ゲームバランスとは?開発者とマーケターが押さえるべき設計の本質と調整の実践


2025年6月25日

「ゲームバランス」はゲームの面白さを左右するので、ゲーム開発において非常に重要な位置を占めます。しかし、「ゲームバランスの調整は難しい」と言われることも多く、開発者やマーケターが苦労しがちな点でもあります。

 

そこでこのコラムでは、まずゲームバランスの定義を明確にしたうえで、ゲーム開発者やマーケターに役立つ知識を多数紹介します。

 

ゲームバランスとは

このコラムの内容を正しく読み取っていただくために、ここではまず「ゲームバランス」という言葉の定義を明確にします。

 

ゲームバランスの基本定義

ゲームバランスとは、ゲームを成立させるための基準です。たとえばストーリーの先を見るためにボスキャラを倒す必要があるのに、どうやっても倒せないようなボスが実装されていてはそのゲームが成り立ちません。

 

また、プレイヤブルキャラクターの中に欠点がなく1人で常に無双できるキャラクターがいる場合、そのキャラクター以外では勝利できない(もしくはそのキャラクター以外を使う理由がない)ので、結果的にゲームの面白さを失ってしまいます。

 

ゲームバランスをゲームの難易度として説明するコラムもありますが、近年はオンラインの対人戦を主とするゲームも多いので、ゲームバランスという言葉は難易度だけに限定されません。

 

ゲームを運営していく中では好ましくないバランスが生じることがありますが、それが意図しないものである場合、ゲームを提供する側はバランス調整を行って想定したバランスに戻します。

 

ゲームバランスの分類と調整対象

ここからはゲームバランスの分類や調整の対象となる項目を紹介します。ゲームによって考えるべき項目は異なるので、必要に応じて参照してください。

 

PvEバランス

PvEとは、Player vs Environmentの略語で、プレイヤーがシステム(コンピューター)と対戦する形式です。「FINAL FANTASY XIV」や「ドラゴンクエストX」、「エルデンリング ナイトレイン」など、この分野にも多数のヒットタイトルがあります。(一部、PvPを含むコンテンツもある)

 

PvEのゲームで問われるバランスは複数ありますが、代表的なのは難易度です。プレイヤーの対戦相手はプログラムで強くも弱くも作れますが、強すぎても弱すぎてもゲームは面白くありません。また、ゲームの序盤と後半では、キャラクターの育成度やプレイヤーの技能が変わっていますから、どの程度の強さが適当なのかは局面や進行によって変わります。

 

難易度のバランス設定が重要なのは、バトルがない謎解き系やパズル系のジャンルでも同様です。

 

PvPバランス

PvPとは、Player vs Playerの略語で、プレイヤー同士が対戦するスタイルです。「VALORANT」や「リーグ・オブ・レジェンド」、「ストリートファイター6」などが該当します。PvPを主とするゲームにPvEが実装されているケースもありますが、ジャンルとしては、FPSやTPS、パズルゲームや格闘ゲームなどで多く見られます。

 

アイテム・スキル・職業の相互関係

アイテムやスキル、職業などはプレイヤーにとっては強い方が良いですが、強い要素と弱い要素を盛り込む必要があります。たとえば大火力であれば連射できない、機動力が高い職業は殺傷力を低めに設定する、といった形でバランスを取らないと、強すぎるケースができてしまうからです。

 

弱い部分があることはプレイヤーの工夫に繋がるので、適切に盛り込むことで戦闘を盛り上げる要因になります。

 

ゲーム内経済と報酬設計の調整

多くのゲームにはアイテム購入などに使う通貨が存在しますし、何らかの条件をクリアすれば報酬も与えられます。そして通貨や報酬に関してもバランスの調整が重要です。ゲーム開発者が考えるべきなのは、プレイヤーが通貨を獲得する手順や量、消費手順とメリットのバランスです。

 

ゲーム内通貨の獲得に関しては、プレイヤーが使うリソースや獲得条件の難易度設定が重要です。通貨の入手方法が複数あり、効率的な方法があるとわかった場合、プレイヤーはその手段以外を選ばなくなります。するとせっかく用意したのにプレイヤーが訪れないクエストができてしまうので、この点でもバランスが重要です。

