ゲームの対象年齢はどうやって決まる?CEROと海外の違いやレーティングの種類


2025年9月30日


このコラムでは、ゲームの対象年齢(レーティング)について解説します。レーティングの基本的な定義や国内のレーティング制度であるCEROや、国外の制度を紹介し、その違いなどを説明します。ゲームのレーティングについて詳しく知りたい方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。


「ゲームの対象年齢」とその定義

ゲームの中では暴力や犯罪、性的表現やホラー的なシーンなどが描かれることがあります。そしてその中には、「保護者として子どもに見せたくない」、「社会として年少者にショックや悪影響を与えることを避けたい」という見解も存在するでしょう。そのような流れの中で生まれたのが「ゲームの対象年齢」を決めるという考え方です。


暴力描写や性的描写の度合いを段階化したり、あるいは項目ごとに可視化して、そのレベルに名称がついていたりすれば、ユーザーは「このゲームなら幼児がいる家庭でも楽しめる」、「このゲームは暴力描写が多いので避けよう」といった判断ができます。そのため、ゲームの対象年齢が可視化されていることには、ユーザーにとって大きなメリットがあります。


ただし、レーティングの基準は国や地域の文化、考え方によって異なるので、以下に日本で利用されている「CERO」と、海外で利用されているいくつかのレーティング制度を紹介します。


日本の場合…CERO

CEROは、Computer Entertainment Rating Organizationの略称であり、特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構が定めたレーティングのシステムです。

CEROの発足は2002年で、多数のゲームが溢れる中でゲームが青少年に与える影響への配慮が求められるようになったことで立ち上げられています。


詳しくは当コラムの「日本の年齢別レーティング「CERO」の概要」の欄で解説します。


海外の場合…ESRB・PEGI・IARCなど

上記のCEROは日本のレーティングですが、海外にも複数のレーティング制度があります。例えば、ESRBがアメリカ、メキシコ、カナダなどで用いられている一方、イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国ではPEGIが利用されています。


また、特定の国によらないレーティング制度であるIARC(国際年齢評価連合)もあります。これらの特徴や概要については、当コラムの「CEROと海外の主なレーティング制度の違い」にて解説しますのでご参照ください。


日本の年齢別レーティング「CERO」の概要

この項目では、日本のレーティング制度であるCEROについて詳しく解説します。


CEROの基本と審査対象

CEROが行うレーティングは、以下のような考えを基本としています。


・レーティングによって、ユーザーがゲームソフトを選択する際に必要な情報を提供する

・青少年の健全な育成をはかる

・社会の倫理水準を適正に維持する


また、CEROが審査の対象とするゲームは、日本で販売される家庭用ゲーム等(業務用ゲームソフトは除く)であるとともに、対象ハードウェア(ゲーム機)も限定されています。代表的なハードウェアとしては、ソニーのPlayStationシリーズ、任天堂のSwitchシリーズ、マイクロソフトのXboxシリーズなどです。


また、審査するのはゲームの本編だけではなく、裏技や隠しコマンドを含めて、ゲームに含まれるすべての表現についてです。


年齢区分の意味(A/B/C/D/Z)

CEROは5段階の年齢制限を設定しているので、以下に説明します。


・A(黒)…全年齢対象(年齢区分をすべき内容が含まれていない)

・B(緑)…12歳以上

・C(青)…15歳以上

・D(橙)…17歳以上

・Z(赤)…18歳以上


審査の流れと審査員体制

CEROの審査は以下のような流れで行われます。


①ゲームをリリースする企業が、CEROに倫理審査を依頼する

②対象のゲームについて、複数の審査員が表現内容を審査する

③審査の結果を踏まえて、年齢区分を判定する

④判定結果が依頼元(ゲームをリリースする企業)に伝えられる

⑤ゲームをリリースする企業がパッケージ等に年齢区分マークを表示する


CEROの審査体制は以下のように構築されています。

・一般から募集された20~60歳代の男女で構成されている

・審査員の職業はさまざまだが、ゲーム業界と関連がある人は採用しない

・審査にあたっては事前にCEROのトレーニングを受ける

・審査の際に、審査員の年齢性別の偏りがないように配慮される

・審査員は登録制であり、守秘義務が課せられる


販売・表示上のルール

CEROは審査は行うものの、販売の規制を行いません。(一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会:CESAがCEROの審査結果を踏まえて、流通業界と連携して販売規制を行うことはあります)


