【2025年版】オーサリングとは?ゲーム業界で求められるスキルと仕事内容を解説
2025年7月29日
「オーサリング」という言葉は聞いたことがないという人も多いかもしれませんが、DVDやBlu-rayディスクなどのディスクメディア関連で使われる一方、ゲーム業界では映像関連の業務名として扱われています。
このコラムでは、一般的なオーサリングの意味とゲーム業界でのオーサリングの違いを解説したうえで、ゲーム業界のオーサリング業務に従事するうえで必要なスキルなどを解説します。
オーサリングとは
この項目では、まずこのコラムのテーマである「オーサリング」について、ゲームや映像分野以外で使われるもともとの用途や発展の経緯と、ゲーム分野、映像分野で使われる場合について、それぞれ解説します。
もともとの用途と発展の経緯
そもそも「オーサリング」という言葉には、「構築」や「作成」などの意味があり、PCで複数の素材をあわせてひとつにする作業を指します。
たとえば、Webサイト上のコンテンツなどを作る際に、映像や音声、テキストなどを組み合わせる作業もオーサリングと呼びます。また、市販のDVDやBlu-rayディスクなどにもオーサリングの技術が利用されています。
初期のオーサリングはテキストや図表処理の集合で、1970年代にはすでに存在していました。その後、1980年代になってCD-ROMが登場し、映像や音声などを組み合わせる技術が発展、オーサリングも高度化します。さらに1990年代のDVDやBlu-rayディスク、2000年代以降はモバイルアプリやWebコンテンツなど、新たなメディア(記憶媒体)やコンテンツが登場するたびに大きな進化を遂げています。
ゲーム分野・映像分野での使われ方の違い
ゲーム業界でのオーサリングの仕事は、主としてパチンコやスロットなどの遊技機の画像に関するものです。パチンコやスロットの台にはアニメ的演出が実装されているものが多く、ゲーム業界内には遊技機の画像に関連する仕事を請け負う会社が多数存在します。
遊技機の画像関連業務には、当たりを期待させる演出や当たったときに高揚感を盛り上げる演出が求められるため、エフェクトを多用することからゲーム業界の技術と相性が良いのです。またUIデザインやカメラ演出なども盛り込まれるため、ゲームクリエイターのスキルが生きる場面が多数あります。
ゲーム業界におけるオーサリングの意味
この項目では、ゲーム業界におけるオーサリングの意味を、「工程」と「役割」のふたつの視点から解説します。
映像演出やUIを「形にする」最終工程
ゲーム業界におけるオーサリングは、CGモデル、アニメーション、サウンド、VFXといった個々の素材(アセット)をゲームエンジン上で統合し、実際にプレイ可能なゲームの世界を「形にする」最終工程を指します。
具体的には、キャラクターやオブジェクトをステージ上に配置し、照明を設定して空間の雰囲気を演出するほか、イベント発生時の挙動やカメラワークをスクリプトで組み込みます。個別の存在だったアセットが、この工程でようやく目的に沿う形を成すので、オーサリングは非常に重要です。
また、遊技機のUI(ユーザーインターフェース)デザインはゲームとは異なる面が多く、遊技機ならではの快適性や盛り上がりを理解した調整も要求されます。
エフェクト・アニメーションの実装管理
オーサリング担当者は、VFXやアニメーションの実装と管理という重要な役割を担います。VFXアーティストが作成した爆発や魔法、環境エフェクトなどの視覚効果は、ゲームエンジン内で適切なタイミングと場所に配置され、プログラマーが設定したイベントやプレイヤーの操作と連動するように組み込まれます。
同様に、キャラクターの動きやオブジェクトのアニメーションも、オーサリングの段階で実際のシーンに組み込まれ、遊技機の挙動と同期するよう調整されます。
これらの実装作業では、単にアセットを配置するだけでなく、遊技機に向かう人の心情を考慮した最適化が必要です。また、複数の要素が連携したことが不自然さに繋がると、パチンコやスロットをプレイする人の没入感がそがれてしまうので、プレイを阻害しない配慮も求められます。
実際にオーサリングが使われるシーン
ここでは、遊技機で実際にオーサリングが使われるシーンを紹介し、それぞれの場面でクリエイターに求められる要素も解説します。
カットシーン(イベント演出)の制作
ゲームにおけるオーサリングは、ストーリーの進行や重要な場面を表現するカットシーン(イベント演出)で頻繁に使われます。ゲームのカットシーンはキャラクターの感情の変化やストーリーの進行を担うので、ゲームの面白さや感動、驚きや恐怖などを伝えるための重要な要素です。
それだけに、オーサリング担当者は、カメラワークや光の当て方、VFXやサウンドの挿入タイミングなど視覚、聴覚に与える影響を綿密に考慮し、各素材を組み上げていく必要があります
パチンコ・パチスロなど遊技機演出
遊技機には有名アニメのIPが活用されることが多く、演出上アニメの名場面が使用されることが珍しくありません。その場合には、個別に作成されたキャラクターモデル、背景アセット、BGM、効果音、そしてVFXやキャラクターアニメーションなどの素材をゲームエンジン上で統合し、演出の意図に合わせて画面に表示させる必要があります。
オーサリング担当者は、素材を並べるだけでなく、演出の意図にあわせてキャラクターに表情や動きをつけ、カメラアングルを調整し、適切な照明効果を加えるなどの配慮を行って、遊技機の前にいる人の気持ちを盛り上げなければなりません。
また、有名IPを使う場合は原作の世界観やイメージを重視する必要もあるので、オーサリング担当者には、視覚演出だけでなく、世界観の整合性やユーザー体験にも配慮する力が求められます。
スマートフォンゲームにおける2D/3D演出
