ゲーム業界におけるQAとは?仕事内容・必要スキル・キャリアパスまで解説
2025年7月29日
QA(品質保証)はどの分野でも重視されますが、ゲームに関しては業界ならではの特徴から、他業種にはない難しさがあります。そこでこのコラムでは、ゲーム業界で働く人やこれからゲーム業界を目指す人に向けて、ゲーム業界のQAの特徴や重要性、業務内容や求められるスキルなどをまとめます。
QAとは
「QA」はQuality Assuranceの略語で、日本では品質保証と呼ばれます。以下で、ゲーム業界ならではのQAの取り組みと、それ以外の業種のQAの考え方について解説します。
ゲーム業界でのQAの定義
ゲームでは大容量のデータを扱いつつ、ユーザーの操作にリアルタイムで対応することや、操作の選択肢が多いことなどの特徴があります。これらに対応しながら、楽しさを提供する必要があるのがゲーム業界のQAの特徴です。また、ユーザーの感情移入や没入感を維持し続けることが要求されるのもゲームならではの特徴です。
もちろん仕様書に合っているか、バグがないか、といったソフトウェア開発系の業務に共通するチェックは行われます。しかし、ゲームのクオリティには感覚的要素が強いため数値化しにくく、開発者のセンスにゆだねられる部分が多い点が他業種と大きく異なっています。
他の業界におけるQAの定義
扱うのが、固形の商品、食べ物、形のないサービスと変化しても、QAの根幹は顧客やユーザーが要求する品質を満たすことです。
ソフトウェアを扱う業種では、上記の考えのもと、仕様の確認や動作の正確性などを検証し、問題がある場合エンジニアと相談して品質の向上に努めます。
QAエンジニア・テスター・デバッガーの違い
QA関連業種のQAエンジニア、テスター、デバッガーについて、業務内容やほかの業種との違いを解説します。
QAエンジニア
ゲームのQAをエンジニアの立場から保証する職種です。問題点を見つけて品質を向上するという目標は、テスターやデバッガーと同様ですが、テスト計画の立案やテスト設計、テストの実行やデバッグ管理などのほか、チーム内でのテストの進捗管理や、品質の観点からほかのエンジニアとの調整なども行います。
また、テストを効率的に進めるための自動化を担当することもあり、プログラミングスキルやインフラ系の知識なども求められます。
テスター
テスターのメイン業務は、計画に沿ってテストプレイを行い、問題点の報告を行うことです。QAエンジニアのようにテスト計画の立案やテストのためのプログラミングは行いませんし、デバッガーのように問題への対策やプログラムの修正を行うこともありません。
ゲーム業界の中では比較的ハードルが低く、テスター業務の一部をアルバイトスタッフに任せるゲーム会社もあるなど、挑戦しやすい職種でもあります。
デバッガー
デバッガーはテストプレイと問題の報告を行いますし、修正作業を行うこともあります。デバッガーのリーダーポジションになると、QAエンジニアと連携してテスト計画の立案にも参加します。そのためプログラミングスキルがあると有利です。
ただし、テストの効率化のためのプログラミングを行うことはない点でQAエンジニアと守備範囲は異なります。
それぞれのキャリアパスと責任の違い
上記の3職種でもっとも就きやすいのはテスターです。テスターからスタートした場合、まず関連職種であるデバッガーを目指すのが順当です。
テスター/デバッガーのキャリアパスとしては、QAエンジニアやテストリーダーを目指す人が多いです。
一方、既にQAエンジニアとして活躍しており、さらに上位を目指すのであれば、QAマネージャーやプロジェクト管理職がおすすめです。また適性やスキルを踏まえて、開発系の職種やプランナー職に転身する人もいます。
QA関連職で品質について学んだことはどの職種に就いても役立つので、ぜひ品質の観点を重視しつつ目指す方向に役立つ知識やスキルを磨いてください。
ゲーム業界におけるQAの主な仕事内容
この項目では、ゲーム業界のQAに関する主たる業務の内容を解説します。
①仕様書に基づくテスト設計・計画