また、地方自治体がCEROの審査結果を踏まえて、条例で販売規制を行う例も見られます。


表示に関しては、本項の「年齢区分の意味(A/B/C/D/Z)」の欄に記載したアルファベットと色による年齢区分のほかに、コンテンツアイコンという方法も用いられています。これは黒地に白のデザインで、「恋愛」、「セクシャル」、「暴力」、「恐怖」、「飲酒・喫煙」、「ギャンブル」、「犯罪」、「麻薬等薬物」、「言葉・その他」などを表示します。


これがあることで、年齢に関係なく暴力描写や性的描写を見たくない人が、その要素を含むゲームを避けることも可能です。


他にも、教育やデータベースとして役立つ「教育・データベース」、禁止表現がない体験版ソフトなどに付与される「規定適合」、販促物などに表示される「審査予定」というアイコンも存在します。(なお、「審査予定」という名称は今後審査を行うことを思わせますが、審査はしないことをCEROが明言しています)


CEROと海外の主なレーティング制度の違い


ここでは海外のレーティング制度を紹介したうえで、日本のCEROとどのように違うのかを解説します。


ESRB

ESRBは、「Entertainment Software Rating Board」の略語で、アメリカ、メキシコ、カナダなどで用いられているレーティング制度です。


設立は1994年で、日本のCEROより8年も早くスタートしているため、CEROはESRBのレーティングを参考にしたとされています。


以下がESRBのレーティングの概要です。

・EC…3歳以上の幼児向け

・E…全年齢向け。恐怖の要素や汚い言葉がない

・E10+…10歳以上向け。軽度の怖さあり

・T…13歳以上向け。写実がリアルで、暴力描写もある

・M…17歳以上向け。リアルな暴力描写、汚い言葉、ドラッグ、喫煙、飲酒シーンがある

・AO…成人および18歳以上向け。強い暴力、理不尽な殺人、ドラッグ、性行為、ギャンブルなどが描写されている

・RP…保留


ESRBは上記のようなレーティングを行っていますが、暴力描写の許容範囲がCEROとは異なるようです。具体的には、UBISOFTの『アサシン クリード ヴァルハラ』において、海外版で描かれている人体の切断や拷問などの描写が日本版ではマイルドになっています。また、上半身に衣服をつけていない女性に対して、日本版は衣服があるように修正されました。


これらの点から、残酷な描写や暴力、裸体などの許容範囲はESRBの方が広いと考えられます 。


PEGI

PEGIはPan European Game Informationの略語で、イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国で利用されています。


レーティングは以下の6種類に分けられています。

・PEGI3…3歳以上、恐怖を与える表現や汚い言葉はない

・PEGI7…7歳以上、軽度の暴力や怖い描写を含む

・PEGI12…12歳以上、リアルな暴力描写を含む

・PEGI16…16歳以上、リアルな暴力描写、汚い言葉、ドラッグ、喫煙、飲酒シーンがある

・PEGI18…18歳以上、強い暴力、理不尽な殺人、ドラッグ、性行為、ギャンブルなどが描写される 


PEGIはイギリスでは法的強制力があり、PEGI12、PEGI16、PEGI18に反する販売を行った場合、罰則を科せられます。


USK

USKはドイツのレーティング制度で、「Unterhaltungssoftware Selbstkontrolle」の略語です。


USKのレーティングは以下のように分けられています 。

・Ohne Altersbeschränkung…全年齢対象

・Freigegeben ab 6 Jahren…6 歳以上

・Freigegeben ab 12 Jahren…12 歳以上

・Freigegeben ab 16 Jahren…16 歳以上

・Keine Jugendfreigabe…未成年者への販売禁止


ドイツでは青少年保護法によって未成年に不適切なコンテンツを提供することを厳しく禁じており、USKのレーティングに違反した場合、刑事罰や罰金を科せられる可能性があります。


GRAC

GRACは韓国のレーティングで、「Game Rating and Administration Committee」の略です。


GRACのレーティングは以下のように色で分類されています。

・緑…全年齢対象

・青…12歳以上

・黄色…15歳以上

・赤…19歳以上 

・オレンジ…試験用


CEROとの大きな違いは、GRACに法的強制力があることです。そのため、対象年齢に達していない人に不適切なゲームを販売・提供した場合、刑事罰を受ける可能性があります。


