ゲームとジャンプスケアの相性とは?ゲーム体験における“驚きの演出”の役割と正しい使い方


2026年2月26日


当コラムでは、ホラーゲームにおける代表的な演出手法「ジャンプスケア」の定義から、プレイヤーの心理に与える影響、そしてゲーム制作においてこの手法を導入する際のメリットとデメリットを詳しく解説します。


ただ驚かせるだけの演出に留まらず、いかにして作品の没入感を高め、ユーザーから高く評価されるゲーム体験へと昇華させるべきか、その具体的な設計思想についても触れていきます。


ジャンプスケアとは

ジャンプスケア(Jump Scare)とは、ゲームや映画などで、突然の大きな音や衝撃的な映像などで見る人に驚きや恐怖を与える演出です。


Jumpは飛び上がる、Scareは怖がらせる、おびえさせるといった意味があり、言葉として「飛び上がるほど怖がらせる」ことを指しています。


ジャンプスケアは映画の演出方法として1940年代から存在するので、ビデオゲームが登場する以前から利用されてきた演出方法です。映画においては、事前に作り込まれた映像や音によって観客にアプローチするので、制作者が意図したタイミングで驚きや恐怖を与えることができます。映画であれば驚かせたいタイミングに向けて、効果音の挿入や視点誘導などを行えるため、上映時間内のどのタイミングで驚かせるかをコントロールすることが可能です。


一方のゲームに関しては、プレイヤーの操作が介入するため、時間ではなくマップ上の場所やプレイヤーの動作を契機としてジャンプスケアを挿入することが多いです。たとえば扉を開けるとジャンプスケアが発動する仕組みを一度見せると、次に扉を開ける動作が恐怖の呼び水となります。これはゲームのインタラクティブ性があるからこそ実現できるジャンプスケアです。


その一方、ゲームはプレイヤーが作品内に没入しやすい媒体でもあり、作品内の恐怖体験を自分のものと錯覚させる力があるため、映画よりゲームのジャンプスケアの方が効果的という意見もあります。


ジャンプスケアが人間の脳に与える心理効果

映画やゲームのジャンプスケア演出に触れた時、人間は脳内でアドレナリンを大量に分泌します。アドレナリンは生命の危機や強いストレスを感じた時に分泌されるホルモンで、眼前の脅威と戦う、あるいは全力で逃げるために身体を戦闘モードにする作用をもたらします。


その一方で、映画やゲームで現実的なダメージを負うことはないため、恐怖の後に急激な安堵感がやってきます。すると、脳内ではドーパミンなどが分泌され、快感や心地よさを生みます。怖いと思いながらもホラー映画やホラーゲームに触れる人が多いのは、上記のシステムがあるからです。


ただし、ジャンプスケアによる恐怖のすべてが快感として消化されるとは限りません。ゲーム体験の没入感の高さにより、ホラーゲームをプレイした後に不安な気持ちが長く続く人もいるという研究もあるからです。


ジャンプスケアによる健康上のリスクについては、当コラムの「ゲームでジャンプスケアを採用する場合のデメリット(注意点)」で詳しく解説します。ここでは、過去にホラーゲームで強いストレスを受けた人はレーティングを踏まえてプレイすること、苦手な人に無理にプレイを勧めないことをおすすめします。


ジャンプスケアがある代表的なゲームタイトル

ジャンプスケアを効果的に活用し、世界的なヒットを記録したタイトルは数多く存在します。以下でその代表的なものを紹介します。


【バイオハザードシリーズ】

カプコンが生み出したサバイバルホラーの代表作です。映画化にも成功しており、世界的に知られるヒットシリーズとなっています。このシリーズでは、ゾンビやクリーチャーが暗いところから飛び出してくる演出や、倒したと思った敵が襲いかかってくる恐怖など、ジャンプスケアが多く見られます。


【零シリーズ】

コーエーテクモ(初代リリース時はテクモ)がリリースしている和風ホラーシリーズです。カメラで写すことで霊を倒すシステムなので、恐怖の対象にファインダーを向けなければならないというゲーム性が独特です。静かな雰囲気ですがジャンプスケアが豊富で、敵がモンスターではなく心霊だからこその恐怖が随所に盛り込まれています。


