「メタスコア」とは?ゲーム評価の指標と開発・マーケにおける活用法を解説
2025年6月25日
ゲームに関する情報を調べていると、「メタスコア」という言葉を見聞きすることがあるかもしれません。しかし、「意味はよくわからない」、「知っているつもりでも、実際にはよく知らない」という人も多いようです。
そこでこのコラムでは、まずメタスコアの定義や仕組み、算出方法などを解説し、さらに評価基準や信頼性、高評価のゲームも紹介します。メタスコアへの理解を深められる内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。
メタスコアとは?ゲーム業界での位置づけ
ここではまず、メタスコアの定義や仕組みを紹介します。さらに、算出方法のほか、メタスコアを公表しているMetacriticについても解説します。
メタスコアの定義と仕組み
メタスコアとは、レビュー収集サイトであるMetacriticが公表している音楽、映画、テレビ番組、ゲームなどに関する評価点を指します。点数は0~100で表示され、数字が大きいほど高評価です。
ゲームの評価は5段階で、90~100点が「普遍的な称賛」、75~89点が「一般的に好意的」、50~74点が「賛否両論、または平均的」、20~49点が「一般的に否定的」、0~19点が「圧倒的な嫌悪感」という形で分けられています。また色による識別もあり、高評価の2段階は緑、中間が黄色、低評価の2段階は赤で表示されます。
どのようにスコアが算出されているのか
メタスコアは、Metacriticが多数のレビューを収集して評価点を算出しています。しかし、詳細の計算方法は公開されておらず、独自のアルゴリズムに基づいていることがわかっています。とはいえ、複数のレビューのスコアを単純平均したものではないことが示されています。Metacriticの公式説明によれば、レビューを掲載するメディアの信頼性を考慮した上で、加重平均を用いて算出すると説明しています。
加重平均とは、平均値を出す際に参照する数値に何らかの規則性で重みを加える計算方法です。メタスコアのケースでは詳細は明かされていませんが、より信頼性が高いレビューの数値が重く扱われる仕組みとなっています。
たとえば学習成績で、英語が80点、数学が60点の場合、単純平均では70点になります。しかし取得できる単位数が英語は2、数学が1である場合、その重みを考慮した加重平均は以下の算式で求めることができます。
(80点×2単位+60点×1単位)/(2単位+1単位)=73.3点
仮にゲームAを批評家Bが80点、批評家Cが60点と評価し、平均70点となったとします。そこに批評家Bの信頼度の重みが1.5、批評家Cの信頼度の重みが1となると、このゲームの加重平均スコアは(80点×1.5+60点×1)/(1.5+1)=72点と算出されます。
「Metacritic」とは何か?他のスコアとの違い
メタスコアを公開している「Metacritic」は、米国カリフォルニア州に本社を置いているレビュー収集サイトです。設立は1999年で、2025年現在はCBS Interactive社の傘下にあります。
ゲームを評価するスコアは多数存在するので一概に比較はしにくいですが、単一メディアの単純平均ではない点が、メタスコアを独自の指標にしています。
当コラムではゲーム単体の評価について記述していますが、Metacriticはゲームパブリッシャーランキングも発表しており、その意味でもゲーム業界に影響をおよぼしています。ちなみに2024年のゲームパブリッシャーランキングでは、セガが1位、カプコンが2位、ソニーが4位、スクウェア・エニックスが6位と、数多くの日本のゲーム会社が上位に輝いたことで大きな話題となりました。
メタスコアの評価基準と信頼性
ここではメタスコアがどのように評価基準を選定しているかを解説し、信頼性やユーザースコアとの違いについても言及します。
掲載されるメディア・レビュアーの選定基準
メタスコアを算出し公表しているMetacriticは、常に質の高いレビューを掲載するよう努めており、信頼できるレビュー提供元を選定し、必要に応じて削除も行うと明言しています。そのようにして選出されたメディアやレビュアーの評価に重みをつけ、信頼性が高いメディアやレビュアーの評価が反映させやすくすることで、スコアの信頼性を確保しています。
