ゲームの「ビルド」とは?意味や魅力、実装する際のポイントについて解説
2026年1月26日

近年のゲームにおいて、「ビルド」という概念は単なるカスタマイズの域を超え、ユーザーが大きな関心を向ける要素となっています。しかし、ビルドという言葉は広い幅をもっているので、どのように語ったらいいかわからない人も多いでしょう。
そこでこのコラムでは、ビルドという言葉の意味を説明し、なぜこれほど支持されているのかを解説します。
また、ゲーム解説者に向けてビルド実装時に注意すべき点を記載しますので、ユーザーと開発者の両方にプラスの知識をもたらします。
ゲーム用語としての「ビルド」とは
ゲームにおける「ビルド」とは、目的に合わせてスキルや装備の適性、デッキやメンバーを構成していく行為や、またはその完成系を指します。
ゲーム業界内のコラムでは、特定の目的に沿って組み上げた「装備」を指すと書いていたり、「構成要素」を指すと書いていたりしてバラつきがありますが、このコラムでは構成していく行為と、その完成系を指す、というスタイルで記述します。
ただしビルドという言葉は、キャラクターや装備に対して使う場合とデッキやチームに対して使う場合で若干ニュアンスの違いがあるので、以下で個別の説明をします。
キャラクターや装備の場合
スキルツリーのあるキャラクターや装備に対して「ビルド」という言葉を使う場合、強化・育成の意味が強まります。
ゲーム業界では以前から「育成」という言葉が使われており、キャラクターや装備のビルドは育成に含まれる概念です。ただし、「育成」という言葉には一律のレベル上げのニュアンスが強いですが、「ビルド」という言葉は選択肢があり、方向性を決めて成長させていくときに使います。
たとえば、ガチャなどで入手したレベル0のキャラクターや装備をレベル100に上げる場合は「育成」と言います。一方、そのキャラクターや装備にスキルツリー(ゲームによってルーンと呼ばれることもある)など方向性の分岐があり、火力特化、防御特化など選択しながら強化していく場合にビルドという言葉を使います。この場合、組み合わせるのは育成素材であり、消耗するものであることが多いです。
※ただし、育成とビルドの使い方に差がない場合や、上記とは異なる定義をする場合もあることはご了承ください。
デッキやチームの場合
カードゲーム等でデッキを組む場合はデッキビルドと言いますし、チーム編成することもチームビルドと呼びます。
この場合も目的に応じて構成する行為はキャラクターや装備のビルドと同様です。ただし、キャラクターや装備の場合、素材などを消費して完成系を作ることに対して、デッキやチームの場合、キャラクターやカードを組み合わせるので何も消費しません。
つまり、キャラクターや装備に対してビルドという言葉を使う場合は育成の要素が強いですが、デッキやチーム編成の場合、組み合わせることを示します。
ビルドという言葉が使われるシーン

ビルドは目的に沿って構成するものなので、PvE(Player vs Environment:対コンピューター戦)とPvP(Player vs Player:対プレイヤー戦)で異なる場合があります。以下に、PvEとPvPに分けて、使われることが多いビルドを紹介します。
PvE(Player vs Environment)
・高速周回ビルド
繰り返しプレイやオートプレイ向けに、速度に特化した構成です。敵より早く攻撃し、エリア攻撃などを使ってダメージを受けずにゲームを早く進めることを目指します。
・ボス特化ビルド
強力な敵に勝つためのビルドです。ゲームにもよりますが、デッキ構成であればバフ担当のサポートキャラと攻撃担当の大火力キャラ、ボスの強攻撃を防ぐディフェンスやタンクキャラ、ダメージ回復キャラなどで構成することが考えられます。また、ボスに対する継続ダメージや追加ダメージを強めることも重要です。ボスの属性や耐性などを踏まえた選択も欠かせません。
・資源回収ビルド
素材のドロップ率や獲得経験値を優先したビルドです。
・安定攻略ビルド
ザコ敵や中程度の敵向けの平均的に強いビルドです。このビルドを確立しておけば、こまごまとビルドを構成し直す必要がないので便利です。
PvP(Player vs Player)
