リテンション率とは?ゲーム運営で使える計算方法・目安・改善施策を解説
2026年10月26日

運営型のゲームに携わっていると、「リテンション率」という指標を耳にする機会が多いと思いますが、「計算方法がわからない」「自社タイトルの数値が良いのか悪いのか判断できない」という方もいらっしゃるでしょう。
そこでこのコラムでは、リテンション率の定義や計算方法、数値の目安に加え、下がる原因と改善施策までを解説します。読み終えるころには、自社タイトルの継続率をどう読み、どこから手を付けるべきかがわかるようになるはずです。
リテンション率とは?
そもそも「リテンション(retention)」とは、英語で「保持」や「維持」を意味する言葉です。マーケティングの分野では、獲得した顧客との関係を維持し、継続して利用してもらうための取り組みを指します。
ゲームにおけるリテンション率とは、ある日にプレイを始めたユーザーのうち、一定期間が経過した後も遊び続けているユーザーの割合です。日本語では「継続率」や「定着率」とも呼ばれ、ゲームがユーザーにどれだけ受け入れられているかを測る代表的な指標として使われています。
チャーン率・DAU・MAUとの違い
リテンション率と混同されやすい指標に、チャーン率やDAU、MAUがあります。
チャーン率(離脱率)は、一定期間のうちにプレイをやめたユーザーの割合で、リテンション率の裏返しにあたります。例えば、7日後のリテンション率が20%であれば、チャーン率は80%です。
一方、DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)やMAU(月間アクティブユーザー数)は、その期間に遊んだユーザーの人数を表します。つまり、DAUやMAUが「ユーザーの量」を示すのに対して、リテンション率は「ユーザーの質(定着度)」を示す指標です。広告で新規ユーザーを大量に獲得すればDAUは一時的に伸びますが、定着していなければすぐに元の水準へ戻ってしまうため、両方をあわせて見ることが重要です。
運営型ゲーム(GaaS)とリテンションの関係
リテンション率は、運営型ゲーム(GaaS:Games as a Service)で特に重視されます。買い切り型のゲームは販売した時点で売上が確定しますが、運営型ゲームはリリース後もユーザーに遊び続けてもらうことで収益が積み上がっていくからです。
例えば、毎月更新される月額パスや、シーズンごとに報酬が用意されるバトルパスは、継続してプレイすることを前提にした収益モデルです。こうした仕組みでは、ユーザーが定着しなければ売上が成り立たないため、リテンション率が事業の土台になります。
ゲーム会社がリテンション率を重視すべき理由

ここでは、ゲーム会社がリテンション率を重視すべき理由を5つ解説します。
新規獲得より既存ユーザーの維持のほうが費用対効果が高い
マーケティングの世界では、「新規顧客の獲得には、既存顧客を維持する数倍のコストがかかる」とよく言われます。この考え方はゲームにも当てはまります。
特に近年のゲーム広告では、1インストールあたりの獲得単価であるCPIが高騰しています。費用をかけて獲得したユーザーがすぐに離脱してしまうと、広告費を回収できません。そのため、獲得したユーザーをいかに定着させるかの重要性が、以前よりも増しています。
LTV(ユーザー生涯価値)が伸びて事業計画が立てやすくなる
LTVとは、1人のユーザーがプレイを始めてからやめるまでにもたらす売上の合計です。おおむね「1日あたりの平均売上 × 平均継続日数」で決まるため、継続率の改善はそのまま売上の伸びにつながります。
また、「LTV > CPI」が成り立つかどうかは、広告投資を続けるかを判断する基準になります。リテンション率が安定していればLTVを予測しやすくなり、広告予算や開発体制などの事業計画も立てやすくなります。
課金の段階的なステップアップにつながる
長く遊ぶユーザーほど、課金の幅が広がりやすい傾向があります。例えば、最初は初回限定のお得なパックを購入し、次に月額パス、やがて高額パックへと、段階的にステップアップしていく流れです。ゲームへの愛着や理解が深まるほど、課金する価値を感じやすくなるためです。
さらに、自社の別タイトルへ送客する場合も、定着したユーザーほど高い効果が見込めます。
コミュニティと口コミが育つ
定着したコアユーザーは、ゲームを遊ぶだけでなく、その魅力を外へ広げてくれる存在でもあります。SNSへの投稿や実況配信、攻略情報の発信などを通じて、新規ユーザーを呼び込んでくれるからです。こうした口コミは広告費をかけずに生まれるうえ、ユーザー自身の言葉で語られるため信頼されやすい特徴があります。
ソフトローンチや資金調達の判断材料になる
リテンション率は、経営上の判断材料としても使われます。例えば、地域を限定して先行リリースするソフトローンチの段階では、継続率がグローバル展開に進むかどうかを判断する指標になります。
また、パブリッシャーや投資家がタイトルの将来性を評価する際にも継続率は注目されるため、資金調達の場面でも重要な数値といえます。
リテンション率の計算方法
ここでは、リテンション率の計算式と、代表的な3つの計測タイミングを解説します。
基本の計算式と計算例
リテンション率は、以下の式で求められます。
リテンション率(%)= n日後もプレイしているユーザー数 ÷ 起点日に開始したユーザー数 × 100
例えば、10月1日に1,000人がプレイを開始し、そのうち350人が翌日の10月2日にもプレイした場合、Day1のリテンション率は「350 ÷ 1,000 × 100 = 35%」です。同じ1,000人のうち、7日後の10月8日にプレイした人が150人であれば、Day7のリテンション率は15%となります。
なお、インストールした当日を「Day0」、翌日を「Day1」と数えるのが一般的です。分析ツールによって数え方や集計方法が異なる場合があるため、数値を比べる際は定義をそろえるようにしましょう。
Day1・Day7・Day30で見るべきポイント
リテンション率は、Day1(翌日)、Day7(7日後)、Day30(30日後)の3つのタイミングで見るのが基本です。それぞれが反映する内容は異なります。
・Day1:第一印象とチュートリアルの出来
・Day7:ゲームの基本サイクルの面白さ
・Day30:長く遊べる設計とコミュニティの強さ
Day1が低い場合は、チュートリアルや最初の数分間の体験に課題があると考えられます。Day1は良好でもDay7で大きく落ちる場合は、繰り返し遊ぶ基本サイクルに飽きがきている可能性があります。Day30は、コンテンツの量や仲間とのつながりなど、長期的に続ける理由があるかどうかを映す数値です。
リテンション率の目安