 

また、通貨の使い方はアイテムの獲得のほかにゲーム内の生命や行動回数の補充など多岐にわたります。プレイによって得られる通貨が適度に不足すると、課金してゲーム内通貨を得ようとする契機となるので、このバランス設計は収益に大きく影響します。

 

よくあるバランス崩壊の事例とその回避策

ここからは、ゲームで起こりがちなバランス崩壊の事例やその回避策を紹介します。

 

特定の職業(キャラ)だけが突出して強い

対戦システムがPvEでもPvPでも、極端に強い職業(ロール)やキャラクターがいるとゲームバランスが崩れがちです。PvEにおいてはエンドコンテンツとして非常に強いボスキャラが実装されることがありますが、それでもそのボスキャラは、特定のレベルに達することなどの条件を満たせば倒せる相手でなければなりません。

 

またPvPの場合、すべての職業やキャラクターが強い面と弱い面をあわせもつ必要があります。扱っているキャラクターの弱点を知ってそれをカバーする戦闘方法を検討することがプレイヤーの楽しみとなるからです。

 

スキル・装備などによる数値がインフレしすぎた

オンラインゲームやソーシャルゲームを運営していく中では、スキルや装備、キャラクターの強さなどが少しずつインフレ方向に向かいます。展開を盛り上げるためには、プレイヤーが強くなっていくことが欠かせないからです。

 

しかし、PvPのゲームで突然極端なインフレが起きると、特定のキャラクターや装備をもっている人だけが強くなって対人戦の公平さが失われます。すると勝てなくなったプレイヤーからの批判が殺到したり、ゲームから離れてしまったりするのでゲームの存続に関わります。

 

残存するバグによるバランス崩壊

ゲーム会社は致命的なバグがないようにデバッグの工程を設けますが、それでもバグのすべてをなくすことは容易ではありません。そして時には、バグによってゲームバランスが崩れてしまうこともあります。

 

実際に「ドラゴンクエストV」などでは、アイテムを無限に増やせるバグが存在しました。また、「ポケットモンスター赤・緑」では極端に強い技やバグが複数存在しており、これは開発者が意図しないものだったとされています。

 

また近年でも、「モンスターハンターワイルズ」で特定の条件下でのみ発動するスキルの無限発動が可能となるバグが発見されており、ゲームバランスを崩すバグは必ずしも過去の話ではありません。

 

ゲーム開発を行ううえでバグをゼロにする方法はありませんから、適切な時間やリソースをかけてデバッグやテストを行うこと、デバッグコードなどのバグを発見する仕組みを利用することなどが重要です。

 

ゲームバランスを壊す「バランスブレイカー」とは

ゲームバランスを崩す要素を「バランスブレイカー」と呼びます。ここではバランスブレイカーについて、ゲーム開発者として知っておくと役立つ知識を紹介します。

 

初心者救済要素とバランスブレイカーの違い

リリースからある程度の時間がたって新規参入するプレイヤーは、操作スキルや育成度合い、アイテム所持数などで劣るので、先にプレイしている人たちに全く歯が立ちません。しかし、ゲームを運営し利益を上げていくうえでは、常に新規参入者を呼び込む必要があります。

 

そのため多くのオンラインゲームには、新規参入者が古参者との差をマイルドにするための、初心者救済要素が存在します。

 

ただし、初心者救済要素は中級程度までしか有効性がないように設計されており、バランスブレイカーとは異なります。つまり、初心者救済要素があっても、新規参入者が上級プレイヤーを無双するようなことはありません。

 

バランスブレイカーを産まないためのポイント

バランスブレイカーを生まないためには、急激な強さのインフレを作らないこと、火力や機動力などの数値設計を根拠をもって行うことなどに注意を払いましょう。

 

また、テストプレイやフィードバックを徹底して想定外のバランスを生まないこと、キャラクターの特徴を生かして強さと弱さの配分を忘れないことが重要です。

 

ゲームバランスを維持するためのポイント

ここからは、ゲームのバランスを適正に維持するために役立つ知識を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

ゲームバランスが優れたタイトルのメカニズム分解・勉強

既存のゲームでゲームバランスが優れたタイトルは複数存在しますから、そのメカニズムを学習することをおすすめします。

 

