ゲームの「リメイク」を今一度紐解く|成功の秘訣・名作事例などを解説
2025年11月21日

過去に人気があったゲームがリメイクされる例は少なくありません。その中には成功して大きな利益を上げるタイトルがある一方、残念ながら良い評価を得られないものもあります。
このコラムでは、そもそものリメイクの定義や、なぜゲームのリメイクが行われるのかを説明したうえで、リメイクの成功の秘訣や代表的成功事例などを解説します。
ゲームの「リメイク」とは
ゲームの「リメイク」とは、過去に発売されたゲームのストーリーや設定を活かしつつ、画像やシステムなどをほぼ一から作り直すことを指します。
過去に人気があったゲームでもハードウェアの都合上プレイできなくなるものは多いですし、そのまま再現しても最新技術に慣れたユーザーにとっては不満を感じてしまうリスクがあります。それを踏まえて、最新技術を使ってグラフィックやサウンド、操作性などに大幅な変更や改善を加えるのがゲームをリメイクする際の大きな特徴です。
手法としては、新しいゲームエンジンを使うなどして開発環境を現代の標準に合わせてリメイクされるケースが代表的です。これによってオリジナルの雰囲気を残しつつ、全く新しい体験を提供することができます。
リマスターとの違い
リメイクとよく似た言葉に「リマスター」がありますが、この二つには大きな違いがあります。リマスターでは、ゲームのストーリーやシステムが変更されることはほとんどなく、基本的に画像やサウンドの見直しが行われます。
たとえば、テクスチャの高解像度化やフレームレートの向上、サウンドのアップグレードといった作業が行われるのが一般的です。
これに対してリメイクは、ゲームの設定やキャラクター性などを除く全要素を一から作り直すため、ゲームプレイの仕組みや操作性自体に根本的な変更が加えられる点が異なります。
リブートとの違い
「リブート」は、リメイクやリマスターとは異なり、タイトル名や設定、登場人物の一部を共有しつつも、新しい作品(またはシリーズ)として再始動することを意味します。
リブートでは、元の作品とは切り離された新たな世界線として、ストーリーや設定が大胆に改変されることが多いです。過去の複雑になった設定をリセットし、より現代のファンに受け入れられやすいように、シリーズ全体を刷新する、といった流れが代表的です。
そのため、リメイクが過去作に新しい要素を加えたり、現代的制作方法に刷新したりしつつも基本的に再現することを目指すのに対し、リブートは新たなシリーズの構築を目指す点で大きく異なります。
ゲームのリメイクが作られる主な理由

ここでは、ゲームのリメイクがしばしば作られる理由を解説します。
ファン層の再獲得と新規層の拡大
ゲームのリメイクは、過去作を愛するファン層を再び取り込むきっかけとなります。昔の作品を今の技術で遊びたいという既存ファンの期待に応えることで、購買意欲を刺激できるからです。さらに、オリジナル版の発売当時には生まれていなかった、あるいはゲームをプレイしていなかった新規の若い層に、名作を届けるという重要な役割もあります。
リメイクすると基本設定はそのままで、現代の高解像度なグラフィックや迫力あるサウンド、快適な操作性にアップデートすることができます。そのためゲーム自体の魅力によって古参ファンの心を捉えつつ、新規層がそのタイトルに触れる機会創出が可能です。つまり、リメイクはファン層拡大という利益に繋がります。
技術進化と開発環境の向上に伴う開発者の再挑戦
ゲーム開発の世界は常に進化しており、新しいゲームエンジンや高性能なハードウェアが登場することで、過去には不可能だった表現が実現できます。そのためリメイクは、開発者にとって当時のアイデアや構想を、現代の技術を使って実現する機会を提供してくれます。
例えば、オリジナルの発売当時は容量や処理能力の制約からカットせざるを得なかった要素や、表現しきれなかった世界観を、最新の技術で詳細かつリアルに描き出すことができれば、クリエイターは大きな喜びを得られますし、古参ファンも喜びます。
つまりリメイクは開発者自身のモチベーション向上にも繋がり、ゲーム業界の技術力向上にも貢献します。
ブランド価値の再構築・IP資産の活用
