HUD(ヘッドアップディスプレイ)とは?ゲームにおける役割やUIとの違いを解説


2026年1月26日


ゲームをプレイする際、画面上に常に表示されている体力ゲージやミニマップを意識したことはあるでしょうか。これらは「HUD(ヘッドアップディスプレイ)」と呼ばれ、プレイヤーが状況を瞬時に把握するために不可欠な要素です。


HUDのデザインや配置は、ゲームの操作感や没入感に直結するため、開発現場では重要な設計項目とされています。本記事では、HUDの基礎知識からUIとの違い、開発における役割、そして歴史的な変遷までを詳しく解説します。


ゲームにおけるHUD(ヘッドアップディスプレイ)とは

HUD(Head Up Display)は、ゲームのプレイ画面上に操作しているメイン画像とは別に示される情報を指します。たとえば自身や敵のHP残量のゲージ、残弾数やバフ、デバフの状態、自分がいる位置を示すマップ、その時点のステータス表示などが代表的です。


HUDという言葉は、航空機の分野で使用され始めたと言われています。戦闘機や旅客機は非常に高速で移動しているため、わずかなよそ見がパイロット自身や乗客の生命を危険にさらすリスクがあります。そのため、計器類を見るときにパイロットが視線を大きく動かすことを避けたい事情がありました。それを踏まえて、航空業界ではパイロットが正面を向いたまま(Head Up)必要な情報を確認できるようにフロントガラスに情報を表示する技術が発達したのです。


ゲームにおいては現実の生命はかかっていませんが、重要な情報を見るためにいちいちメニュー画面を見る必要があると、没入感が大きく低下します。また、オンラインバトル中であれば、その行動が勝敗を分けることもあるでしょう。


このような理由から、HUDはゲームにおいてもジャンルを問わず使われています。なお、ゲーム開発におけるHUDの発展は当コラムの「HUDの歴史と進化」の項目でくわしく解説しています。


HUDが使われる主なゲームジャンル

ゲームにおいて、HUDはほぼすべてのジャンルで使用されていますが、表示される内容はジャンルごとに異なります。以下でジャンルごとに表示されることが多い内容とその重要性などを紹介します。


・FPS/TPS

エイム時に使用するレティクル(照準用十字スコープ)、武器の残弾数、キルログなどが必須です。一瞬の判断が勝敗を分けるため、視認性の良さが強く求められます。


・RPG

HP(体力)やMP(魔力)のゲージ、スキルのクールタイム、レベルアップまでに必要な経験値などが表示されます。また、位置情報が重要なゲームであればミニマップを常時画面に出すゲームもあります。


・レーシング

速度計、タコメーター(回転数表示)、順位、コースの全体図、ラップタイムなどのHUDが一般的です。高速移動中に情報を読み取る必要があるため、コントラストの高さが求められます。


・格闘ゲーム

自身と対戦相手の体力表示、コンボ数、残り時間、EXゲージなどが表示されます。左右対称の美しさと情報の公平性が重視されるジャンルです。


HUDとUIの違い

UIとはユーザーインターフェースの略語であり、ゲームにおいてはメニュー画面、操作ボタン、設定項目表示、アイコンなど、ユーザーとゲームシステムの接点全般を指す広い言葉です。


HUDの目的はユーザーにゲームをプレイするうえで必要な情報を提示するものなので、位置づけとしてはUIの一部として扱われます。


幅広いUIのなかでHUDを定義する場合、非インタラクティブ(入力を必要としない)であることや、主にインゲームで使用されるものを指すことが多いです。ただし、HUDから操作、入力できるものもあるので、上記は絶対的なものではなく目安と考えてください。


ゲームHUDの主な要素と構成


この項目では、ゲームにおけるHUDの主たる要素や一般的な構成を解説します。


HUD要素一覧

HUDとして表示される要素は多数存在します。以下にゲームで使用されるHUDを要素分けして紹介します。


・バイタルやステータス

HP(体力)、MP(魔力)、スタミナ、空腹度などの表示は多くのゲームに存在します。これらは数値表示されることもありますが、状態を把握しやすいように色で表示される例も多いです。その場合、潤沢な状態が緑、危機的状況になると赤が選ばれることが多く、点滅表示を採用するタイトルもあります。


