ゲームの「ロールバック」とは?巻き戻し原因と影響、格ゲーのロールバック方式も解説


2025年12月23日


「ロールバック」はゲームに関連する言葉ですが、実は2つの意味があります。そもそも「ロールバック」という言葉自体をご存じない方も多いと思うので、このコラムでは根本的な意味から説明し、サーバーの不具合時に使用される「ロールバック」と、格ゲーで使用される「ロールバック」をそれぞれ解説します。


ゲームにおける「ロールバック(巻き戻し)」とは

「ロールバック(rollback)」という英単語には、一般的に「巻き戻す」という意味があります。ただしゲームの分野では、主として以下の二つの意味で用いられます。


・オンラインゲームにおけるサーバーのデータ巻き戻し

サーバーに何らかの障害が発生したときなどに、サーバー上で管理されているキャラクター情報や進行状況などを、過去のある時点まで戻す処理を指します。


オンラインゲームを運営するうえで、ゲーム会社は定期的にデータのバックアップを行っています。ロールバックすることによってバックアップ後のデータは失われますが、バックアップ時点までのデータは生きているので、致命的なダメージの回避ができます。


つまりロールバックが行われること自体は良いことではありませんが、最悪の状態を避けるための必要な措置と考えるべきです。


・主に格闘ゲームなどで使われるオンライン対戦方式の一種(ロールバック方式)

この分脈では、オンラインで対戦している格闘ゲームなどで、ネットワーク通信上で発生した遅延を補うためにロールバックを用います。


遅延発生時に「未来予測」を行って先に入力を処理し、実際の入力が届いた際に予測との差があれば、当初の予測を取り消して正しい状態に「巻き戻す」のが格闘ゲームでのロールバックです。


言い換えると、先読みしてグラフィック描画を進めるが、もし先読みによる間違いがあった場合は巻き戻して修正する方式です。


このように、「ロールバック」は文脈によって使い分けられ、オンラインRPGやMMOのようなサーバー管理型ゲームでは前者、オンライン対戦型の格闘ゲームなどでは後者の意味で語られることが多いです。


オフラインゲームではロールバックは発生しない?

パッケージソフトやローカル専用のゲームなど、オフライン環境下では、ロールバックを行う必要がありません。オフラインでプレイする場合、そもそもゲーム会社が用意した外部サーバーとのデータのやり取りがないからです。


また、オンラインでの対戦も行われないため、格闘ゲームなどで行われる遅れを処理するためのロールバックも存在しません。


オンラインゲームでロールバックが発生する主な理由


オンラインゲームにおいて、サーバー側のデータが巻き戻されるロールバックが行われる際には、以下のような理由があります。


サーバー障害・不具合によるデータ破損

サーバーにはハードウェア的なトラブルが起こることがありますし、ストレージ障害、あるいは運営側のミスなどによってゲームデータが破損したり、不整合が生じたりする場合もあります。


たとえば、何らかの理由で特定の時間帯のデータ保存が正しく行われず、データに抜けや矛盾が生じた場合、その不正確なデータを残したままゲームを進行させることはできません。


そのような事態がゲーム全体として大きなダメージとなり得る場合に、ゲーム会社は安定していた最後のバックアップ時点までデータを巻き戻すロールバックを行います。これによって直近のデータが失われたとしても、ゲーム自体が致命的な状態になることを回避できます。


アップデートやメンテナンス時の不具合

ゲームシステムをアップデートやメンテナンスした直後に、予期せぬバグや不具合が発生することがあります。エンジニアはトラブルが起きないように努力していますが、人間がやることなのですべて完璧というわけにもいきません。


これによってゲームのバランスが崩れたり、対応困難な不具合が出たりした場合、運営はロールバックによってアップデート前の状態にデータを戻すことがあります。アップデートやメンテナンスの前にはバックアップが取られているので、この判断によって問題発生前の状態に復帰することが可能です。


不正行為・データの改ざん対策

悪意をもったチート行為や不正アクセス、データ改ざんなどが行われ、不当にゲーム内通貨やアイテム、キャラクターなどの取得が行われることがあります。また、ゲームの進行に問題が発生することもあり、そのようなときもロールバックが選択されるかもしれません。


ロールバックによって問題発生前の状態に戻し、公平性やゲームバランスを取り戻し、不正行為の影響を解消するわけです。


予期せぬバグや外部要因による緊急対応

ゲームを運営する中では予期せぬバグは起こり得ますし、DDoS攻撃(サーバーやWebサイトに過剰なアクセスやデータを送付する悪意ある行為)などを受けるリスクも存在します。


それによってサーバーが不安定になったり、データの整合性が崩れたりする場合、ロールバックが選択肢となるかもしれません。ゲーム全体に悪影響を及ぼすおそれがある場合、最後に正常だった状態に戻すことも選択肢のひとつだからです。


ロールバックがプレイヤーに与える影響

サーバーデータの巻き戻しが実行されると、プレイヤー側にはさまざまな影響が出ます。以下で代表的な3種類の影響を記載します。


失われる可能性があるもの

ロールバックが実行されると、巻き戻されるバックアップポイント以降のレベルアップや経験値、取得したアイテムや通貨、クエスト進行などがすべて無効になります。つまり、ユーザーにとっては時間や労力が無駄になるだけでなく、お金を使って獲得した成果が一定時間分すべて帳消しされてしまうのです。


ゲームの進行度や獲得アイテムなどには個人差がありますが、中には何時間もの努力、レベルアップや勝利の喜びなどがなくなってしまうこともあるでしょう。このため、ロールバックの判断は容易にできるものではありません。


ただし、ロールバックが実施される際には補償や補填が行われることもあり、ロールバックの該当期間中にアクセスしていた全ユーザーに詫び石などが配布されることもあります。このような措置が行われた場合は、トラブル発生時にアクセスしていたものの、特に成果を得ていなかったユーザーとしては得をすることもあり得ます。


