ゲームのサービス終了はなぜ起こる?その前兆と開発者が取るべき行動とは
2025年12月23日

オンラインゲーム、ソーシャルゲームのサービス終了(サ終)はファンにとって大きなショックになることがあります。また、心血を注いだタイトルがサ終となるのは開発者にとっても不本意なことです。
そこでこのコラムでは、ゲームがサ終にいたる理由やサ終の前兆などを解説し、サ終に当たってユーザーと開発者がそれぞれやるべきことを説明します。
ゲームのサービス終了とは?基本的な仕組みと影響
「サービス終了」とは、オンラインゲームやソーシャルゲームで、運営側が提供するサービスを停止することを指し、略して「サ終」とも言われます。定期アップデートや新規コンテンツの追加が行われなくなるだけでなく、サーバー運営を含む運営・保守体制がすべて終了するため、すべてのプレイができなくなります。
サービス終了が発表される一般的な流れ
ユーザーにとって、好きなタイトルのサービス終了は、「突然」と感じられることもあるかもしれません。しかし実際には、サービス終了は数ヶ月前から決まっている場合が多いです。
ゲームのサービス終了は以下の流れで決定、告知、実施されます。
ゲーム会社は運営状況や収益、利用者数や今後の見込みなどを定期的に評価しています。その結果「企業経営上マイナスが多い」、「システムに致命的な問題がある」などの事情があり、回復困難と判断した場合、サービス終了が決定します。
その後、公式サイトやアプリ内、SNS等で「サービス終了のお知らせ」が提示されるため、ユーザーがサービス終了を明確に知るのはこの時点です。しかし、この前に予兆は複数見られるので、サ終が近いことを察知しているユーザーも少なくないでしょう。
サービス終了が告知される際には、課金通貨の払戻し方法、サポート終了日時なども明確になります。
この終了告知から実際のサービス終了までは、数週間から数ヶ月の猶予が設けられることが一般的です。
終了後にアプリはどうなる?
サービスが終了すると、以下のような状態になります。
まず、サーバーが停止されるため、オンライン認証や通信を伴う機能はすべて動作しなくなり、ゲームは一切遊べなくなります。
また、App StoreやGoogle Playなどのアプリストアからの新規インストール、再インストールもできなくなります。仮にオフラインモードが存在していても、オンラインに依存する要素は使えません。
つまり、サービス終了後=ゲームプレイできない、と考えるのが妥当です。
ゲームのサービス終了の前兆とは?どこで分かる?

サービス終了時には必ず前兆があり、多くの場合共通点があります。そのため、以下のようなことが起こっている場合、そのタイトルはサービス終了が近いと予測可能です。
運営・広報活動の縮小
サービス終了が決定すると、ゲーム会社としては運営や広報活動にリソースを割きにくくなり、以下のような兆候が見られます。
・公式SNS(Twitter、X、Facebook、公式サイトなど)の更新が止まる、または頻度が大きく減る
・お知らせ(メンテ、イベント、アップデートなど)の投稿が少なくなる
・公式生放送、キャンペーン、告知イベントの実施が減る
ゲーム内コンテンツの停滞
サービス終了が決まったタイトルでは、コンテンツの新規制作量が減るため以下のような傾向が見られます。
・新規キャラ実装や新マップ、ストーリーの追加が止まり、復刻イベントが増える
・イベントの内容が使い回しや小規模なものばかりになり、開発の目新しさが感じられなくなる
これらは、「開発コストを縮小しつつ、できる範囲で売上を上げよう」という考えに基づいています。
過剰なアイテム配布・インフレ施策
サービス終了を前にして、過剰なアイテム配布などが行われるタイトルもあります。たとえばガチャをひくための石が無料配布される量が増えたり、レア度が高いキャラクターが入手しやすくなったりすると、サービス終了が近いかもしれません。
ユーザー行動の変化
