「アーケードゲーム」とは?業界構造から最新トレンド、キャリアパスまで徹底解説


2025年10月27日


「アーケードゲーム」という言葉は聞いたことがあっても、「定義や種類は正確にはわからない」という人も多いでしょう。そこでこのコラムでは、アーケードゲームの定義や歴史を解説し、ビジネスモデルや業界の将来性などを解説します。


アーケードゲームとは

この項目では、アーケードゲームの定義や主たるジャンルの紹介を行います。


アーケードゲームの定義

アーケードゲームとは、ゲームセンターや商業施設など、公共の場に設置され、料金を支払って遊ぶ業務用のゲーム機の総称を指します。また、アミューズメント施設などに設置されているゲームタイトル自体を指す場合もあります。家庭用ゲーム機との対比で用いられることが多く、単に業務用ゲーム機という意味合いでも使われます。


利用者はコインや電子決済、ICカードなどでプレイ料金を支払うのが一般的です。アーケードゲームの大きな特徴は、家庭では体験できないプレイスタイルにあります。例えば、大型画面のビデオゲームや、楽器・乗り物を模擬操作する臨場感のあるゲームなども含まれます。


近年は家庭用ゲーム機の性能が向上し、オンラインゲームが登場してユーザー間のコミュニケーションの場が広がったことなどから、かつてに比べて利用者は減少傾向にあるとされています。


アーケードゲームの主なジャンル

以下でアーケードゲームの主なジャンルを紹介します。


ビデオゲーム系

「ビデオゲーム」とは、ゲーム機の画面に映る映像を用いたゲームです。家庭用ゲームの多くはビデオゲームに分類されますが、アーケードゲームにはメダルゲームやクレーンゲームなど、画面に頼らないものが多数あるので、特にこの分類の意味合いが増します。


ビデオゲームをさらにジャンル分けすると、アクションやシューティング、格闘対戦ものやレース、スポーツ、音ゲー、カードゲームなど多岐に渡ります。


VR・体感ゲーム系

家庭用ゲームにもVRや体感を扱うタイトルはありますが、アーケードゲームは広いスペースの確保や大型機材の導入が可能なので、アーケードでこそ味わえる楽しみがあります。


ジャンルとしては、アクションやシューティング、パズルやレース、スポーツや音ゲーなどさまざまです。


メダルゲーム系

ゲームセンターなどの施設から有償のメダルを借りてプレイするスタイルのゲーム群です。

プッシャーゲーム、あるいはメダル落としと呼ばれるジャンルは、メダルを固定の挿入口から挿入して、その影響で物理的にほかのメダルや景品を落として楽しみます。


また、ポーカーなどのカードゲームや、競馬ゲーム、ビンゴゲームなどメダルゲームのジャンルも多彩です(メダルを使ってビデオゲームを楽しむスタイルもありますが、ここではビデオゲーム以外のジャンルを紹介しています)。


プライズ系

英単語のprizeは賞、景品などを意味しますが、アーケードゲームのプライズ系はクレーンゲーム(UFOキャッチャー)などの景品を獲得するゲームを指します。


近年、プライズゲームを主流とするゲームセンターが増えており、アーケードゲームをけん引する存在とも言われています。


アーケードゲーム業界の歴史と転換点


この項目では、アーケードゲームの黎明期から現在までの歴史を、4つの時期に分けて解説します。


黎明期:1970年代〜1980年代

日本には1970年代以前から、アミューズメント施設やプライズゲームは存在していました。しかしこの項目で1970年代以降を黎明期としているのは、ビデオゲームが誕生し、メダルゲームが普及したのが1970年代初頭だからです。


1975年に登場した『モグラ退治(モグラたたきゲームの始祖的存在)』や1978年にリリースされて社会現象を起こした『スペースインベーダー』などが、日本のアーケードゲームの立ち位置を定めていきます。ゲームセンターが文化として確立したのもこの時期です。


さらに1980年代になるとビデオゲームの黄金期が訪れ、『パックマン』、『ドンキーコング』、『ゼビウス』など、後世に語り継がれるタイトルも複数登場します。また、体感ゲーム『ハングオン』、格闘ゲーム『ストリートファイター』などジャンルが広がっていったのもこの年代の特徴です。