また、メタスコアは英語メディアを中心に評価対象としているため、日本で大きな人気があるゲームであっても評価自体が行われない場合があります。
「ユーザースコア」との違い
ユーザースコアは、ゲームに対する一般ユーザーの評価を数値化したものなので、評価基準が一貫しているとは限りません。職業的批評家にも評価基準に個人のばらつきはありますが、専門家としての一貫性はあるでしょうから、専門性があるレビューから算出されたメタスコアとユーザースコアは、そもそも評価の前提や観点が異なります。
そのため、ユーザースコアとメタスコアに大きな乖離が生じることは珍しくありません。この場合、一概にどちらが良いとは言えないので、多くのスコアを見て総合的に参考にするか、自分にとって信頼できるスコアを探すか、ぜひこの機会に検討してみてください。
代表的なメタスコア高評価ゲーム
ここではメタスコアで高評価されたゲームを、日本製のものと海外製のものをいくつか紹介します。
代表的な高評価日本製ゲーム
日本製のゲームのなかにもメタスコアで高評価を得ているものがあるので、いかに高得点の3タイトルを紹介します。
・エルデンリング
メタスコア評価:97点
開発会社:フロムソフトウェア
ゲーム概要:2022年にリリースされたオープンワールドアクションRPGで、フロムソフトウェアならではの「死にゲー」としても有名です。世界の主要アワードで、Game of the Year4冠を獲得するほど高い評価を受けています。
・ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド
メタスコア評価:97点
開発会社:任天堂
ゲーム概要:2017年にリリースされたオープンワールドアクションアドベンチャーゲームです。2025年3月時点で3,281万本の販売実績を記録しているビッグヒットタイトルです。各タイトルが高い人気をもつ「ゼルダの伝説」シリーズの中でも、本作を最高傑作とする人は多いです。
・ペルソナ5 ザ・ロイヤル
メタスコア評価:95点
開発会社:アトラス
ゲーム概要:2016年にリリースされた「ペルソナ5」の完全版として2019年にリリースされました。本作は、「PlayStation PARTNER AWARDS 2023 JAPAN ASIA」で「USERS’ CHOICE AWARD」をはじめとする多数の賞を獲得しており、国内外を問わず高く評価されています。
代表的な高評価海外製ゲーム
以下では、海外で製作されたゲームで、メタスコアで高評価されたものを紹介します。
・レッド・デッド・リデンプション2
メタスコア評価:97点
開発会社:ロックスターゲームス
ゲーム概要:2018年にリリースされたアクションアドベンチャーゲームです。2023年には累計出荷本数5,500万本を突破しています。また2018年のThe Game Awardで4部門で受賞するなど、セールスと評価の両面で存在を示すタイトルです。
・グランド・セフト・オートV
メタスコア評価:97点
開発会社:ロックスターゲームス
ゲーム概要:2013年にリリースされたタイトルでジャンルとしてはオープンワールドクライムアクションゲームに分類されます。2024年時点で全世界累計出荷本数1億9,500万本を突破するほどの人気を誇っています。
・The Last of Us Part II
メタスコア評価:96点
開発会社:ノーティドッグ
ゲーム概要:2020年にリリースされたサバイバルホラーゲームです。シリーズ前作が好評だったこともあり、発売から3日間で、全世界で400万本を売り上げる快進撃が話題となりました。
開発・マーケティング視点で見るメタスコアの意味
この項目では、ゲーム開発者やゲーム会社のマーケティング視点からメタスコアの意味や位置づけを解説します。
海外市場でのプロモーション指標になる
メタスコアを公開しているMetacriticはアメリカに本拠地を置いていますし、メタスコアの影響は日本よりも英語圏の方が大きいとされています。そのためメタスコアは、自社タイトルが海外市場で受け入れられるかどうかの指標になります。