リメイクは、既存の知的財産(IP)資産を有効活用するための戦略的な手法です。ゲーム会社としては、既に認知度が高いタイトルをリメイクすることで、宣伝コストを抑えつつ収益をあげることができます。
また、リメイクによってブランドの価値を再構築すれば、利益から遠ざかっていたIPを現在の市場で通用するように磨き直す効果もあります。
さらに、成功したリメイク作品はIPのイメージを向上させますから、関連商品の展開や続編の制作といったビジネスチャンスを生み出す土台となります。
評価が分かれがちなリメイク作品の傾向
リメイクをしたものの、高評価を得られないタイトルもあります。ここではそんなタイトルに見られる傾向を解説します。
忠実すぎてサプライズ要素がない
リメイク作品において、オリジナルへのリスペクトは欠かせませんが、忠実に再現するだけでは高評価は得られません。過去作を熱心にプレイしたファンは、ストーリーを既に知っているため、グラフィックやサウンドが良くなっていても、驚きや感動を得にくいからです。
特に、新しい取り組みや新鮮なチャレンジなど、目新しさやサプライズ要素が少ない場合、ユーザーは「ただ綺麗になっただけ」と落胆するリスクがあります。
リメイクを成功させるには、オリジナル版への敬意をもちつつも、現代のゲームに慣れたプレイヤーへの配慮が必要です。もちろん、オリジナル版へのリスペクトを欠いた改変は不評に繋がるので、改変や新規要素が多ければ良い、というわけでもありません。その点は次項で解説します。
過度の改変やストーリー手直しなどによる別物化
リメイクで過度な改変が行われたり、ストーリーに大幅な手直しが加えられたりすると、それが批判の対象になることもあります。ファンが抱くオリジナルのイメージや思い出と、リメイク版の内容が大きくかけ離れてしまうと、「これは自分が求めていたものではない」という意見が出がちです。
特にキャラクターの設定変更や物語の重要ポイントの改変、テーマ性が異なる場合は注意が必要です。過度な改変は作品の本質を損ねると受け止められ、「別物になってしまった」という厳しい評価に繋がることがあります。
開発者はこれを踏まえて、過去作の核となる魅力を理解し、その上で現代的にアップデートする適切なラインを見極める必要があります。
追加要素がゲームバランスを崩している(意味をなしていない)
リメイク作品には、しばしば新しいキャラクターやステージ、システムなどの追加要素が導入されます。しかしこれらが「ゲームバランスを崩している」、「無意味」と評価されたり、「かえって作品の質を落とした」と言われたりするリスクもあります。
例えば、追加された武器やスキルが強力すぎると、「オリジナルの良さを消してしまった」と考えられるかもしれません。また、古い作品はゲームボリュームが少ないものもあるため、何らかの追加が行われることが多いですが、追加要素によって全体のテンポが悪くなったという批判を受けることがあります。
追加要素を実装する際は、オリジナルの持つ楽しさや緊張感を損なわないよう、細心の注意を払った調整が必要です。
成功した代表的なリメイク作品

ここではリメイクが成功した代表的タイトルを紹介し、その内容についても解説します。
FINAL FANTASY VII REMAKE
『FINAL FANTASY VII REMAKE』は、1997年にPlayStation向けにリリースされた『FINAL FANTASY VII』の第一作目を再構築した作品です。
オリジナル版は1997年リリース、リメイク版は2020年4月に全世界同時発売されました。リメイク版はリリースからわずか3日で国内売上100万本、全世界で350万本という好調なスタートを切った ことが話題となりました。その後も販売本数を伸ばし、2023年9月時点で全世界累計販売本数は700万本を突破しています。
本作はオリジナル版のミッドガル脱出までの物語を元に、オリジナルの要素を大幅に追加し、複数作で展開する予定の第1作目として制作されました。(その後、第2作目として『FINAL FANTASY VII REBIRTH』が発売されています)
従来のコマンドバトルとアクションが融合した戦略性の高いバトルシステムと、新たな技術を導入したグラフィックのリアルさが国内外を問わず評価されています 。過去作の再現に終始せず、現代の技術とユーザーの期待に応える大胆な再構築を行ったことが、商業的な成功とファンからの支持に繋がったと思われます。
