けており、その勢いは衰えそうにないと記されています。その要因となるプラス要素としては、スマートフォンやインターネット速度の向上、コンテンツクリエイターやストリーマーのコミュニティの成長、eスポーツ熱の高さなど、複数あげられています。
これらのことから、ドイツのゲーム市場は開発者とユーザーの双方にとって宝の山であり、今後も成長が期待できます。
政府支援と業界の成長戦略
ドイツ政府は2020年9月から、国内のゲーム企業を支援し競争力を高めるための手段として、開発費の最大50%まで資金を提供し、返済も不要という強いサポートを行いました。ヨーロッパではゲーム産業への支援を行う国は多いですが、これほどの規模での支援はめったにありません。
また、ドイツのゲーム産業協会は自国のゲーム産業発展のために、2022年11月に2,000万米ドルもの投資を行っています。
まとめ
ドイツを代表するゲーム会社やドイツ発の有名タイトルを紹介し、ドイツゲーム業界のキャリア情報やドイツゲーム業界の展望などをまとめました。
ドイツのゲーム会社やドイツで開発されたゲーム、と言われても思い浮かばない人も多いかと思いますが、実はドイツはヨーロッパでも有数のゲーム大国です。日本以外の国でゲーム開発に関わりたいと思う人は、この機会にドイツのゲーム会社への転職を検討してみてはいかがでしょうか?