・空間ナビゲーション

ミニマップ、方位磁針(コンパス)、目的地までの距離や目的地の方向を示すマーカーなどが一般的です。画面を隠さない工夫として透過率が高いナビゲーションが採用されることもあります。


・戦闘に特化した情報

使用中の武器、所持弾薬の種類や数、キル数などのスコア、マルチプレイ時の順位などが代表的です。また、敵に与えたダメージを数値的に把握できる表記もHUDに含まれます。


・スキル関連表示

所持スキルや使用中のスキル表示、スキル使用可能になるまでのクールタイムなどがあります。


・ダイエジェティックUI

近年はゲーム内のキャラクターが見ている画面をプレイヤーにも見せるダイエジェティックUIという手法もあります。たとえば、SF的ガジェットとしてキャラクターが被っているヘルメット内に敵の位置が見えるレーダーがあり、プレイヤーもゲーム内のキャラクターと同様のものを見ている想定で表示する方法です。この手法はゲームの世界観を生かしながら、没入感を高めることに役立ちます。


HUD配置の基本パターン

HUDはプレイヤーにとって必要な視界を確保しながら、情報をわかりやすく伝えなければなりません。画面中央部はプレイヤーにとって最も見やすい位置なので、HUDを中央に固定配置することはほとんどありません。そのため固定のHUDは上下左右、四隅などに置くのが基本です。


ただし、FPSなどのシューティング要素が強いジャンルなら、レティクル(照準用十字スコープ)を中央に置くことは珍しくありません。また、FPSなどは常に緊迫感があり視線を大きく動かさずに情報を得たいので、残弾数などの重要な情報は中央から少し視線を移した場所に配置されがちです。


ほかにも、移動するキャラクターの頭上や足元などに情報を表示する手法もあります。


HUDを自由に調整できるゲームもある

近年のタイトルではプレイヤーがHUDを自由に配置できるケースが見られます。


たとえばスクウェア・エニックスのMMORPGである「ファイナルファンタジーXIV(FF14)」は「HUDレイアウト編集モード」でHUDの位置や大きさを調整できるため、自分なりのカスタマイズが可能です。ほかにも、「フォートナイト」や「ストリートファイター6」などもHUDのカスタマイズが可能です。


HUDの編集可能なタイトルを入手している場合、ぜひ編集してみることをおすすめします。プレイヤーであれば、操作性の向上や見やすさによって集中力アップが期待できます。


一方ゲーム開発者であれば、ジャンルやタイトルによってHUDの最適な配置が異なることを、ユーザー目線で実感できるでしょう。


HUDがゲームプレイに与える影響

HUDは単なる情報伝達手段にとどまらず、ユーザーのプレイ体験(UX)そのものに大きく関わります。プレイ中に的確な情報が瞬時に得られれば、勝敗やスコアなどを上げやすいですし、プレイ中の没入感低下を避けつつストレスを緩和できます。


さらに、優れたHUDがあればプレイの快感を得やすくなるので、プレイヤーの高揚感が大きくアップします。


するとゲームの評価向上やゲーム滞在時間アップによる収益向上も見込めるので、ユーザーとゲーム会社の双方にとって大きなメリットです。


その一方で、HUDのデザインが悪いと、情報取得ミスの頻度が増えたり、ストレスが上がったりしてゲーム本来の楽しみを得にくくなります。情報を提示するのは良いですが、情報過多になったり視認しにくかったりするとマイナスになることもあるため、開発者としては注意が必要です。


HUDに関わるゲーム開発の職種

HUD制作には複数の職種が関わります。会社やプロジェクトによって異なる場合はあるでしょうが、一般的には以下の職種がそれぞれの役割を担います。


・ゲームプランナー

そのタイトルに関して、ゲームプランナーはどの情報をHUDで表示するかを取捨選択する役割を負います。そのうえで、UI/UXデザイナーやエンジニア(プログラマー)が開発するために仕様書をまとめます。