スマートフォンゲームでは、PCやコンソールゲームに比べて描画できる画面サイズやデータ容量が限られるため、効果的な2D/3D演出を実現するためにオーサリングが活用されます。
例えば、カードゲームでのキャラクターのカットイン演出、RPGでのスキル発動時のVFX、リザルト画面での派手なアニメーションなどがオーサリングの使いどころです。これらのシーンは、2Dアニメーション、3Dモデル、VFX、サウンドといった多様なアセットを組み合わせて作られます。
オーサリングによって、限られたデータ容量と処理能力の中で、プレイヤーに快適でリッチなゲーム体験を提供できるよう、アセットの最適な配置、タイミング調整、軽量化されたエフェクトの実装が行われます。
オーサリングを担う職種
オーサリング業務を担当する職種として、オーサリングデザイナーや遊技機デザイナーという職種を置いているゲーム会社もありますが、必ずしもオーサリング専門の人が置かれているとは限りません。
そのような会社では、ゲームプランナーや2D/3Dデザイナー、テクニカルアーティストなどの職種がオーサリングを担当することが多いです。
これに対して、比較的似た技術を扱うゲームエフェクトデザイナーとの違いや、モーショングラフィックデザイナーとの関係性を以下で解説します
ゲームエフェクトデザイナーとの違い
ゲームエフェクトデザイナーは、爆発や魔法陣、水の波紋といったVFXを作成する専門職です。そのため、オーサリングを扱う職種と連携することも多いですが、ゲームエフェクトデザイナーとオーサリング担当職の仕事が完全に被っているわけではありません。
たとえばエフェクトデザイナーがMayaやHoudiniなどのVFX制作ソフトでエフェクト素材を作った後、オーサリング担当職がそのエフェクト素材をゲームエンジン上に配置し、キャラクターの動きやイベント発生のタイミングに合わせて適切に連動させるといった作業分担が行われます。
つまり、エフェクトデザイナーが素材を作り、オーサリング担当者はその素材を機能させると考えるとわかりやすいです。
モーショングラフィックデザイナーとの関係性
オーサリング担当者は、モーショングラフィックデザイナーが制作した素材を取り込むこともあります。
モーショングラフィックデザイナーは、主に映像作品やWeb、UIなどで使用される動きのあるグラフィックやアニメーションを制作する専門職です。ゲーム開発においては、オープニングムービーやUIの特殊なアニメーション、イベントシーンの背景演出などで活躍します。
オーサリングを担う職種は、モーショングラフィックデザイナーがAfter Effectsなどのツールで作成した素材をゲームエンジンに取り込み、ゲーム内の特定のシーンやUI要素とあわせて活用します。両者は異なるツールと専門性を持つものの、互いの成果物を利用し、ゲームの視覚表現を高める点で密接な関係にあります。
オーサリングに必要なスキルとツール
ゲーム業界のオーサリング担当職には、遊技機に必要な期待や興奮を盛り上げる演出を理解するセンスと、映像編集スキルが要求されます。
また、オーサリングに使用する主なツールとしては、UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンや、After Effects、Maya、Photoshopなどの画像に特化したソフトウェアがあります。
そのためオーサリング業務で活躍するためには、上記のようなツールを使いこなすスキルも必要です。
オーサリング業務に向いている人の特徴
この項目では、ゲーム業界でオーサリングを業務として行うことに向いている人の特徴を紹介します。
細部の表現にこだわるクリエイター気質
ゲーム業界のオーサリングは、単純に素材を配置するだけでなく、遊技機が求める世界観や演出を細部まで作り込むクリエイティブな作業です。たとえばライティングやカメラワークの微調整、イベント発生タイミングに合わせた的確な演出、VFXやサウンドの最適な配置など、細部にこだわるクリエイター気質を持つ人が向いています。
ディレクターの意図をくみ取る読解力がある人
オーサリングは、ディレクターやプランナーが描いたビジョンや意図、遊技機の目的や演出傾向を正確に理解し、それを具体的な体験として提供する役割を担います。
そのため、指示書や打ち合わせの内容から、演出の狙いをくみ取る高い読解力と想像力が求められます。さらに不明点があれば積極的に質問し、ディレクターのイメージを実現できれば、社内での立ち位置も向上できるでしょう。
チームで調整・改善を重ねる柔軟性がある人
オーサリング業務には、プログラマー、デザイナー、プランナーなど多数の職種が参加します。特にオーサリング担当者の業務は、各工程からアセットを受け取り、統合する役を担います。業務の進行に応じて仕様変更やアセットの調整が発生することも珍しくありません。そのため、予期せぬ変更にも柔軟に対応し、チームメンバーと密に連携しながら、試行錯誤を繰り返して最善の形を追求できる適応力が不可欠です。
クリエイターとして自分の意見を持ちつつも、全体の成果を考えて調整し、より良い結果を得るために協力できる人が、オーサリング業務で活躍できます。
オーサリング業務に興味がある人は転職エージェントの利用がおすすめ
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まとめ
「オーサリングとはなにか?」、という問いに対して、ゲーム業界とそれ以外の業界での概要を解説し、ゲーム業界でオーサリングを行う人に求められるスキルや仕事内容をまとめました。
ゲーム業界のオーサリングは主にパチンコやスロットなどの遊技機の演出に用いられており、ゲームの演出でも利用される技術が利用できるので、多数のゲーム会社がオーサリング業務を請け負っています。
ゲーム業界でオーサリングの仕事をしたいと思う人は、ぜひこのコラムを参考にして、必要なスキルや特長を強化し、内定獲得を目指してください。