まずQAエンジニアがゲームの仕様書や企画書を読み込み、ゲームの機能、システム、シナリオ、操作性、UI/UXなどを理解します。そのうえでバグや不具合がある箇所に見当をつけ、問題が発生しうる操作や状況を予測し、効率的にゲームを検証するためのテスト計画を立案します。
またこの段階で、テストの範囲、優先順位、必要なリソース、スケジュールなどを明確にし、品質保証活動全体のロードマップを確立します。
②実機・エミュレーターでの動作確認
計画されたテスト計画に基づき、実際にPCやコンシューマー機、スマートフォンなどの実機や、開発環境内のエミュレーターを使ってゲームをプレイし、動作確認を行います。
この作業は、ゲームの挙動が仕様通りであるか、予期せぬ不具合が発生しないかを検証する工程です。このとき、ハードウェアやOSのバージョン、ネットワーク条件などを変えたテストも行います。複数の条件下での動作の安定性やパフォーマンスをチェックし、ユーザーが快適にプレイできるかを確認することが目的です。
③不具合(バグ)の発見とレポート作成
テストプレイで不具合を発見した際には、発生条件、再現手順、発生頻度、影響範囲、不具合を再現するための操作などを把握し、レポートを作成します。
レポートには開発チームが迅速に問題を理解し、修正に取り掛かれるような工夫や配慮が必要です。たとえば、スクリーンショットや動画を添付するなどして効率的な情報伝達が行われることを目指します。
④修正確認(回帰テスト)と再検証
開発チームが不具合の修正を終えたら、QAに関わるチームは修正確認(回帰テスト)を行います。このテストでは、修正された箇所が使用に沿って直っているかを確認するだけでなく、その修正が他の部分に新たなバグ(デグレード)を引き起こしていないかも綿密にチェックします。
そのため修正部分だけでなく広範囲なテスト項目を再度実行し、ゲーム全体の品質が損なわれていないことを確認します。不具合が完全に解消され、新たな問題がないと判断されるまで、この修正・確認のサイクルを繰り返します。
QA職に求められるスキル
この項目では、QA関連職に就く人に求められるスキルを紹介します。
テスト技法・品質保証の知識
ゲームのQA活動では、機能、性能、負荷、ユーザビリティなど、様々な角度からのテストが用いられるため、それぞれの技法に対する知識が必要です。またそれと同時に、ゲームを検証する中で潜在的な問題を効率的に発見する力も求められます。
例えば同値分割や境界値分析といった手法を理解していれば、限られた時間で広い範囲へのテストができます。ほかにも必要な知識は多数あるので、QA職は豊富な知識が求められる職種でもあります。
プログラミングの基礎理解(Pythonなど)
QA関連職にはプログラミングの基礎知識も求められます。例えば、Pythonなどの言語を理解していれば、自動テストスクリプトの作成補助や、ログデータから不具合の傾向を分析する際に有効です。
また、プログラミングの知識があれば、開発者が作成したコードの理解も早く、不具合報告の精度が上がりますし、開発チームとの連携や問題解決の迅速さをアップできます。
不具合を論理的に分析する力
QA関連職は問題点を発見するだけでなく、その問題が「なぜ、どのように発生したか」を論理的に分析する力が求められます。論理的に考えることで、問題の特定や原因の推測を経て、開発者への具体的で迅速な情報提供ができます。
また、状況を客観的に観察し、複雑な事象を分解して原因を特定する能力は、効率的な問題解決に不可欠な要素です。
チーム内で円滑なコミュニケーションを取るスキル
QAは開発チームの橋渡し役なので、発見した不具合を、開発者やプランナーに正確かつ建設的に伝えるコミュニケーション能力が不可欠です。感情的にならず、客観的な事実に基づき、具体的な改善提案を行うことで、チーム全体の生産性を向上させます。
さらに、円滑な対話を通じて信頼関係を築き、品質向上のための協力体制を構築するスキルがあると社内での立ち位置も強化されていくでしょう。
プレイヤー視点を持つ感性
