「自由度の高いゲーム」とは?考え方や代表的な作品などを紹介
2025年10月27日

近年、さまざまな形で「自由度の高いゲーム」が増えており、その自由度の高さがユーザーからの人気を獲得している実情もあります。
そこでこのコラムでは、自由度の高いゲームの定義や、最近着目されている意味を検討しました。また、オープンワールドゲームの設計におけるポイントを複数書いていますので、ゲーム開発をする人はぜひ参考にしてください。
「自由度の高いゲーム」とは?その定義
「自由度の高いゲーム」には様々な定義があります。一般的に”自由度の高さ”で着目されるのは、世界を自由に移動できるかや、攻略の順序や行動を自身で決定できるかといった点であり、その傾向から「自由度が高いゲーム≒オープンワールドゲーム」を指すことが多いです。
従来のリニア型ゲームは、定められた一本道のストーリーを順に進める形式であるのに対し、自由度の高いゲームでは、プレイヤーの数だけ進行順が存在します。
オープンワールドゲームは、高い自由度や広大な世界をシームレスに冒険できる点から、多くのプレイヤーに支持され、近年のゲーム市場で人気を集めています。また、プレイヤーが自身のペースで進められる点や、メインストーリー以外にも多数の探索要素やサブクエストが用意されていることから、長く遊べる点も魅力とされています。
なぜ今「自由度」が重視されるのか
自由度が高いゲーム≒オープンワールドゲームは2000年代以前から存在していました。2000年代初頭に、日本では「シェンムー」、海外では「GTA3」によってすでに多くの人に認知されているので、必ずしも「今」、急にはやり始めたわけではありません。
ただし、「今」オープンワールドゲームが流行っている理由を考えると、ゲーム会社の開発環境の発展や、ユーザーが使うハードウェアのメモリ容量のアップなど、技術の進歩による面もあります。
つまり、今自由度の高いゲームが広がっている理由は、開発環境やハード面の性能が整ったから、と言えるでしょう。
オープンワールドゲームは基本的に広大なマップを備えており、行動制限がないためプレイヤーは自由に過ごすことができます。この特徴はそのままゲームへの没入感に繋がっており、リニア(一本道)なゲームにはない楽しみを得ることが可能です。
また、自由度の高さがゲームボリュームの多さにつながっており、ひとつの作品を長く楽しめる点も魅力です。
自由度の種類と設計手法

この項目では、自由度の種類と設計手法を解説します。
シナリオ・ストーリーの自由度
ゲームにおけるストーリーの自由度とは、プレイヤーが物語の順序や進行をある程度自分で選べる設計を指します。例えば「ミッションAを終えてからB」という定型構造を可能な限り取り除き、「AとBをどちらからでも」「順番を気にせず」進められるようにすることで自由が生まれます。
加えて、サイドクエストや探索的な物語要素をメインストーリーに並列させることで、プレイヤーが主目的以外の体験を自ら選択できる設計にもなります。
こうした設計手法により、ストーリー自体が流れとして固定されず、プレイヤーの選択や探索がそのまま物語体験に反映されるようになります。
フィールド・探索の自由度
フィールド・探索の自由度は、プレイヤーが広大なゲームマップをシームレスに、かつ移動制限なく自由に動き回れる設計によって実現できます。気になった場所へどこでも行けるという開放感があり、遠くに見える山や建造物など、目に見えるほぼすべての場所を探索可能とすることで、ゲームへの没入感が大きく高まります。
さらに、探索中に偶発的な出会いやトラブルが起きるよう設計することで、プレイヤーに「何が起きるか分からない」という発見体験をもたらします。
キャラクター育成の自由度
キャラクター育成の自由度は、職業選択やステータスの振り分け、スキル習得などを、プレイヤーが自由にカスタマイズできる設計によって実現できます。
例えば一部のMMORPGでは、一つのキャラクターで複数のジョブを切り替え可能とし、リアルタイムで育成やバトルスタイルを変更できる高い柔軟性を提供しています。また、外見のキャラメイクやアバターの着せ替えなども細かく設定可能とし、自分だけの分身を作り出すことで、ゲーム世界への没入感を深める設計が特徴です。