文字通り人間同士の対戦なので、お互いに戦法の読み合いが行われます。そのため、相手の出方を見て対応することや、地形の状況などを読むこと、自分の有利な状況に持ち込むことが求められます。
・ロール重視のビルド
チーム戦の場合、タンク、火力、サポートなどの役割分担があり、そのロールをこなせるビルドのキャラクター配置が重要です。
なぜゲームユーザーにビルドが支持されるのか
この項目では、近年ビルド要素があるゲームが支持される理由を、4つの視点から解説します。
・攻略方法が複数あるという考え方
PvEのボス戦であっても攻略方法はひとつではありません。デッキを組むタイプのゲームの場合、所有する中で強いキャラを中心にして、そのキャラを強化するバフをもつサポートや、中心キャラを補う特性を持つキャラの強化が進むことでしょう。結果的に様々なデッキビルドを試すことになり、それこそがプレイヤーにとっての楽しみとなります。
・試行錯誤が成長体験になる
ビルドは試行錯誤を繰り返して完成させていくものです。ユーザーは「この方向で強化してみよう」と考え、試した結果「思ったほど強くない」ということもあるでしょう。しかし、その失敗を踏まえて、微調整したり大幅に変更したりしながら、最強ビルドを目指します。そうしたトライの結果うまくいけば、プレイヤーにとっては大きな成長体験になります。
・好みのキャラや戦い方を追求する喜び
ビルドの答えはひとつではないので、自分のこだわりを追求して勝つ喜びがあります。たとえば多くの人が主力とするキャラをあえて加えず、自分なりのビルドで勝つときは、単なる勝利以上の喜びがあるでしょう。つまり選択肢の多さは個性を示す機会でもあるのです。
・環境変化による再発見の面白さ
オンラインゲームでは定期的にバランス調整が行われます。これによって昨日までの有力なビルドが調整対象となり、さほど有力でなくなることがあります。またその一方で、さほど有効と思われていなかった組み合わせが評価されることも珍しくありません。このような動きには一時的に悲鳴が上がることがありますが、ゲームを長期的に楽しめるものとするために必要な過程です。
ゲームにおける一般的なビルドの種類
ゲームのジャンルによって、ビルドの種類も大きく異なるので、ここではいくつかの例を紹介します。
ただし、同じジャンルでもタイトルごとに異なる点が多いですから、具体的にプレイするタイトルが決まっているのであれば、そのタイトルに特化したサイトをご参照ください。
ハクスラARPG
「ディアブロ」や「Path of Exile」に代表されるジャンルです。
ストーリーより戦闘重視のタイトルが多く、倒した敵からドロップする装備やアイテムを集めながら強くなっていくスタイルが一般的です。ドロップアイテムはランダムなことが多いため、入手した装備をどう使うかがポイントとなります。
スキルツリーを有する場合、分岐ごとに考えながらビルドしていく楽しみがあります。スキルの振り直しができるものとできないものがあるので、スキルを振り始める前にしっかり確認しておきましょう。
ローグライト・ローグライク
「HADES」や「Vampire Survivors」などが有名です。
プレイのたびに装備やマップがリセットされるタイトルが多く、アイテムドロップもランダムです。そのため、時間をかけて構成を考えるのではなく、短期的なビルドが要求されます。つまり、運次第でビルドの方向が大きく変わります。
サバイバル系のローグライトであれば短期間で無双状態にできる場合もあり、熟考より運や臨機応変さを楽しむゲームが多いです。
シミュレーションRPG
「ファイアーエムブレム」や「タクティクスオウガ」などのタクティカルなジャンルです。
このジャンルは部隊全体の強化と個別キャラクターの強化がカギとなります。そのため、火力担当、ディフェンス担当などの分業を意識した戦略が重視されます。
また、このジャンルでは少数のユニットで大軍を相手にすることが多いので、効率的に敵の数を減らすことが自軍のダメージ軽減につながります。そのため、エリア攻撃や速度を重視する攻撃も有効です。
対戦系
「League of Legends(LoL)」や「Apex Legends」などが該当します。
