シェーダーとは?ゲーム開発に欠かせない技術をわかりやすく解説
2025年7月29日
ゲームの画面表示は基本的に2Dなのに、3Dオブジェクトとして作られた画像は立体的に見えます。この効果を支えているのが、「シェーダー」というプログラムです。
シェーダーを扱う技術は近年大きな進歩を遂げており、現在のゲーム開発で欠かせないものとなっています。そこで、このコラムでは、シェーダーに関する技術をわかりやすく解説します。
シェーダーとは
シェーダーは、ゲーム開発において3Dオブジェクトや画面の見た目を決定するプログラムです。具体的には、物体の色、質感、光の反射、影のつき方、エフェクトなどを計算し、画面に描画する方法を記述します。
GPU(Graphics Processing Unit)で高速に処理され、リアルな表現から独特のアートスタイルまで、幅広い視覚効果を実現するための不可欠な要素です。近年のゲームはビジュアル的要求が高く、表現豊かな画像がストレスなく動作することが求められています。シェーダーは3Dモデルをピクセル化することによって上記の要求にこたえるため、近年重要視されているのです。
シェーダーを「ゲーム画像の陰影処理を行うプログラム」と記述するサイトもありますが、質感や色にも影響を与えるので、シェーダーがもたらす恩恵は陰影だけにとどまりません。
ただし、シェーダーを利用してゲーム画面を豊かにするには多くの作業時間を使いますし、シェーダーを適切に扱うスキルをもつクリエイターやエンジニアを確保する必要もあります。そのため、近年のゲーム開発会社は、シェーダーを扱うスキルを有する人を求めています。
これを踏まえて、ゲーム業界でグラフィック関連の仕事をするのであれば、シェーダーに関する知識や技術を強化するようおすすめします。
メッシュ・マテリアル・テクスチャとの関係
メッシュとは、3Dモデルを定義する骨組みであり、点(頂点)、線(辺)、面(ポリゴン)で構成されています。メッシュは3Dデータの物体の骨格となり、そこにマテリアルで素材を定義し、最後にテクスチャとして視覚情報を張り付けていくことで3Dモデルが完成します。
マテリアルは、3Dモデルの表面の「素材」を定義する情報です。色、光沢、透明度、反射率、拡散率など、そのオブジェクトが光にどのように反応するかを設定します。
テクスチャは、3Dモデルの表面に貼り付ける「画像」のことです。木の木目、金属の光沢、布地の模様など、物体の詳細な見た目を表現するために使われます。
2Dと3Dにおけるシェーダーの違い
シェーダーは2Dでも3Dでも、視覚情報を左右する使い方をする点では同様です。ただし、2Dでは色調の変更やキャラクターの輪郭強調、エフェクトなど、「絵」としての仕上がりを強化する処理が中心です。
一方3Dの場合、モデル生成したうえでの質感や立体感、奥行きや陰影などを表現する点が異なります。
主なシェーダーの種類と工程・処理
この項目では、主たるシェーダーの種類と、工程や処理方法を詳しく記載します。
頂点(バーテックス)シェーダー
頂点(バーテックス)シェーダーは、モデリングデータの頂点座標をリアルタイム演算するためのプログラムです。これによって、頂点の位置や色などをプログラムとして認識することで、条件が変わっても頂点がもつデータを維持したまま動作が可能です。その結果、モデルが動作したりカメラの位置が変わったりしても、陰影や色合いなどを安定的に描画できます。
ラスタライズ処理
ラスタライズ処理とは、仮想3D モデルとして作られたオブジェクトを、2次元表示できるようにピクセル(デジタル画像表示のための四角形)に変換する処置です。ゲームにおいてはラスタライズ処理が高速に行われることで没入感が維持されますし、その後のピクセルシェーダーによる描画品質がゲームの快適性に直結します。
ピクセル(フラグメント)シェーダー
ピクセル(フラグメント)シェーダーは、頂点(バーテックス)シェーダーで認識された頂点座標を利用して、画像を2次元的に表示するために1ピクセルごとに色や表示の可否を決定していきます。