たとえば「モンスターハンターライズ:サンブレイク」は、シリーズ内でも武装バランスが優れていると評価されています。

 

また、「ストリートファイター6」は、初期には大規模なバランス調整は年に1回程度と告知されていましたが、実際にはより多くのバランス調整が行われています。オンラインゲームは要素が増えていく前提なので、運営しながらバランス調整していく体制も欠かせません。

 

ゲームデザイナーと数値担当のすり合わせ

会社やプロジェクトによって違いはあるかと思いますが、ゲームバランスを考えるうえでの責任者はゲームデザイナーです。しかし、実際に戦闘力や防御力などの数値を扱うのは担当者であるため、この両者の考え方に違いがあるとゲームバランスが崩れがちです。そのため、ゲームデザイナーと数値担当者のすり合わせはしっかり行いましょう。

 

リリース前の綿密なテストプレイ

ゲームをリリースする前には、綿密なテストプレイを行うことを推奨します。テストプレイはバランスブレイカー対策として有効ですし、バグの発見や操作性のアップにつながるので非常に重要です。

 

定期的なユーザーからのフィードバック参照

ゲームバランスを適正に保つには、ユーザーからのフィードバックを定期的に拾い上げ、調整に活かすことも欠かせません。もちろん開発者やテスターもバランスへの配慮を行っていますが、実際にプレイするユーザーの感覚は無視できないからです。

 

バランス調整のタイミング

この項目では、ゲームバランスを調整するタイミングを、オンラインゲームとオフラインゲームのそれぞれで解説します。

 

オンラインゲーム・ソーシャルゲームの場合

オンラインゲームやソーシャルゲームの場合、定期的にメンテナンスが行われるので、その際にバランス調整を行うことが一般的です。重大なバグが残存しゲームバランスやゲーム内経済に大きな影響を与えてしまった場合、緊急メンテナンスやロールバックが行われることもあります。

 

オフラインゲームの場合

オフラインゲームの場合、リリース前かDLCリリース時などしかバランス調整はできません。そのため、オンラインゲーム・ソーシャルゲームより調整頻度は少ないのが一般的です。

 

しかし最近は、オフラインゲームといってもそれを遊ぶハードが常にネットワークに接続されているケースが多いため、定期的なパッチファイルをリリースすることも珍しくありません。

 

ゲームバランスとマーケティングの関係性

ゲームバランスはゲームを楽しむためのものと受け取られがちですが、実はマーケティングとも関連しています。この項目では、その点を明確にしていきます。

 

ゲームバランスとユーザーレビューの相互関係

ユーザーレビューはゲームを新たにプレイする人にとって入手検討の指標になるので、ゲーム会社としてはマーケティングの要素として無視できないものとなっています。また、ユーザーレビューの中にはゲームバランスについて記述されることもあるので、その点もしっかり抽出しバランス調整の検討要素にする必要があります。

 

限定ガチャなど課金を促すイベントとゲームバランスの関係性

ユーザーにとっては無課金や微課金で長く楽しめるゲームバランスが望ましいかもしれませんが、基本無料でアイテム課金などから収益を得るゲームの場合、適度な課金に誘導する必要があります。ただし、課金圧力が強いゲームはユーザーの非難を買いやすいため、この点でもバランスが重要です。

 

限定ガチャへの魅力的なキャラクターの投入や、強力なアイテムを得られるイベントを行うなどして射幸心を煽ることも欠かせませんが、プレイで得られる無償通貨などで購入のハードルを下げるなど、自然に課金に導く工夫も取り入れましょう。

 

まとめ

ゲーム開発者とマーケターに向けて、ゲームバランスの定義や崩壊しがちな事例などを紹介しました。ゲームバランスが崩壊するとそもそもゲームが成り立ちませんし、SNSなどで批判が強まれば一斉にユーザーが離れるリスクもあります。

 

またその一方で、ゲームバランスは無理なく課金に誘導するためにも検討すべきなので、マーケティング的にもしっかりと設計する必要があります。ユーザーに楽しみを提供しつつ利益回収するためにも、ぜひ当コラムを役立ててください。

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