運営側の行動だけでなく、ユーザーの行動変化からサービス終了の予兆が見えることもあります。たとえば、ランキングイベントの参加者の減少や、アクティブユーザー数の低下、コミュニティ(SNS、ファン掲示板、Discordなど)の活気の低下などはユーザー離れが進んでいる兆しです。
経営的視点で芳しくない
アプリのセルラン(セールスランキング)が長期的に低迷している場合、そのタイトルが利益貢献していない可能性が高く、サービス終了が検討されているかもしれません。
また、過去より広告の量が減っている場合、すでにそのタイトルには広告費をかけないと決定されており、リソースがほかのタイトルに移動している可能性があります。
ゲームがサービス終了する背景
まず大前提として、5年、10年と続くオンラインゲームやソーシャルゲームはほとんど存在しません。
アメリカの市場調査会社Super Scaleが2023年に発表した情報では、モバイルゲームの80%が3年以内にサービス終了すると報告されています。これを踏まえて、ゲームのサービス終了は特別なことではないことをご理解ください。
ゲームがサービス終了を迎える背景には、業界の構造や収益モデル、市場環境の変化などがあります。オンラインゲームやソーシャルゲームは、常に運用費と開発費を投じ続けるビジネスです。たとえばサーバー維持、アップデート、バグ修正、コンテンツ追加、ユーザー対応、継続的な告知など、パッケージゲームとは異なり継続的にコストが発生し続けます。
一方で、スマホゲーム市場は非常に競争が激しく、新タイトルが次々とリリースされます。新規タイトルはユーザー確保のために華々しい告知を行うため、ある程度の人気タイトルでも埋もれてしまう可能性も少なくありません。このような競争の激化が、ユーザー獲得コストを高騰させており、既存タイトルの維持コストの上昇にも影響を与えています。
また、グラフィックやサウンドに対するユーザーの期待値が高まっていることも、開発費高騰の要因です。
これらのことから、多くのゲームが投資額や継続的運営・開発費に見合わないと判断されるリスクが高まっています。
ゲームのサービス終了が近いときにやるべきこと
ユーザーとして、サービス終了が間近だと感じたとき、また実際に終了が発表されたときに取るべき行動を複数紹介します。
データのバックアップ方法
オンラインゲームはサービス終了すると起動ができなくなります。そのため、なんらかの形でデータを残したいと考える場合、プレイログ、達成状況、所持アイテムなど、大事なデータをできるだけ残しましょう。さらに、クラウドに対応していればクラウドセーブの有無を確認し、可能であればローカルにゲームの保存データを残すといった方法もあります。
ただし、前述したようにオンラインゲームはサービス終了後起動不能になるため、あくまで記録としての保存であることはご理解ください。
課金アイテムの払い戻し制度の確認
運営会社によっては、未使用の有償通貨(ガチャ石やゲーム内通貨など)について払戻しを実施する場合があります。過去に複数のタイトルで実際に払戻しが行われていますが、払い戻しを行わないタイトルもあるので、しっかり確認してください。
課金を無駄にしないためには、サービス終了の告知内容をよく見て、払戻しの手続きや条件、時期を見落とさないよう注意しましょう。
スクショ・思い出の保存
「熱中したゲームの思い出を残したい」と思う人には、プレイ画面やキャラ画像、育成状況などスクリーンショットやスクリーン録画で残しておくことをおすすめします。また、ゲーム内でのコミュニティの会話を残しておくことも思い出になるでしょう。
ただし、サービス終了しても著作権はゲーム会社にあるので、残した画像や動画は個人の範囲で楽しんでください。
終了後にゲームは遊べるのか(オフライン化)の確認
一部タイトルでは、サービス終了後もオフライン版を残したり、既存データの閲覧を許したりする例があります。しかし、これはかなり稀ですし、多くの場合ゲームとしてプレイすることはできません。
それでもファンとしては価値があるでしょうから、オフライン化の有無は確認したほうがよいでしょう。