さらに、この処理によってゲーム内の画像に質感や陰影、色彩の豊かさを付与できるので、リッチな画面を提供することができます。
その他シェーダー
頂点(バーテックス)シェーダーとピクセル(フラグメント)シェーダーは、現在のゲーム開発において非常に重要な位置を占めます。
その他のシェーダーとしては、ジオメトリシェーダー(頂点シェーダーよりディテール向上が可能ですが、データが重くなるため使用は限定的)やテッセレーションシェーダー(動的ポリゴンを自動生成しますが、GPUに負荷をかけるので使用は限定的)などがあります。
シェーダーでできること
この項目ではゲーム開発において、シェーダーの利用によって実現できることを解説します。
光や影の表現
シェーダーは、ゲーム画面内の3D空間内の光の当て方や影の落ち方などを制御するために不可欠な存在となっています。光源は太陽のように遠方にある強い光や、ろうそくの火のように近くにある弱い光、限定した場所だけを照らすスポットライトなどさまざまですが、シェーダーはこれらを想定したシミュレートを可能とします。
また、昼から夜になる演出や晴天から曇りになる演出など、動的な陰影処理もできるので、ゲームの画像にリアルさや奥深さを与えてくれます。
表面の質感(メタリック、スキン、髪など)の表現
シェーダーは素材表面の質感を表現する際の強い武器になります。たとえば機械や乗り物の表面をメタリックに仕上げたいとき、柔らかさと透明感のある肌を描きたいとき、光を浴びた髪が風でなびくといった情感あふれる映像が欲しいときなどに有効です。これらはシェーダーに物理特性に沿った計算をさせることで可能となっています。
水・炎・透明・オーラなどの演出
ゲームにおいては、水しぶきや爆炎、透明体の演出やキャラクターが放つオーラなどの演出を盛り込むことで、状況を理解しやすくしたり、臨場感を上げたりすることが求められます。
シェ-ダーはテクスチャアニメーション、ノイズパターン、パーティクルシステムなどを扱うことができるので、ゲームの画像表現を豊かにし、視覚情報による状況の高速伝達を可能とします。
奥行き感・ぼかしなどのポストエフェクト的な演出
シェーダーは3Dデータをレンダリングした後、奥行きやぼかしなどのポストエフェクトを与える際にも活躍します。写真撮影で被写界深度を操作して遠景をぼかすような制御が可能で、モーションブラーなどの演出にも活用できます。
また、画面全体の明るさやコントラストの調整が容易ですし、画面に歪みを与えて視覚的に不安をあおる演出も提供できます。
シェーダー学習の始め方
ここでは、シェーダーに関する知識や使い方を学習するために役立つ情報を紹介します。
シェーダー初心者向けチュートリアル・動画・書籍
シェーダーについて学ぶためには、初心者向けチュートリアルや動画、書籍などいくつかの方法があります。
Unityなどのゲームエンジンの提供元が入門的な情報をサイト上にあげていますが、これらには専門用語も多く使われているため、「シェーダーとはなにか?」というレベルから始める人にはハードルが高めです。そのため、まず基礎概念や関係用語を頭に入れてから深い学習に移ることをおすすめします。
その後は具体的な学習に移りますが、学習方法はWeb上にある無料動画や有料の動画講座、書籍などさまざまです。実際の業務や転職に向けて、早急にある程度のレベルに達したいと思う人は、費用はかかりますが、プロがしっかり教えてくれる有料の講座などがおすすめです。一方、時間をかけても安く学びたいという人であれば、無料の動画や書籍などを使ってコツコツ学習する方法が良いでしょう。
ゲーム業界でシェーダーのスキルが必要になる職種とキャリア
ここからはゲーム業界でシェーダーの知識やスキルが必要になる職種やキャリアを紹介します。
シェーダーの技術は近年のゲーム業界で欠かせないものとなっているため、シェーダーを扱えることはゲーム業界でグラフィック関連の仕事をする人にとって、就職や転職に有利に働きます。