戦闘スタイルや取れるアプローチの自由度
この自由度は、クエストや敵との遭遇に対し、プレイヤーが複数の攻略手段を選べる設計を指します。
これによってプレイヤーは正面突破だけでなく、敵に認知されなくなるステルススキルの発揮など戦闘方法の選択肢が増えます。また、交渉やハッキングなど、多様なアプローチを可能にするシステムを導入するタイトルもあります。
これらの工夫があると、プレイヤーはプレイスタイルや育成状況に合わせて戦略を自由に選択できるため、戦闘一辺倒ではなくミッション達成にやりがいや楽しさが生まれます。
自由度とゲームバランスの設計の難しさ
「自由度が高いゲーム」と言っても、ゲーム内のすべてが自由になるわけではありません。そこでこの項目では、自由度が高いゲームの設計をする際に、自由度とゲームバランスを両立する難しさを書きます。
「自由すぎる」ことへのリスクと適度な制約の重要性
プレイヤーに選択肢を与えすぎると、むしろ迷ってしまう局面が増えますし、結果的にゲーム体験が散漫になるという指摘があります。
そのため、ある程度のガイドを与えることや、自由度の開放は段階的に行っていくことが重要だとされています。つまり、初期段階では自由は限定され、慣れてきた段階で広げていく設計が望ましいわけです。
また、チュートリアルや序盤のミッションでプレイヤーの主体性を養うことは、後半の大きな自由につながる土台づくりとして有効です。さらに制約を設けることでゲームの焦点を絞り、リソースや開発効率の観点からもメリットになるという分析があります。
データ管理とフラグ設計の複雑さ
オープンワールド型のゲームでは、プレイヤーがどの順序でどの要素を体験するか分からないため、イベント発生条件(フラグ)や進行管理用のデータ構造が非常に複雑になります。
例えば、サイドクエストを先にやるかメインミッションを先にやるかによってその後の展開が変わるような設計では、分岐毎の状態を一つ一つデータで把握しなければなりません。
また、システム思考を用いてゲームシステム内の因果関係やフィードバックループを設計・シミュレーションすることで、データ設計とバランス調整を効率化する研究もあります。
このように、自由度を高めれば高めるほど、進行管理や変数設計・バグ管理の手間が跳ね上がるため、設計段階での整備が欠かせません。
パフォーマンス最適化の重要性
広大なマップ、プレイヤー移動の自由、複数のシステムが絡むオープンワールド環境では、技術的にパフォーマンス最適化が難易度を増します。
たとえばストリーミングで地形・オブジェクトを動的に読み込む設計や、メモリ使用量の制御、AI・物理演算・描画負荷のバランスが求められます。特に自由に移動できる環境では、何が起きてもおかしくない状況を想定しなければなりません。このために最悪ケースでの性能を見据えた設計が重要です。
さらに、自由度の高さがバグや動作不安定を誘発しやすいため、開発中・リリース後の最適化作業(プロファイリング、最適化)に十分なリソースを割く必要があります。
成功事例から学ぶ大切さ
自由度とバランスの調整がうまくいっている成功タイトルを分析することは、設計の有効なリファレンスになります。
例えば、自由な探索を可能にしながらもプレイヤーを適度に誘導する地形・ランドマーク設計や、選択肢による物語変化をうまく取り入れたゲームがその好例です。このような成功事例から「自由度をどのタイミングで開放するか」「どういった制約で遊びを選ぶか」という設計のヒントを得ることができます。
また、過去の失敗や問題例(自由すぎて目的を見失った、バランスが崩れてしまった等)を振り返ることで、設計段階での落とし穴を回避するための視点が養えます。
ジャンル別自由度の高いゲームの設計思想と代表作

この項目では、自由度が高いゲームのジャンルとその設計思想を解説したうえで、代表作も紹介します。
オープンワールドRPG
オープンワールドRPGは、広大なマップをプレイヤーが自由に移動・探索できるロールプレイングゲームの形式です。このジャンルでは、メインクエストやサイドクエスト、育成・装備など多様な要素がプレイヤーの裁量によって進行し、「どう遊ぶか」をプレイヤーが選ぶ設計が重視されます。