【ゲームクリエイター視点】タイトルのサービス終了に向けて取るべき行動

もしあなたがゲーム開発者・運営者の立場で、タイトルのサービス終了を実行する役目を担っているのなら、以下のような対応をおすすめします。
ユーザーへの誠実な告知・情報整理
サービス終了に当たっては、まず誠意ある告知や情報をわかりやすく記載することが重要です。
特に終了直前までプレイしてくれたユーザーに対するお礼の気持ちをしっかりと伝え、終了の原因も端的に書きましょう。これらの対応は炎上防止の効果もあるので、誠実に取り組むことをおすすめします。
また、払戻しを行う責任元や払い戻しの条件や期限などは金銭に関わることなので、特にわかりやすさを重視してください。さらに、サービス終了までのスケジュールを明確にして、ユーザーが混乱しないことを最優先にしましょう。
開発・運用チームの適切なクローズ作業
ゲーム会社には、サービス終了にあたって行うべきクローズ作業が多数あります。所属する部署によって担当業務は異なると思いますが、ぜひ以下を参考にしてください。
・サーバー停止後のデータ保管、ログ管理、バックアップ、法務や会計上必要なデータ管理
・外部契約やライセンスなどを整理し、不要になったものを解約。ゲーム内のアセットや資産の整理
・ユーザーデータやプライバシー情報の取り扱いについて、「終了後のデータ消去」「あるいは一定期間の保管」など、適正な対応を行う
これらの舞台裏の片付けを怠ると、後のトラブルやコンプライアンス問題につながる可能性があるので、徹底管理しましょう。
プレイヤーへの配慮と丁寧な作品の締め方の意識
そのタイトルを愛してくれたファンに対して、「良い形」でサービス終了を迎えることも重要です。可能であればストーリーを完結させる、あるいはなんらかの最終イベントなどを用意することで、ファンの気持ちに「区切り」ができるよう配慮しましょう。
サービス終了の告知でショックを受けたファンも、「サ終は悲しいが、提供元は最後まで頑張ってくれた」と思える最期を迎えれば、ゲーム会社や開発・運営者に好感をもってくれるでしょう。
たとえば、主要キャラクターに何らかの決着をつけるか、ストーリー上の伏線を回収することで満足感が得られます。また、思い出を共有できる特設サイトやSNSの投稿なども良いでしょう。
次回プロジェクトへのナレッジ蓄積
漫然とサ終を迎えるのではなく、「なぜこのタイトルが終わったのか」を問い、収益構造やユーザー数、運営コストや広告費などのデータを分析することが次回作に繋がります。
また、ユーザーの離脱ポイントや新規ユーザー獲得で苦戦した理由や状況、コンテンツ追加のコストと効果なども整理することで、開発者や運営としてのスキルアップが期待できます。
さらに、「サ終時の対応マニュアル」を作っておけば、告知や払戻しのほか必要なクローズ作業が標準化でき、将来のリスク管理や信頼度アップが可能です。
これらのナレッジ(知識や知見)は、次のタイトル開発時の成功に役立ちますし、企業の持続可能性にも貢献します。
まとめ
ソーシャルゲーム、オンラインゲームの「サービス終了」は、そのゲームが一切プレイできなくなり、存在が消えることを意味します。これはパッケージ販売のゲームとは異なる運用型ゲームの宿命です。
サービス終了にいたる理由は、ビジネスモデルの特徴やゲーム開発に関連するコストの増大傾向、競争の激化など複合的な場合が多いのが実情です。
開発者や運営者は原因を丁寧に分析し、得られるナレッジをしっかり残すことを心がけましょう。また、ゲームはユーザーあってのものですから、「終わるゲームだから」とおざなりにせず、ユーザーの気持ちを大切にする意識をもつことも重要です。開発や運営の誠意はユーザーの失望を緩和しますし、良い印象を与えられれば次回作でもユーザーになってもらえる可能性が高まります。
ソーシャルゲーム、オンラインゲームには必ずサービス終了の瞬間が来ますが、誠実な対応と次につなげようとする意識をもつことで得られるものが多いことを忘れないでください。