これから下記の職種に就きたいと考えている人は、就職や転職のタイミングから逆算してしっかり学びましょう。シェーダーの学習方法については、本コラムの「シェーダー学習の始め方」を参考にしてください。
テクニカルアーティスト
テクニカルアーティストは、デザイナー系の職種とエンジニア系の職種の両方の知識をもち、相互の業務や素材の受け渡しを効率化する仕事です。
デザイナーとエンジニアは特化する技術や使う言葉の違いから意思疎通が難しかったり、問題発生時の対策がしにくかったりしがちです。
そんなときに、通訳的な役割を果たしたり、相互に役立つツールを作ったりするのが、テクニカルアーティストの主たる仕事で、比較的新しい職種でもあります。
上記の理由でグラフィックに関わることもあるため、テクニカルアーティストにはシェーダーに関する知識やスキルが要求されます。
エフェクトデザイナー
エフェクトデザイナーは名称の通りゲーム内のエフェクトを請け負う職種です。エフェクトは光や爆発などでゲームを視覚的に盛り上げるだけでなく、攻撃が当たったことやダメージを受けたこと、その大きさなどを瞬時に情報として与えるための重要な要素です。
たとえば小さなオーラをまとったキャラクターはさほど重要に見えませんが、オーラが巨大であれば一目で重要キャラや強キャラであることが伝わります。また、白や金のオーラなら善的要素が強く、黒いオーラなら悪の側と伝達できるなど、ゲームの視覚情報伝達に大きく貢献します。
エフェクトデザイナーにとって、シェーダーは必要不可欠な要素なので、これからエフェクトデザイナーを目指す人はぜひシェ-ダーの知識やスキルを深めておきましょう。
ゲームグラフィックプログラマー
ゲームグラフィックプログラマーは、グラフィックデザイナーやアーティスト系の職種が作ったデザインを、プログラム的に実現する職種です。
たとえば「基本デザインに対してある場面で特殊な質感を出したい」、「ポスト処理で水彩画風や油絵風に表現したい」といった要求があったときに、ゲームグラフィックプログラマーは、プログラム的な技術を駆使して希望に応えます。
その際、シェーダーやポストエフェクトなどの技術や知識が必要なので、ゲームグラフィックプログラマーとして活躍するには、シェーダーを使いこなすスキルが欠かせません。
シェーダーのスキルを転職に活かすならエージェントに相
シェーダーのスキルの有無に関わらず、ゲーム業界への転職を目指すなら、「G-JOBエージェント」のご利用をおすすめします。
G-JOBエージェントはゲーム業界の多くの会社に太いパイプをもっているので、シェーダーのスキルをもっている方には、そのスキルを生かしたマッチングを提供できます。また、「シェーダーのスキルはないが、関係する職種に就きたい」という方には経験不問な求人を探しつつ、キャリアプランを検討して、今後の仕事人生に役立つアドバイスも行います。
さらに、G-JOBエージェントは一般の求人サイトには掲載されない非公開求人も多数扱っているので、ゲーム業界で働きたい人にとって大きな支えになります。G-JOBエージェントはゲーム業界に特化した転職エージェントなので、興味がない業界の情報を紹介されるストレスもありません。
これらのメリットを踏まえて、ゲーム業界への転職を目指す人は、ぜひG-JOBエージェントにご相談ください。
まとめ
ゲーム業界で働く人やこれからゲーム業界を目指す人に向けて、シェーダーに関する知識を解説しました。シェーダーは3次元的にモデリングされたデータを2次元画像に表示するために欠かせない技術ですし、ゲーム内の画像に陰影や奥行き、質感などを与えることで、画像表現を豊かにしてくれます。
近年シェーダーの技術はゲーム開発に欠かせないものとなっているので、これからグラフィック関係の職種を目指す人にとって必須の要素です。その点を踏まえて、シェーダーに関する知識の理解やスキルの習得に勤めてください。