ゲームQAでは、プレイヤーの視点に立つ「感性」が極めて重要です。単なるバグ発見に留まらず、ゲームの面白さ、難易度バランス、UIの使いやすさ、物語の没入感など、ユーザー体験全体を評価します。
プレイヤーが感じるであろうストレスや喜びを共感し、主観的ながらも具体的な改善点を提案することで、ゲームの「楽しさ」という品質を最大限に高めます。
QA職に求められるスキル
QA職に就くには以下のような特徴があると有利です。
細かい作業が得意な人
QAの仕事は、問題や不具合を発見し、改善につなげるために行います。そのためには、起こった問題を丁寧に把握し、発生状況や場面、仕様にあっていない挙動などを正確に伝える必要があります。また報告も整然としたものでなければ誤解を与える可能性もあるので、仕事の随所で細やかさが求められます。
ゲームが好きで多ジャンルに触れている人
QA職の人は扱うタイトルを選べませんが、それでもテストやデバッグで多くのゲームに触れなければなりません。そのため、そもそもゲームが好きではない人にとっては、他者のミスを見つけるうしろ向きな仕事とネガティブに受けとられる可能性もあります。
一方ゲーム好きであれば、「自社が扱うゲームの品質を守る」という役目に誇りをもてますし、多くのジャンルに触れられる喜びもあります。
そのため、ゲーム好きであることや多ジャンルに触れていることはQA職として有利です。
物事を論理的に考えられる人
テストやデバッグにおいては、問題を見つけるだけでなく操作手順や挙動を詳しく報告する必要があります。またQAエンジニアは起こり得る問題を想定して、効率よくテストを行う役割を担います。
これらの作業は論理的に考える力がないと円滑に進めることはできません。そのため、物事を論理的に考えられる人ほどQA職に向いています。
ゲームQA職への就職・転職のコツ
ゲーム業界のQA職に就きたい場合、どの職を目指すかでハードルの高さは大きく異なります。テスターであればアルバイトで募集していることもありますし、習得難易度が高いスキルを要求されることもないので、未経験からでも比較的就職・転職を叶えやすいでしょう。
デバッガーについても未経験者を採用するゲーム会社はありますが、プログラミングスキルや論理的思考を身につけることでより就職・転職の成功率を向上できます。
QAエンジニアはテスターやデバッガーよりハードルが高く、QA関連の知識やテスト方法、プログラミングスキルなどが求められます。そのため、独学やオンラインスクール、専門学校などでこのコラムに記載した必要スキルを積極的に身につけることが重要です。
また、JSTQB認定テスト技術者資格やソフトウェア品質技術者資格認定、QC検定など、関連資格の取得を目指すのもおすすめです。資格を取得すれば就職や転職でアピールできますし、必要な知識の習得にも役立ちます。また、資格取得は自己肯定感向上のメリットがありますし、資格取得に向けて努力できる精神性を評価してくれる会社もあるでしょう。
ゲームQA職への転職ならエージェントに相談
ゲーム関係のQA職を目指すなら、ゲーム業界の転職を強力にサポートする「G-JOBエージェント」に相談することをおすすめします。G-JOBエージェントは一般的な求人サイトが掲載しない非公開求人を多数扱っていますし、ゲーム業界に特化しているので、有益な情報も得られます。
また、経験豊富なエージェントが志望動機の作成や面接対策のアドバイスもしてくれます。さらに、将来に向けたキャリアプランの相談にも乗ってくれるので、ゲーム業界への転職を目指すのであれば、ぜひ前向きにG-JOBエージェントをご利用ください。
まとめ
ゲーム業界におけるQAの定義や重要性、仕事内容やキャリアパスなどを解説しました。QA関係職にはテスター、デバッガー、QAエンジニアなどがあり、それぞれ業務内容や就職・転職のハードルが異なります。
このコラムでは、QA職に必要なスキルや適性などをまとめています。これからゲーム業界のQA職を目指す人は、このコラムを参考にして足りない部分があれば前向きに補い、内定獲得を目指してください。