ランキングやイベント進捗への影響

オンラインゲームでは、ランキングや期間限定イベント、ポイント集めなどの報酬が、進捗状況に応じて決まることがあります。そのため、ロールバックによって進捗が巻き戻されれば、せっかく獲得したランキング報酬やイベント報酬を失ってしまう可能性があります。


このようなことがあるとユーザーのモチベーションが大きく削がれるので、運営側は誠意ある対応をすることが必須です。


課金要素・ガチャ結果への影響

課金通貨やガチャで手に入れたアイテムも、データが巻き戻される対象になり得ます。たとえば、ガチャでレアアイテムを引き当てていた場合でも、それが無効になるかもしれません。


このようなケースでは、プレイヤーの信頼・不満につながるため、運営や他ユーザーとのトラブルに発展しやすくなります。


ロールバックを実施せざるを得ない際の運営の対応


ロールバックを行うとき、運営側はできるだけ混乱や苦情を最小化するために、以下のような対応を取るのが一般的です。


公式アナウンスと障害情報の公開

まず運営側としては、プレイヤーに対して公式サイトやSNS、公示の場で障害内容や原因と、ロールバックの必要性を説明するのが基本となります。なぜ巻き戻しが行われるのかを把握してもらい、混乱や誤解を減らすことが目的です。


このとき、対応に誠意がないと炎上する可能性もあるので、過不足のない説明を行うことと、対処方法を明確にすることが重要です。


ロールバック対象の期間・範囲の説明

ロールバックの対象期間や範囲の説明においては、「どこまで巻き戻すのか」「どの範囲のデータが対象か」「どの時点のバックアップを使うか」といった、具体的な日時や範囲を明示することが重要です。


この説明を行うことによって、プレイヤーは自分のデータにどのような影響が及ぶのかを把握できるでしょう。


補填・補償内容

ロールバックの巻き戻しによって損失が生じたプレイヤーに対しては、補填や補償が行われることがあります。


たとえば失われたアイテムや通貨の一部を戻す、経験値ブーストや特典配布、あるいは課金分の対応などが例として挙げられます。こうした補償はプレイヤーの信頼回復、そしてゲーム運営としての責任を果たす重要な手段となります。


あるいはロールバックで消失する時間に対して、そのときアクセスしていた人に一律の補償を行う方法もあります。個別の対応をするよりかかるリソースを小さくできますが、補償内容によっては不平をもつユーザーもいるかもしれませんので、どの程度の補償を行うかはしっかり検討しましょう。


格闘ゲームで使われる「ロールバック方式」とは

ここからは、オンライン対戦格闘ゲームなどで使われる「ロールバック方式」について説明します。


従来のディレイ方式との違い

ネットワーク上で発生する遅れに対して、過去の格闘ゲームではディレイ方式による対応が行われてきました。この方式では、ネットワーク上の遅延が起きた際に、ゲームの処理を相手の入力が届くまで待つことになります。


そのため、結果的に画面上の動作が止まることがありました。これは、いわゆる「カクつき」と呼ばれる現象で、プレイヤーとしては没入感の低下や集中力維持への障害となることがありますし、単純にストレスにもなります。ディレイ方式は実装が容易なので開発コスト面でのメリットがありますが、プレイヤーにとっては違和感を抱きやすくコンボを決めにくいなどのデメリットが顕著でした。


これに対して、ロールバック方式ではプレイヤーの入力をまずローカル側で即時に反映します。そして、相手の入力を待つことなく動作を予測実行するため画面上の遅れが双方に発生しません。相手入力が届いた時点で、もし予測が異なっていたら「巻き戻して再計算」するというやり方を取っています。これにより、カクつきがない滑らかな動作が楽しめますし、即時性も保つことができます。


ロールバック方式は開発的には難しさがありますが、フレーム精度が問われる格闘ゲームにおいて、重要な意味をもちます。操作性やレスポンスが向上するため目押しがしやすく、コンボも決めやすいことから格闘ゲームならではの醍醐味を味わいやすいのです。


ロールバック方式が採用されている代表的な格闘ゲーム

ロールバック方式を採用している格闘ゲームは近年増加傾向にあります。カプコンが2016年にリリースした「ストリートファイターV」はメジャーな格闘ゲームでロールバック方式を取り入れたさきがけ的存在です。


また、2024年にバンダイナムコエンターテインメントがリリースした「鉄拳8」は、オプション設定でロールバックのON/OFFを可能としています。あえてオプションにしているのは、入力のレスポンスを良くするか、絵飛びが起こりにくくするかを選ぶためです。


ロールバック方式の場合、遅れが生じた側の数フレームを飛ばして描画するため、絵飛びが起きるのです。さらにロールバック方式の場合、数フレーム先を予測して動作するため、画面表示上で攻撃が当たって見えたのに実際は当たっていないということも起こり得ます。


このようにメリット・デメリットがあるので、好む方式を選択できるオプションとしての実装はユーザーへの親切設計と言えるでしょう。


まとめ

「ロールバック(巻き戻し)」は、ゲームにおいて二つの異なる意味をもっています。


ひとつはオンラインゲームでサーバーの不具合などが起きた時、ダメージを最小化するために、過去のバックアップポイントまで巻き戻す処置です。


もうひとつは、オンライン対戦ゲームで一方に遅延が生じた場合でも、快適なプレイを可能にする方式です。これによって、遅延を待って対応するディレイ方式より画面上の描画がスムーズですし、コンボが決めやすいため格闘ゲームの興奮が強化されます。


同じ「ロールバック」でも使用されるシーンや意味合いが大きく異なるので、混同しないようご注意ください。

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