モバイルゲームにおけるリテンション率の一般的な目安は、Day1が約30〜40%、Day7が約10〜20%、Day30が約5〜10%とされています。
ただし、この数値はジャンルによって傾向が異なります。例えば、シンプルな操作ですぐに遊べるハイパーカジュアルゲームは、初日の継続率が高い一方で、長期の継続率は弱い傾向があります。反対にRPGは、覚えることが多いぶん初日の継続率は低めになりがちですが、育成やストーリーの積み重ねがあるため、長く定着しやすいジャンルです。
そのため、一般的な目安だけで良し悪しを判断するのではなく、同じジャンルのタイトルや自社の過去タイトルと比べることが大切です。
リテンション率が下がる主な原因
リテンション率が下がる原因は、大きく3つに分けられます。
1つ目は、序盤の体験でのつまずきです。チュートリアルが長い、何を目指せばよいのかわからないといった状態では、ゲームの面白さが伝わる前にユーザーが離れてしまいます。難易度が急に上がる、キャラクターの成長が遅いなど、難易度や成長のバランスが合っていない場合も同様です。
2つ目は、動作や品質の問題です。ロード時間が長い、アプリが強制終了するといった不具合は、ゲーム内容以前の部分でユーザーにストレスを与えます。
3つ目は、運営面の問題です。不具合への対応が遅れたり、課金を迫る場面が多すぎたりすると、運営への不信感が生まれます。また、イベントの間隔が空いて遊ぶ内容が不足すると、熱心なユーザーほどやることがなくなり、離脱につながります。
ゲームのリテンション率を高める施策
ここでは、リテンション率を高める施策を、プレイ開始からの時期ごとに解説します。
開始直後:最初の体験を磨く
開始直後は、Day1のリテンション率を左右する最も重要な時期です。まずはチュートリアルの説明文を減らし、遊びながら自然に操作を覚えられる形にしましょう。
また、ゲームの一番面白い部分に、できるだけ早く触れてもらうことも大切です。初期報酬や成長演出で達成感を与えると、「明日も遊びたい」という気持ちにつながります。
1週間目まで:毎日遊ぶ習慣をつくる
1週間目までは、毎日ゲームを開く習慣をつくる時期です。ログインボーナスやデイリーミッションは、毎日遊ぶ理由をつくる代表的な施策です。ただし、こなす量が多すぎると作業感が強くなり、かえって離脱の原因になるため、短時間で終えられるように調整する必要があります。
さらに、「今日やること」と「今週のゴール」を同時に見せることも効果的です。目の前の目標と少し先の目標の両方があると、ユーザーは続ける意味を見失いにくくなります。
1か月目以降:長く遊び続けてもらう
1か月目以降は、遊ぶ内容を途切れさせないことが課題になります。年間の運営カレンダーを作成し、イベントやアップデートを計画的に配置しましょう。
また、ギルドやフレンドなど、仲間とのつながりも続ける理由になります。「一緒に遊ぶ仲間がいるから続ける」という状態をつくれると、コンテンツの更新だけに頼らない定着が期待できます。
データ分析と効果検証で改善を続ける
施策は実施して終わりではなく、データで効果を確かめながら改善を続けることが重要です。代表的な分析手法には、以下の2つがあります。
・コホート分析:インストール日ごとにユーザーをグループ分けし、継続率を比べる手法
・ファネル分析:チュートリアルの開始から完了までなど、どの段階で離脱が多いかを見る手法
例えば、アップデートの前後でコホートを比べれば、施策によって継続率が改善したかどうかを確認できます。
分析には、Firebase、GameAnalytics、AppsFlyerなどのツールが広く使われています。Firebaseはアプリ内の行動分析、GameAnalyticsはゲームに特化した指標の確認、AppsFlyerは広告経由の流入元ごとの計測に強みがあります。
まとめ
リテンション率について、定義や計算方法、目安、下がる原因、改善施策などを解説しました。
リテンション率とは、プレイを始めたユーザーのうち、一定期間後も遊び続けている割合を示す指標です。運営型ゲームでは継続プレイによって収益が積み上がるため、LTVや広告投資の判断にも直結します。
数値を見る際は、Day1・Day7・Day30のどこで落ちているかを確認し、時期に合った施策を選ぶことが大切です。また、施策の実施後はコホート分析やファネル分析で効果を検証し、改善を続けましょう。
ぜひこのコラムを参考にして、自社タイトルのリテンション率の改善に取り組んでみてください。