【ゲーム業界向け】プロデューサーとディレクターの違いとは?仕事内容・年収・向いている人
2025年7月29日
ゲーム開発において、プロデューサーとディレクターはどちらも欠かせない存在です。しかし、「仕事内容の違いはわからない」、「年収はどちらが多いのか知りたい」と思う人も多いでしょう。そこでこのコラムでは、ゲーム業界で働く人向けに、プロデューサーとディレクターの違いを、仕事の内容や年収など、さまざまな角度から解説します。
プロデューサーとディレクターの違い
まずは多くの業界に共通するプロデューサーとディレクターの違いを解説します。なお、ゲーム業界に限定したこの2職種の違いは、本コラムの「ゲーム業界におけるプロデューサーとディレクターの役割と求められるスキル」の項目で詳しく解説します。
プロデューサー:プロジェクトの総責任者
プロデューサーは企画立案の時点から、プロジェクトの総責任者として活動します。たとえば資金調達やスポンサーとの折衝、プロジェクトメンバーの選出、全体のスケジュール管理や品質の管理など業務は多岐にわたります。
プロデューサーとディレクターの上下関係は会社やプロジェクトによって異なる場合はありますが、多くの場合プロデューサーが上位職です。
ディレクター:現場の司令塔
ディレクターは現場責任者として制作上の指揮を執ります。プロデューサーも品質管理の責任者ではありますが、プロデューサーは大枠の指示を出すのに対して、ディレクターはその指示を現場の作業に落とし込んで、クリエイターたちに細かい指示を与えます。
そのため、制作業務の詳細を理解している必要があり、スペシャリストとして技術を高めた人が目指す職種です。
業界別・プロデューサーとディレクターの業務の違い
この項目では、プロデューサーとディレクターの違いを3種類の業界別に解説します。
IT業界
IT業界においても、プロデューサーが企画立案や全体の進行管理などを行うことに対して、ディレクターは企画を遂行するために、制作を具体的に管理します。
ただし、IT業界の中にはプロデューサーとディレクターという職種が存在せず、プロジェクトマネージャーが両方の役を兼ねる場合もあります。また、Web系ではWebプロデューサーとWebディレクターという職種があるものの、Webディレクターが企画に参加するなど、ほかの業界よりディレクターの業務範囲が広い傾向が見られます。
広告業界
広告業界でも、プロデューサーはプロジェクトの総責任者です。クライアントからの要望を把握し、それに沿う企画を立て、プロジェクトメンバーの選出や予算・スケジュールの管理などを行います。
一方、ディレクターも技術的な分野の責任者であるという点で他業種と同様です。ただし、広告業界ではアートディレクターやクリエイティブディレクターなど、分野ごとのディレクターが存在する傾向が強いようです 。
テレビ業界
テレビ業界でもプロデューサーが企画や全体の統括、ディレクターが現場指揮を行う構図は変わりません。
プロデューサーは番組の企画立案、制作陣や出演者の選出、全体予算や工程の管理などを行います。またディレクターは番組制作現場の統括を行うので総監督と呼ばれることもあります。
ゲーム業界におけるプロデューサーとディレクターの役割と求められるスキル
ここでは、特にゲーム業界におけるプロデューサーとディレクターの違いを、役割と求められるスキルに着目しながら解説します。
ゲームプロデューサーの役割
ゲームプロデューサーは、まず市場調査や分析を行ったうえで企画を立案しプレゼンを行います。この段階から利益を上げられるかどうかがプロデューサーの手腕にかかっており、大きな責任を負います。企画が通ったら、予算の確保や工程の決定、プロジェクトメンバーの選出など、多様な仕事を請け負います。
さらに、開発が具体的に開始されたあとには、スケジュール管理や品質管理なども行います。また初期段階から宣伝活動や対外折衝を担当するなど、業務範囲が広いのがプロデューサーの特徴です。
ゲームプロデューサーに必要なスキル