設計思想としては、プレイヤーの主体性を高めることが核であり、まず世界を提示し、そこに適合するゲームメカニクスを後から配置する逆順の設計アプローチが多く採られています。さらに、線形型ゲームと比べて探索・発見・多様なプレイパスを含む設計を意図しており、単に物語を追うのではなく、プレイヤーが世界を“選べる”こと自体が体験価値となります。
オープンワールドRPGの代表作
オープンワールドRPGの代表作としては以下のようなゲームがあります。
・「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」…任天堂が2017年にリリース。どこまでも広がる世界を自由に探索できる、オープンワールド型アクションアドベンチャーです。
・「The Elder Scrolls V: Skyrim(スカイリム)」…Bethesda Softworksが2011年にリリース。ドラゴンボーンとして世界を救う、自由度の高い広大なファンタジーオープンワールドRPGです。
・「Grand Theft Auto V」…Rockstar Gamesが2013年にリリース。世界的にヒットしているクライムアクションゲームシリーズの1作です。
サンドボックス・クラフトゲーム
サンドボックス・クラフトゲームとは、プレイヤーがあらかじめ設定された明確な目的やリニアなプロットに縛られず、自らのペースで探索・構築・発見を行えるゲームジャンルを指します。
このジャンルでは、世界・素材・道具・システムといった要素が「プレイヤーによる操作・改変」を前提に設計されており、プレイヤー生成コンテンツ(建築・改造・クラフト)がそのまま体験価値となることが多いです。
設計思想としては、まず「最小限のルール」と「豊かなシステム的インタラクション」を整え、そこにプレイヤーが創造・実験できる余地を与えます。また、目的をプレイヤー自身に委ねることで、あらゆる行動が目的となり得る特徴をもち、クラフト要素・サバイバル要素・探索要素などが複合されて長時間・反復プレイを支える設計となっています。
サンドボックス・クラフトゲームの代表作
オープンワールドサンドボックス・クラフトゲームの代表作としては、以下のようなゲームがあります。
・「Minecraft(マインクラフト)」…Mojang Studiosが2011年にリリース。ブロックで構成された世界を自由に探索し、採掘、建築、サバイバルを楽しむサンドボックスゲームの代表作です。
・「Terraria(テラリア)」…Re-Logicが2011年にリリース。採掘、クラフト、探索、戦闘などの要素がある、広大な2Dの世界を冒険するサンドボックスアクションゲームです。
シミュレーション・経営ゲーム
オープンワールドのシミュレーション・経営ゲームは、広大な仮想世界の中で、自分のペースで事業の経営や第二の人生のような生活シミュレーションを楽しめるジャンルです。
現実の暮らしの味わいをゲームに持ち込みつつ、楽しさを失わないバランスを保つことが重要です。プレイヤーは、店舗の改装や商品の仕入れといった経営活動と、広大なマップの探索を自由な流れで両立させることができ、プレイヤーの裁量が大きいことが魅力です。これにより、「成り上がり」という野心の実現や、豊かなライフスタイルの追求といった、自分だけの目標を持って長く深く遊べる体験を提供します。
シミュレーション・経営ゲームの代表作
オープンワールドシミュレーション・経営ゲームの代表作としては以下のようなゲームがあります。
・「太閤立志伝5」…コーエーテクモゲームスが2004年にリリース。戦国時代を舞台に、武士だけでなく忍者や商人など多彩な職業を選び、立身出世を目指すゲームです。
まとめ
「自由度の高いゲーム」について、定義やヒットの理由、種類や設計思想などを解説しました。自由度の高いゲームはオープンワールドとも呼ばれ、没入感の高さや自分なりのプレイができることなどで人気を得ています。
しかし、自由度の高さを維持するために、設計に関して難しい面もあります。自由度の高いゲームを手掛ける際には、ぜひこのコラムを参考にしてください。