バイオハザード(ゲームキューブ版)
『バイオハザード(ゲームキューブ版)』は、カプコンがリリースしたサバイバルホラーの金字塔第1作目を、グラフィックとシステムを一新してリメイクした作品です。オリジナル版は1996年にPlayStation向けにリリースされていますが、リメイク版は2002年にニンテンドーゲームキューブ向けに発売されました。
このリメイク版では、当時の最新技術を駆使してグラフィック要素の大幅な向上を果たしています。また、ストーリーの大筋はオリジナル版の内容を守りつつ、マップのボリュームアップやキャラクターの動向を一部改変するなど古参ファンを楽しませる工夫も豊富です。それらの取り組みが評価された結果、リメイク版はリリースから約3ヶ月で135万本もの売り上げを記録しています。
この作品の成功は、後の『バイオハザード』シリーズのリメイク展開に大きな影響を与えました。
バイオハザードRE:2
『バイオハザード RE:2』は、1998年リリースの『バイオハザード2』のリメイク作品です。リメイク版は2019年1月にリリースされ、発売初週に出荷数300万本を記録しています。
このリメイクではカプコンオリジナルのゲームエンジン「REエンジン」が利用され、当時としては非常にリアルなグラフィックが評価されました。また、音響でも7.1.4ch対応ドルビーアトモスやバイノーラル技術が導入され、バイオハザードならではのサバイバルホラー感を盛り上げています。
また、物語の謎解きや仕掛けも積極的に改修されていますし、オリジナル版とは異なるビハインドビュー(肩越しの3人称視点)を採用するなど、チャレンジングな取り組みが豊富です。それらの工夫はユーザーに概ね好評で、2024年1月に全世界で1310万本ものセールスを達成しています。
スーパーマリオRPG
『スーパーマリオRPG』のオリジナル版は1996年に、任天堂がスーパーファミコン向けに発売したマリオシリーズ初のRPGです。リメイク版は2023年11月にNintendo Switch向けに発売されました。オリジナル版の持ち味を尊重したうえで、さまざまな改修が行われています 。
機能的にはアクションコマンドの追加や新たな技の実装などで過去作をプレイした人も楽しめる工夫が盛り込まれました 。一方グラフィックはオリジナル版の雰囲気を壊さないように配慮されつつ、フルリメイクによって3DCG化されたうえに、非常に美しく仕上げられています 。
これらの改変の結果として、このリメイク版は2024年時点で、国内売上86万本、世界全体で331万本もの売り上げを記録したヒット作品となっています 。
ゼルダの伝説 夢をみる島
『ゼルダの伝説 夢をみる島』は、1993年に発売された同名作品をフルリメイクしたものです。オリジナル版はゲームボーイ向けタイトルでしたが、リメイク版はNintendo Switch向けに2019年9月にリリースされています。
『ゼルダの伝説』シリーズでは本作のリメイク以前に、『ムジュラの仮面』のリメイクで一部厳しい評価を受けたことがあり、ファンは本作のリメイクにも不安をもっていました。しかし本作『ゼルダの伝説 夢をみる島』は国内外で高い評価を受けており、リリースから短期間のうちに300万本を超える売上を記録しています。
本作のリメイクは、基本的にオリジナルに忠実でありながら、操作性、マップの見やすさ、ジオラマのようなグラフィックが取り入れられるなど、細やかな改変が加えられた点が好評の理由 となっています。
まとめ
ゲームのリメイクは、単に古い作品を美しくするだけでなく、グラフィックやサウンド、操作性などを新しい技術で作り直すことを特徴とします。
低い評価を受けるリメイク作品もありますが、成功作の多くはオリジナル版の基本的要素を重視しつつ、世界観を壊さないよう注意しながらも現代的な改変を加えているものが多いです。
ゲーム会社としては既存IPの活用やブランドイメージの再構築などのメリットを得るためにしばしば行う手法です。それを踏まえて、ゲーム開発者としてはこのコラムを参照して、リメイクで成功するためのポイントを押さえていきましょう。