ゲームプロデューサーは開発するゲームで利益を上げる総責任者なので、経営的視点や予算管理のスキルが求められます。また、ユーザーを獲得し楽しんでもらうための企画を立案する発想力や、その企画を通すためのプレゼン力も欠かせません。さらに、社内外での交渉力や業務を円滑に進めるためのコミュニケーション力も必須です。
ほかにも、重要事項の決定や問題が発生した際の方針決定などにも責任を負うので、意思決定力がなければ務まらないポジションです。
ゲームディレクターの役割
ゲームディレクターの役割は、企画、予算、スケジュールを踏まえて開発現場を指揮統率していくことです。業務の開始段階では大まかな企画しかないので、まずゲームプロデューサーと話し合って、ゲームの仕様を決定する工程があります。
プロジェクトが具体的に動き出したら、クオリティ管理を行いつつ、現場スタッフがスムーズに動けるように、指示やアドバイスを行います。さらに工程管理と並行して、動きや演出などの最終判断を行うのもゲームディレクターの仕事です。
ゲームディレクターに必要なスキル
ゲームディレクターは開発現場の総指揮者なので、開発に関する幅広い技術知識が欠かせません。スポンサーやゲームプロデューサーが求めるクオリティを実現することがゲームディレクターの仕事だからです。
またその一方で、グラフィックやサウンド、UIやシナリオなどを扱うクリエイターに技術や納期の面で不可能な要求をしてはプロジェクトが瓦解してしまいます。そのため、求められるクオリティを把握し、実現可能な手順に落とし込む調整力が求められます。
また、業務を進める中ではトラブルが起こることもありますから、柔軟な対応力や部署間の要望を調整するコミュニケーション能力も大切です。
プロデューサーとディレクターの最終的なミッションの違い
プロデューサーとディレクターは、協力して利益の獲得や高品質のコンテンツ提供を目指します。とはいえ個々の最終的ミッションとしては、プロデューサーは利益重視の立場ですが、ディレクターは品質面を重視する傾向が強いです。このような立場の違いから、プロデューサーとディレクター間で軋轢が生まれることもあります。
またゲーム業界では、プロデューサーはパブリッシャー側、ディレクターはデベロッパー側、という構図も見られます。この場合、ディレクターがプロデューサーに遠慮してしまい、意見が言えない例も見られます。
しかし利益と品質の両方が無視できないことは両者とも理解していますから、話し合って落としどころを探すのも、プロデューサーとディレクターの重要な役割です。
そもそも大きな齟齬が生まれないように、初期段階から双方が相手の意思や方向性を理解し合い、信頼関係を深める努力が必要です。
ゲーム業界におけるプロデューサーとディレクターの年収比較
基本的にどの業種でも上位職であるプロデューサーの方が高待遇というのが一般的見解ですが、「求人ボックス給料ナビ」によれば、2025年4月22日現在のゲームプロデューサーとゲームディレクターの平均年収はどちらも468万円でした。年収の幅もゲームプロデューサーが326~878万円、ゲームディレクターが319~877万円と目立った違いはありません。
ちなみに、国税庁が発表している「令和5年分 民間給与実態統計調査」(2025年7月6日現在、国税庁が出している情報では最新)では日本の給与所得者の平均年収は460万円なので、ゲームプロデューサーとゲームディレクターは平均的な年収を得られる仕事であるとわかります。
ただし、ゲーム業界に特化した転職サービス「G-JOBエージェント」のサイトで職種による検索をすると、ゲームプロデューサーの求人で年収1,000万円以上の件は多数見られますし、ゲームディレクターについては700~800万円の年収の求人があります(2025年7月6日現在)。
これを踏まえると、ゲームプロデューサーとゲームディレクターは日本の平均年収を大きく超えることも可能な職種であることがわかります。
未経験からゲーム業界のプロデューサー・ディレクターを目指すには?