いわゆるPvPなので、対戦相手はコンピューターではなくプレイヤーです。また、単独の戦闘もありますが、チーム戦を楽しむ人が多いジャンルでもあります。そのため、チームメンバーの強みを生かした戦略や、相手の攻撃を読むこと、比較的多いビルドに対応できる柔軟性のある編成であることなどが重視されます。
また、装備のバリエーションが豊富で、そのカスタマイズが可能なタイトルも多いので、ビルドには情報収集が欠かせません。「LoL」や「Apex Legends」などの人気タイトルならおすすめの装備例の紹介もWeb上に豊富にあります。
ほかのプレイヤーのビルドを取り入れたり、参考にしながら自分なりの最強ビルドを目指したりするのも楽しいでしょう。
ビルド要素を実装する上で意識したいポイント例

ゲーム開発に携わるエンジニアやプランナーにとって、ビルド要素を実装する難易度は高めです。しかし、ビルドによるやり込み要素を加えると、ゲームが単調になって飽きられることを避けやすくなります。そのため、難易度は高くてもビルド要素を実装するゲームが増えています。
以下では、ビルド要素を盛り込む際に開発者が意識すべきポイントを解説します。
「どのビルドでも戦える(ゲームクリアできる)」バランスが理想
プレイヤーは「理想のビルド」、「最強のビルド」を追い求めますが、ゲーム開発者としては1つだけの「理想のビルド」が存在するようなゲームは避けるべきです。本当に「無敵のビルド」ができてしまったら、誰もがそこを目指すことになり、ゲームの多様性がなくなってしまうからです。
また、人と同じでは面白くないと思う人は異なるビルドを検討するでしょうが、「無敵のビルド」が存在した場合ほかの選択をした人は勝てないので、面白みを失ってゲームから離れてしまいます。
そのため、どのビルドでも戦えるようにバランス調整することが、ビルド実装時の大前提なのです。
しかし、現実にはどうしてもバランスが悪い状態はできてしまい、完全に「無敵」ではないとしてもかなり有利なビルドはできてしまいます。そのため開発者は常にユーザーからのフィードバックを受けて、バランス調整を行うことが不可欠です。
対戦ゲームの場合は「メタ」が回ると非常にやりがいができる
オンライン対戦ゲームに関しては、「メタが回る」ことを意識して開発すると、ユーザーにやりがいを提供しやすくなります。ここで言う「メタ」とは、強いビルドと理解してください。(「メタ」という言葉の説明は当コラムでは省略します)
前の項目で書いたように、絶対的な「無敵のビルド」ができてしまうとゲームの面白さは失われますが、「一時的に強いビルド」、「ある局面で強いビルド」があるとプレイの活性化につながります。
「メタが回る」という言葉を単純化するなら、じゃんけんを例にすると明瞭になります。じゃんけんには3つの手があり、それぞれ勝てる手と負ける手があることで公平性を保っています。
ゲームの場合、ビルドはもっと無数に存在しますが、AのビルドはBには強いがCには不利、という状況ができればよいのです。これによってユーザーは「自分なりのお気に入りのビルド」で戦えるので、やりがいや楽しみを維持しやすくなります。
ビルド幅を大量に実装する場合は振り直し方法も気軽にできるようにしておく
ビルドには分岐や選択がつきものですが、選択肢が多すぎると、初心者はリスクを恐れて取り組みにくくなります。また、ある程度ビルドを進めてから、「異なるビルドにすればよかった」とユーザーが思ったとき、後戻りできないと「またゼロからやり直すのは面倒」とゲームから離れてしまうリスクがあります。
そのため、ビルド要素を実装する場合、振り直しができるように設計しておくことをおすすめします。
まとめ
近年ゲームの大きな楽しみとなっている「ビルド」について、言葉の意味や支持されている理由、ビルドの種類などをまとめました。またビルド要素を実装する開発者向けに、意識すべきポイントも解説しています。
ビルドはプレイヤーにとってはゲームをより深く楽しむためのやり込み要素であり、ゲーム会社にとっては飽きずに長くプレイしてもらうための手段です。そのため、適切なビルド要素が実装できれば、ユーザーとゲーム会社の両方にメリットをもたらします。
ビルド要素実装には難しい面もありますが、ぜひ当コラムを参考にして、ユーザーに喜びを与えるビルド要素実装を目指してください。