1980年代半ばには法改正があり、ゲームセンターが深夜営業を禁止されます。これによって日中の売上を伸ばす方向に舵を切るゲームセンターが増え、多くの人が楽しみやすい明るい雰囲気が醸成されました。


成長期:1990年代

1990年代になると対戦格闘ゲームが大流行し、『ストリートファイターⅡ』、『バーチャファイター』、『餓狼伝説』などのタイトルが次々と生み出されていきます。


これ以前は単独でプログラムとの対戦が主流だったビデオゲームが、人と対戦するスタイルや協力プレイを楽しむスタイルに変わっていきました。またCG技術の発展もあって画像のクオリティも格段に上がっていきます。


一方この時期には、『プリント倶楽部(通称プリクラ)』をはじめとするプリントシール機に中高生女子が並ぶ光景も見られるようになります。


このようにヒットタイトルが多数生まれたことや客層が多様化したことでゲームセンターは大型化し、成長を続けていきました。


しかし、1990年代後半になると、家庭用ゲーム機の進化や、アーケードゲームが家庭用ゲームに移植される動きが進み、ゲームセンター離れも始まります。


転換期:2000年代

2000年代になるとインターネット環境が普及していったことで、アーケードゲームのオンライン化が始まります。それ以前は一店舗内で対戦や協力プレイが楽しまれていましたが、オンライン化によって多店舗との対戦や協力も可能となっていきます。


また、この時期のゲームセンターではメダルゲームが発展し、大型化が進行していきました。


一方、1990年代から始まっていた家庭用ゲーム機の発展やソフトの充実がいよいよ進行し、ゲームセンターの減少が顕著になっていきます。店舗数が1990年代の半数程度に低下したのも2000年代のことです。


再定義期:2010年代〜現在

その後、スマートフォンの普及もあって、「ゲームはどこでもできるもの」になっていきます。ゲームセンターやアミューズメント施設は、身近さにおいて家庭用ゲーム機やスマートフォンには勝てませんから、独自の方向性を模索します。


たとえば家庭用ゲーム機やスマートフォンでは体験できない体験型エンターテインメントへのシフトや、クレーンゲームなどのプライズ系機器の増加、eスポーツとの連携などがその代表的な動きです。


また、過去にはアーケードゲームはそのとき限りで継続性がありませんでしたが、別の日に訪問しても継続性が保たれる工夫も盛り込まれています。


昨今のアーケードゲーム業界のビジネスモデル

日本のアーケードゲーム業界(ゲームセンターやアミューズメント施設)は1990年代に比べると大きく減少しています。しかし、ただ衰退を続けているわけではなく、回復や生き残りに向けたさまざまな工夫が展開中です。


そこでこの項目では、昨今のアーケードゲーム業界のビジネスモデルについて解説します。


アーケードゲームの収益構造

1990年代に確立されたアーケードゲームの遊び方は1プレイ100円というスタイルでした。このため、「ゲームセンターは少額で長時間遊べる場所」として所持金が少ない若者が集まっていました。全盛期には利用者が多かったこともあり、このスタイルでも利益が確保できていました。


しかし、電気代の高騰もあり、人件費やゲーム機の導入費用などを踏まえると、利益性が高いビジネスモデルではなくなりました。1プレイ100円と言う固定概念があるため、コスト上昇を解消しにくい構造的問題もあります。


このような事態を踏まえて、近年は比較的客単価が上がりやすいクレーンゲームなどのプライズ系を扱う店舗が増えました。また、筐体の導入費用に対する工夫など(次の項目で解説)、効率改善の動きも盛んになってきました。


筐体の調達と運用方法

アーケードゲーム業界が厳しい状況になったことを踏まえて、筐体を提供する側の工夫もさまざまに行われるようになりました。


たとえばアーケードゲーム業界大手のタイトーは、店舗がゲーム機を導入する際の初期投資を自社で負担する仕組みを作っています。また、省スペース・省電力の機器を開発することで、スペース効率や光熱費の削減にも力を入れています。


クレーンゲーム機やプリントシール機などの導入費用を無償化する企業はほかにも存在しており、ゲームセンターやアミューズメント施設はこのような機器を扱うことで収益の向上を試みています。


施設運営の多様化

アーケードゲーム業界では、施設運営の多様化も進んでいます。従来のようなゲームセンターだけでなく、アスレチック施設でフィジカルを使う取り組みが増えていますし、オンラインのメダルゲームも多数開発されています。