【SIRENシリーズ】

2003年にソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)からリリースされ、シリーズ化を果たしています。敵の視点を乗っ取る視界ジャックというシステムや、「どうあがいても、絶望」というキャッチコピーでユーザーにとって印象強いタイトルとなりました。


【OUTLASTシリーズ】

カナダのインディーズスタジオRed Barrelsが提供しているサバイバルホラーシリーズです。戦って脅威を倒すことができないので、ひたすら逃げ隠れることを特徴としています。

比較的ジャンプスケアが多いことで知られており、流血や内臓露出などの演出が多いためか、2作目はオーストラリアで発売禁止になったこともあります。


ゲームでジャンプスケアを採用するメリット


ホラーゲームにジャンプスケアを導入すると、単に驚かせる以上のメリットが得られます。そのメリットを4つの角度から解説します。


探索・没入感を高められる

そもそもホラーゲームは没入感が高いジャンルです。プレイヤーは暗闇や不気味な効果音などで緊張が高まっており、霊やゾンビなどが襲いかかってくる可能性に身構えます。


この状況は感覚を研ぎ澄ませる状態を生みます。そこにジャンプスケアが発生すると、プレイヤーは大きな衝撃を受けます。そしてそれが静まったあとにも、次の恐怖に備えてしまうため、自然と没入感が高まっていきます。


また、ジャンプスケアは緊張が続くゲームの中で、ストーリー進行のアクセントとしての役割を果たす点でも有効です。


緊張感のコントロール装置になる

ホラーゲームであってもずっと怖いままではゲームから脱落する人が増えたり、恐怖に慣れや飽きを感じたりする人もいます。これを防ぐためには、緊張と緩和を波状に挿入することが重要であり、ジャンプスケアはその波をコントロールする仕組みとして役立ちます。


ホラーゲームでは、まず比較的静かながらも、暗闇や微小な音などで恐怖感を高める工程があります。ここでは直接的な恐怖体験はありませんが、雰囲気でプレイヤーの感情をコントロールします。そしていくつかの前置きのあと、ジャンプスケアが挿入されることで蓄積された緊張が衝撃に変わり、再び静かになることでプレイヤーを次のシークエンスに向かわせます。


短時間で強い印象を与えられる

ゲームのストーリーや操作感の良し悪しなどはプレイを進めていかないとわかりませんが、ジャンプスケアは序盤の早い段階で挿入することが可能です。そのインパクトによって、ゲームの良さが伝わらないうちにユーザーが離脱してしまうリスクを低減できます。


恐怖体験は記憶に残りやすいとされていることもあり、ホラー好きの人がその後もゲームを続けていく動機付けになるでしょう。


SNSや口コミで話題になりやすい

ジャンプスケアはインパクトが大きいうえに端的に共有しやすいので、SNSで発信しやすい特徴をもっています。たとえば「いきなり○○が出てきたとき、死ぬほど怖かった」といった具合で書き込まれれば、それ自体がゲームのマーケティングに寄与します。


また、ゲーム配信でもリアクションの面白さが伝わりやすいので、ジャンプスケアを導入したタイトルは配信者に取り上げられやすい特徴をもっています。大きなリアクションは視聴者も楽しみやすいので、結果としてゲームの知名度を上げるメリットがあります。


ゲームでジャンプスケアを採用する場合のデメリット(注意点)

ここまで紹介してきたメリットを持つ一方で、ジャンプスケアは劇薬でもあり、その使い方を誤ると作品の質を著しく損なう危険性を孕んでいます。


不快感やストレスを与えるリスクが高まる

ジャンプスケアは単純に驚かせるだけでなく、大きな音や恐ろしい映像を伴うので、それに触れるプレイヤーに少なからずストレスを与えます。


恐怖やストレスへの耐性には個人差があるので、ある人にとって「適度な刺激」であっても、別の人には「耐えがたい苦痛」かもしれません。そのため、ホラーゲーム開発に関わる人は、過度なジャンプスケアは離脱者を増やすリスクがあることを知っておく必要があります。