ここでは、未経験からゲーム業界のプロデューサー・ディレクターを目指すにはどうしたらよいかを解説します。
ゲーム関連職でキャリアを積む
基本的にゲームプロデューサーとゲームディレクターは責任者として活動するので、関連職種の経験がない状態で就ける職種ではありません。
そのため、まずはゲーム業界に入り、経験を積むのが一般的な方法です。ゲームプロデューサーを目指すのであれば、プランナーなどの企画系の仕事がおすすめですし、ゲームディレクターを目指す人はクリエイターとしてキャリアを積むことをおすすめします。
また、そもそもゲーム業界に入ること自体が難しいと感じる人は、デバッガーなど比較的就きやすい仕事で業界自体の経験を作る手もあります。
他業種でマネジメント職の経験を活かす
ゲーム業界での実績がなくても、ITや広告、テレビ業界などでプロデューサー経験があれば転職の可能性は上がります。またプロデューサーの経験がなくても、それに類するプロジェクトマネージャーなどの経験も生かせるでしょう。
小規模のインディー開発チームを発足してみる
ゲーム開発の実績があり、その中でプロデューサーやディレクターの役目を果たしたことがあれば、転職成功の可能性は上がります。そこで小規模のインディー開発チームを発足する手もあります。規模が小さければ実現の可能性は高いですし、実際にプロデューサーやディレクターとして働く際にも、開発チームでマネジメントした経験は生きるでしょう。
プロデューサー・ディレクター職への転職はエージェントの利用がおすすめ
どの職種であっても未経験からの転職は容易ではありません。そこでおすすめしたいのが、「G-JOBエージェント」への登録です。
G-JOBエージェントはゲーム業界に多数の太いパイプをもっているので、他社が扱わない非公開情報を豊富にもっています。また、キャリアプランの相談もできるので、特に未経験で他業種に飛び込む人におすすめです。
ゲーム業界のプロデューサー・ディレクターに関するよくある質問
この項目では、ゲーム業界のプロデューサーとディレクターに関してよくある質問とその回答を記載します。
Q. プロデューサーとディレクターはどっちが「偉い」?
社歴などを踏まえると一概には言えませんが、一般的にプロデューサーはディレクターより上位職です。
ディレクターの権限は制作現場に限定されますが、プロデューサーの業務範囲は制作現場を含む全体だからです。また、ディレクターはプロデューサーが作った規格に沿って業務を進めるという流れもあり、プロデューサーの指示を受ける場面もあります。
Q. 有名なプロデューサー・ディレクターを教えてください
・宮本 茂氏
『スーパーマリオ』や『ゼルダの伝説』などを生み出したゲームクリエイターであり、『ピクミン』や『Wii Fit』シリーズ、『Wii Music』などをプロデュースしたことで知られる、日本を代表するゲームプロデューサーです。
・桜井 政博氏
『星のカービィ』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』などの代表作をもつゲームディレクターであり、ゲーム開発会社である有限会社ソラ(Sora)の代表も務めています(2025年7月現在)。
・小島 秀夫氏
『メタルギア』や『DEATH STRANDING』などの代表作がある日本を代表するゲームクリエイターです。『DEATH STRANDING』ではプロデューサーとディレクターの両方に小島氏の名がありますし、「監督」と呼ばれることが多い点でディレクター的な役割も担いますが、企画から携わる作品も多いです。
・宮崎 英高氏
『DARK SOULS』や『エルデンリング』を生み出したことで知られるゲームクリエイターであり、プロデューサーとディレクターの両面で活躍しています。フロム・ソフトウェアの代表取締役社長も務めています(2025年7月現在)。
・吉田 直樹氏
『ファイナルファンタジーXIV』などの代表作があるゲームクリエイターです。プロデューサーとディレクターの両面で活躍しており、スクウェア・エニックスの執行役員も務めています(2025年7月現在)。
Q. ゲーム業界ではどちらが求人数が多い?
「求人ボックス給料ナビ」を見ると、2025年6月月間の求人数はゲームプロデューサーが約2万件 、ゲームディレクターは約3万件と表示されています。
ゲーム業界の転職に特化した「G-JOBエージェント」を見ると2025年7月6日現在、ゲームプロデューサーは48件 、ゲームディレクターは122件が表示されます。
この結果を見ると、ゲーム業界ではディレクターの求人が多いようです。
まとめ
ゲーム業界のプロデューサーとディレクターについて、仕事内容や年収などの違いについてまとめました。ゲーム開発においてどちらも重要な業務ですが、目指す成果や求められるスキルが異なります。そのため、ゲームプロデューサーやゲームディレクターを目指すのであれば、どちらに向いているかを検討してキャリアプランを描くようおすすめします。