IARC

IARCは International Age Rating Coalitionの略語で、日本語では「国際年齢評価連合」と訳されます。「International:国際的」という言葉の通り、特定の国で使用する前提ではなく、もともと世界規模で信頼できるレーティング制度を目指して設立されているそうです。


レーティングは以下の5段階で行われています。

・IARC3+…3歳以上、コミカル、ファンタジーな状況下での許容可能な暴力はあっても、汚い言葉などはない

・IARC7+…7歳以上、軽微な恐怖や暴力が含まれる

・IARC12+…12歳以上、暴力、ヌード、不適切な言葉、ギャンブルなどがあっても露骨ではない。性的罵倒は含まない

・IARC16+…16歳以上、リアルな暴力、性的行為、乱暴な言葉、喫煙、ドラッグ、犯罪行為が描写されている

・IARC18+…18歳以上、激しい暴力、理不尽な暴力、性的な暴力、露骨な性的要素が描かれている。差別的行為、違法薬物などの使用を美化する表現を含む場合がある


CEROと比較すると、暴力描写や性描写の許容範囲が比較的広いと考えられています。


ゲーム開発者視点で見る「ゲームの対象年齢」が及ぼす影響


ここからは、ゲームの対象年齢設定(レーティング)がもたらす影響を、ゲーム開発者視点で見ていきます。


CEROが売上に及ぼす影響

CEROがゲームの売上に及ぼす影響としては、プラス面とマイナス面の両方が提起されています。


例えば、2023年にゲームソフトを扱うノジマが、CEROでZにレーティングされたタイトルは販売しない、と宣言しました。この判断によってZ指定されたタイトルの販売機会が減り、売り上げ低下につながると考えられます。


また、CEROに審査をしてもらうためにゲーム会社は費用を払いますが(会員は7万円、非会員は20万円)、これは小規模のゲーム会社やインディーズスタジオにとって大きな負荷です。そのため小規模の会社や個人はパッケージゲームを販売する機会自体が奪われているとの意見もあります。


その一方で、子どもに安心して提供できるとわかっているゲームは親が手に取りやすいため、売上にプラスに働く効果も無視できません。さらに、性的描写や暴力描写を好む人は、Z指定されたゲームを好んで買うという意味でもレーティングによる売上向上効果はあるでしょう。


CEROの審査を受けないとどうなる?

CEROの審査は強制はされませんから、審査を受けない自由はあります。ただし、小売店などの流通を介して販売することは困難になります。


地方自治体によってはCEROの審査結果を条例に取り入れているところがあるため、CEROのレーティングが行われていないゲームを販売すると、小売店の責任になる可能性があるからです。


国の審査の厳しさによって販売(ローカライズ)ができないケースも

海外で開発、リリースされているゲームが、CEROの審査を通過できなかったため国内販売ができなかったケースがあります。アメリカのStriking Distance Studios社が開発したサバイバルホラーゲーム「The Callisto Protocol」 やElectronic Artsが扱っている「Dead Space」 は日本で販売されなかったため、ユーザーの批判を買っています。


CEROの最近の傾向

「フォートナイト」はCEROの基準でC(15歳以上)、「Apex Legends」はD(17歳以上) とレーティングされていますが、現実には10歳前後の小学生にも多数プレイされています。


また、CEROはパッケージ販売のゲームを対象として審査を行っていますが、近年はパッケージで販売されるゲームが、Steamなどのプラットフォームでダウンロードできる場合も多いため、CEROのレーティングの存在意義が問われています。


さらに、日本で開発されたゲームでもCEROの審査を受けず、国際的なレーティング制度であるIARCの審査を経て販売しているケースが増えています。


CEROの審査、レーティングの意味がなくなっているとは言えませんが、ゲーム開発者としては今後の動向に注目しておくべきでしょう。


まとめ

ゲームの対象年齢の決め方やレーティング制度についてまとめました。ゲームには暴力描写や性的表現を含むものがあるため、レーティングによって対象年齢を明確にすることで、ユーザーは安心して手に取ることができます。


「これまであまりレーティングを気にしていなかった」という人もいるかと思いますが、今後ゲームを選ぶ際にはぜひ着目してみてください。


また、ゲーム開発者であれば、CEROの意味合いや、国際的な制度であるIARCとの比較を考える機会として当コラムをご利用ください。

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