・UI/UXデザイナー

プランナーが作った仕様書に基づき、ゲームの世界観を踏まえたデザインを行います。プレイヤーにとって見やすい色やフォントを選択し、アニメーションによる表現をデザインするのもこの職種です。視認性と利便性の両立を目指す難しさがあります。


・エンジニア(プログラマー)

プランナーが作った仕様書の内容と、UI/UXデザイナーのデザインを実装するためのプログラミングを行います。また仕様に基づいて、内部のゲームロジック(HPの減少やアイテムの加算)と、画面上の表示を同期させます。情報を的確に伝達しつつ、データ容量的に重くなり過ぎないようにするなどの配慮も問われます。


HUDの歴史と進化


この項目では、ゲーム業界におけるHUDの進化の歴史を解説します。


初期のHUD(1970〜1980年代)

アーケードゲームは1960年代から存在していましたが、初期にはデジタル表示はなかったのでHUDも存在しません。そのため、ゲームにHUDが組み込まれたのは1970年代だと思われます。またHUDが実装され始めても、初期のゲームではスコアと残機数などが表示される程度のシンプルなものでした。


1978年リリースの「スペースインベーダー」では上部にスコアとハイスコアがあり、左右の下部に残機数やクレジット(プレイ可能数)が表示されています。


1980年リリースの「パックマン」では、上部にスコアとハイスコアが数値表示され、左下に残機数、右側にパワーアップ表示が見られます。


家庭用ゲーム機も1970年代から存在していましたが、1983年に任天堂がファミリーコンピュータ(ファミコン)をリリースして以降、ゲーム自体の発展とともにHUDの多様化が進んでいきます。


2Dから3Dへの進化(1990〜2000年代)

1990年代になると、ハードウェアの進化によってグラフィック表現が豊かになっていきます。この時期には対戦格闘ゲームが大流行したことで、体力表示などのHUDも大きく進化しました。また、3Dゲームの普及に伴い、立体的な表示でHP残量などを表示するなどの工夫が増えました。


さらに2000年代には、ハード、ソフトともに進化が続いたうえに、スマートフォンの普及が始まります。その結果、HUDの情報量が増え、ミニマップや複雑なゲージも実装されるようになっていきます。


カスタマイズ可能なHUDの普及(2010年代〜)

2010年代以降は、スマートフォンやインターネット環境が浸透したこと、オンラインゲームやeスポーツの普及などを背景として、誰もが気軽にゲームに触れる時代になりました。また、ゲーム配信が文化となって、多くの人が発信する流れも盛んになっています。


その結果HUDは情報量が増加しただけでなく、カスタマイズも可能となっています。自分にとって見やすいだけでなく、配信を見る人に見やすい配置を作ることも一般化しています。


VR・AR時代のHUDの今後

HUDはハードやソフトの進化によって今後も変わっていくでしょう。その要素のひとつとして、VRやARを取り入れたゲームならではの表示方法も進化すると思われます。これまでの2Dや3Dとは異なり、プレイヤーがアバターとなってゲーム内に入ったような疑似体験をする場合、HUDの在り方もこれまでとは異なる要求が出てくるからです。


たとえばVRゴーグルをつけた状態であれば視線追跡(アイトラッキング)の技術を利用できますし、立体空間を使った表示も可能になります。このような状況でも、HUDの本来の目的である情報提供と没入感の両立が求められます。


まとめ

HUD(ヘッドアップディスプレイ)は、プレイヤーに必要な情報を提供するための手法です。適切なHUDがあれば、プレイヤーはスムーズに情報を把握しながら、ゲームへの没入感を維持できます。


HUDは1970年代から存在しており、ハードやソフト、ゲーム環境の進化とともに、発展や多様化を遂げています。


また、HUDはジャンルやタイトルによって表示すべき内容が異なるため、当コラムではジャンル別、要素別にHUDを解説しました。


ゲーム業界への就職・転職を目指す人は、この機会に自分が目にするHUDの機能やデザインに目を向けてみてください。そして、このコラムの情報を踏まえながら、HUDに注意を向けることが、ゲーム業界に入ってから実務に役立つことと思います。

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