チープさからくるゲーム自体への評価の低下

ジャンプスケアは多くの人に驚きを与えますが、「安易な演出」と評価されることもあります。設定や展開で恐怖を演出することを十分に積み上げず、大きな音や瞬間的な刺激でごまかしているという印象をプレイヤーに与えてしまうからです。


実際に「ホラーは好きだけどジャンプスケアは嫌い」という人は多数存在しますし、「ジャンプスケアは怖いのではなく驚かせるだけ」と考える人も少なくありません。また、「過度に驚かされ続けることでほかの情報が咀嚼できず、ゲーム自体を楽しめない」という意見もあります。


そのため、ジャンプスケアにばかり頼った作品は「安っぽい」と評価されがちです。これを踏まえて、ジャンプスケアはあくまでも演出のひとつであり、怖さを提供するメインの方法ではないことを理解しておきましょう。


心臓への負担や健康面の配慮が必要になる

ジャンプスケアは精神的衝撃を与える手法なので、プレイヤーの健康状態に影響を及ぼす可能性があります。


ホラーコンテンツを見た人の健康状態を検査したところ、恐怖刺激によって心拍数が上がるなど、生理的なストレス反応が強まる可能性が示唆されています。


また、架空のものであるゲーム内の恐怖が、現実のものと脳が錯覚してプレイ後に不安が続く人もいる、といった報告もあります。脳には海馬と呼ばれる部位があり、体験が現実のものか非現実のものかを判別しています。しかし没入感が高いゲームにおいては、海馬の機能を超えてゲームの恐怖体験が現実のものと誤認してしまうこともあるそうです。


脳の恐怖に対する感受性には個人差がありますが、もともと不安を感じやすい人や過去にトラウマ体験がある人は、演出上の恐怖にも不安を感じやすい傾向もあります。


ホラーゲーム開発者は、過度に驚かせたり怖がらせたりすることがプレイヤーの健康に悪影響を与える可能性があることを踏まえたうえで、演出を選択していくべきでしょう。


ユーザーからの評価につながりやすいジャンプスケアとは


この項目では、評価につながりやすいジャンプスケアについて考察します。


評価されるジャンプスケアの特徴

ジャンプスケアがノイズにならず評価されるものにするためには、ゲーム全体のバランスを考えることが重要です。


怖がらせる効果を安易に求めてジャンプスケアを多用し過ぎると、プレイヤーは鬱陶しく感じてしまいますから、適度な回数を考える必要があります。また、物語の流れと無関係なジャンプスケアがあるとプレイヤーは冷めてしまいますから、文脈や必然性を踏まえて挿入するよう心がけましょう。


ジャンプスケアは静かな演出で緊張を上げてから一気に衝撃を与えるのが基本ですが、同じパターンだと飽きやすいので、フェイントをかけたりする工夫も重要です。


嫌われるジャンプスケアの典型例

単に大音量で驚かせるだけのジャンプスケアは、プレイヤーから嫌われがちです。ホラー好きの人にとって、大きな音で驚くのは、恐怖とは別だからです。


また、前振りがないジャンプスケアもあまり好まれません。恐ろしいことが起こる予兆があって、プレイヤーの緊張が高まったときにジャンプスケアは高い効果を発揮するからです。


さらに、ジャンプスケア演出を長く続けすぎるのも悪手です。瞬間的には恐怖感があってもその時間が長くなると人間は慣れてしまうので、緊張を高めた後、一気に驚かせて短時間でその演出を抜けるよう心がけましょう。


ほかにも探索を伴うゲームの場合、マップ上の同じ位置に何度か訪れることがありますが、その都度同じジャンプスケアが発生するのも好ましくありません。何度も同じ演出を見せ続けるようなことにならないよう、注意してゲームを設計してください。


まとめ

ジャンプスケアは、ホラーゲームでプレイヤーに恐怖を与える手法として広く利用されています。


しかし、強い恐怖を与えすぎるとプレイヤーはストレスからゲームを離れてしまったり、健康上の問題がでたりするリスクがあります。また、ジャンプスケアの頻度が多いとゲームが安っぽくなってしまうので、ゲーム全体のバランスを踏まえて導入することが重要です。


ジャンプスケアを入れることは悪い選択ではありませんが、程度や回数、流れなどを踏まえて利用するよう心がけましょう。

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