仮にメタスコアで高評価を受けていればマーケティングがしやすいですし、そうでない場合は異なるマーケティングを検討する契機になります。
パブリッシャー・投資家にとっての指標になる
メタスコアはパブリッシャーや投資家にとって、資金を投下するかどうかの基準にもなっています。メタスコアは信頼性が高い評価基準であることが市場で知られているため、高評価を得ているタイトルなら大きく資本投下しても回収しやすいからです。
逆のパターンとして、メタスコアで評価が低かった場合は続編の製作予定があってもお蔵入りしてしまうこともあるそうです。
SteamやSNSとの連携効果が期待できる
世界的ゲームプラットフォームのひとつであるSteamでは、メタスコアを参照することができます。そのため、メタスコアで高評価を取ることはSteamでの売り上げ増加に繋がります。
また、メタスコアのMUST-PLAY表示があるタイトルはプレイされやすいだけでなく、インフルエンサーが取り上げる可能性が上がるので、SNSや実況動画などでも取り上げられやすく大衆への認知向上が期待できます。
メタスコアの限界と注意点
メタスコアによるゲーム評価は信頼性が高く、権威性もあるとされています。しかしその一方、限界や注意点もあるので以下で解説します。
批評家とプレイヤーの評価の乖離
メタスコアの評価は信頼性の高いレビューに基づくという前提があるため、批評家など専門性を持つ人の意見が強く反映されがちです。その結果、プレイヤーの評価と大きく乖離が生じる場合があります。
たとえば、2015年にタートル・ロック・スタジオがリリースした「Evolve」はメタスコアで80点程度の評価を得ており、この数値を見ると比較的良作であると誰もが思うでしょう。しかしユーザーレビューでは5段階評価で2~2.5程度の厳しい評価となっています。
ただし、これはメタスコアが信頼できないということではありません。批評家とプレイヤーでは視点が異なるので、評価が分かれるのはむしろ当然でもあります。そのため大前提として、メタスコアの評価は概して批評家寄りだと捉えて活用する方が良いでしょう。
さらに、批評家と多くのプレイヤーの評価が一致していても、当コラムを見ているあなた自身の評価が異なることもあるでしょう。また、海外のゲームが日本でプレイされることが増えた昨今であっても、日本人と欧米人の好みが一致しているとは言い難い実情があります。そのため、海外発の評価基準であるメタスコアと日本人の評価に乖離が生じるのは、無理のないことです。
これらを踏まえると、メタスコアは業界全体から見れば信頼できる指標ですが、個人の感じ方と一致するとは限りません。こうした性質を理解したうえで参考にすることをおすすめします。
海外市場と日本市場におけるメタスコア影響の違い
そもそもメタスコアは、海外の文化に強いMetacriticがレビューを収集して作った評価システムであり、特に英語圏への影響力が大きいのが特徴です。そのためメタスコアは欧米の市場では絶大な影響をもっています。しかしその一方、日本では参考にされることはあっても、市場を大きく左右するほどの存在とはまだ言えません。
これらの実情を総合的に見ると、個人プレイヤーとしては「メタスコアは海外の批評家に高く評価されるゲームの指標」と受け取ることで、過剰に期待したり、落胆したりすることを避けやすくなるでしょう。
また、ゲーム開発者やマーケターとしてもメタスコアは海外市場に関わる際の目安であり、日本での評価とは別ものと考えた方が無難です。
まとめ
ゲームの評価指標として知られるメタスコアについてまとめました。メタスコアはアメリカに本拠地を置くレビューサイトMetacriticが、独自の取り組みによって算出しているスコアです。
映画や音楽、テレビ番組などのスコアも公表していますが、特にゲームの評価に高い信頼性を持っています。その影響は海外市場で非常に強く、特に欧米のゲーム市場ではメタスコアの得点がゲームの続編制作の指標となることも珍しくありません。
ただし、日本の市場では限定的な影響しかないことや、メタスコアの評価は批評家寄りであり一般ユーザーの評価と大きく乖離するケースもあるなど、絶対的な存在ではありません。そのため、特徴を理解したうえで、ゲーム選びや開発、マーケティングの参考にすることをおすすめします。