また、広いスペースを確保してクレーンゲームを数百台導入し、インバウンドで訪れる外国人観光客や、推し活需要を呼び込む工夫もあります。インバウンドと推し活という収益性が高い層をターゲットにするのは非常にわかりやすい構造です。


ターゲットを明確にするという意味では、ゲームセンターに子ども連れのファミリーが多いことに着目し、ファミリー向けの筐体の増加やベビーカーでの来店のしやすさなどを提唱する動きもあります。


このように多様化が進むことが店舗の個性に繋がるので、「足を運ぶ価値」や「立ち寄ってみたくなる気持ち」の向上につながるでしょう。


対象年齢の変化

以前は「若者のたまり場」というイメージが強かったゲームセンターやアミューズメント施設ですが、少子高齢化や所得格差拡大の影響により、利用者層の高齢化が進んでいます。


例えばゲーム業界大手のカプコンは、過去に55歳以上の人を対象とした「ゲームセンターツアー」を開催しています。また、メダルゲームを高齢者が楽しむ光景は近年珍しくなくなっています。高齢者にとっては少ない金額で長く遊んだりコミュニケーションを取ったりできることから憩いの場になっていますし、ゲーム自体が「脳活」に役立つという意見もあります。


アーケードゲーム業界の今後と可能性


この項目では、アーケードゲーム業界の今後の展望や可能性を解説します。


デジタル×リアル体験の進化

アーケードゲーム業界の可能性として、フィジカルを使って楽しむ方向が提示されています。たとえばアスレチックと謎解きの融合や、自社IPを活用したスポーツアトラクションなど、リアルな体験とデジタル技術を融合させた新たな施設展開が代表的です。


また、プロジェクションマッピングを活用したハンティングゲームや、社会課題の解決をテーマに据えたクレーンゲームが登場するなどさまざまな取り組みがあります。


レトロブームなどによる新たなビジネスチャンス

レトロブームは、アーケードゲーム業界に新たなビジネスチャンスをもたらしています。たとえば東京都内の「ゲーセンミカド」は、1990年代の筐体を中心に稼働させ、国内外の熱心なゲーマーを集める聖地的存在になっています。この施設はかつてゲームセンターに通った大人だけでなく、海外からの観光客も呼び込んでいます。


「ブーム」である以上、この流れがどの程度続くかわかりませんが、新たなブームや客の流れをつかむことがビジネスチャンスとなるのは間違いありません。


eスポーツへの転換

かつてのアーケードゲームは対人戦が楽しめるツールであり、対面での対戦やコミュニティ形成というリアルな体験が強みでした。家庭用ゲーム機の性能向上とオンライン環境の普及で対戦機能が移行したため、アーケードゲームはその役割を失いかけましたが、eスポーツ化は再びこの強みを活かす可能性を秘めています。


例えばコナミの音ゲーを中心に展開する「BEMANI PRO LEAGUE」のように、アーケード筐体を使用したプロリーグの開催は、店舗運営者(オペレーター)にも利益を還元し、業界全体の活性化に繋がる新たなビジネススキームとして注目されています。


リアルな対戦や観戦のライブ感を提供できる点が、アーケードゲームがeスポーツへ転換する上での重要な可能性となります。


インバウンドや観光地化への積極的な参加

日本のゲームセンターは、インバウンドで訪日する外国人観光客から高い注目を集めています。リピーターが多い場所のランキングでゲームセンターが上位に入っているのは、日本のアニメキャラクターの景品を求めてクレーンゲームをプレイする外国人が多いからです。


これを受け、業界大手のセガは多言語対応のサイトによるガイドを公開、遊び方やマナーの解説を通じて訪日客の受け入れ環境整備を進めています。また、タイトーもクレーンゲームの景品を持ち帰りやすくする圧縮機サービスを導入するなど、インバウンド需要を中長期的なブランド戦略として捉え、積極的な施策を展開しています。


まとめ

アーケードゲームは日本のゲーム産業を支えてきた歴史がありますが、1990年代の全盛期に比べると衰退しているという意見もあります。しかし業界では様々な取り組みが行われており、各社の工夫による巻き返しも見られます。


今後もアーケードゲーム業界には多数の動きがあると思われるので、注目していきましょう。

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