ゲーム開発におけるC++とは?言語の概要・ゲーム開発手法などをご紹介!
2023年6月26日
これからゲーム開発をしていきたいと考えている人のなかには、C++が気になるという人も多いのではないでしょうか。C++はC言語から派生した比較的古い言語ですが、実行速度が速い、複雑な処理を実行できるなど優秀な言語で、今もなお進化をつつけています。ゲーム開発ももちろん可能で、プログラマとして活躍したいなら習得しておきたい言語のひとつです。
このコラムでは、C++の特徴やC言語との違い、ゲーム開発にC++を採用するメリット、おすすめのテキストなどについて解説していきます。これからゲームエンジニアになるためにどの言語を習得すべきか迷っている、C++を習得すると役立つか知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
開発言語としてのC++とは
まずは、C++とはどのような開発言語なのかを説明していきましょう。
特徴
C++はC言語の拡張言語として誕生した、オブジェクト指向言語です。C++は以下のような特徴を持っています。
<C++の特徴>
・C言語と互換性がある
・オブジェクト指向言語なので拡張性が高く開発しやすい
・C言語と同様にプログラムの実行速度が速い
・汎用性が高い
C言語との代表的な違い
C++とC言語はどのような点が異なるのでしょうか?ここでは、C言語との違いについてご説明します。
言語構造
C++はC言語を拡張した言語ですが、言語構造そのものが大きく異なっています。
C言語は手続き型プログラミング言語と呼ばれる処理の順番にプログラムを記述していく言語構造です。たとえば、画面に文字列を表示してユーザーの入力を待つ、ユーザーが入力した文字を判断して処理を行うなど、処理の順番にプログラムを記述します。
一方、C++はオブジェクト指向プログラミング言語です。プログラムは処理の順番になっておらず、プログラムをオブジェクト(モノ)として扱い、それぞれのオブジェクトの関係性をもとにプログラミングしていきます。
このように、C言語とC++は言語構造がまったく異なることがわかります。ただ、C言語をベースとしているため、C言語を習得済みならC++を習得しやすいでしょう。
クラスの存在
C言語でデータ構造を定義する際には「struct」という機能を使いますが、「struct」では関数を定義できません。
一方、C++では「クラス」があり、データの構造体に変数だけでなく関数も定義できます。クラスの概念が追加されたことで、より多くのことができるようになっています。
ジェネリックプログラミング
C++にはジェネリックプログラミングという手法が取り入れられています。これは、データ型に依存しない汎用的なプログラミングができる手法です。
C++にはジェネリックプログラミングの考え方に基づいたテンプレートという概念があります。関数テンプレートやクラステンプレートなどを定義することで、データ型に依存せずに処理を共通化できます。
この手法により、データ型にとらわれない柔軟なプログラミングが可能です。
例外処理
例外処理とはプログラムの実行中にエラーが発生した際に、その後の処理をやめて例外として処理を行うことです。
C言語の場合、エラーが発生するとプログラムの結果にNULL値などの特定の値をセットしてエラーを検知する仕組みです。一方、C++では例外処理を実装しエラーを検出しやすいようになっています。
ゲーム開発におけるC++を用いる利点
ゲーム開発でC++を用いることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、ゲーム開発の現場にC++を採用するメリットについて見てみましょう。
プログラム実行速度が速い点
C++はプログラムの実行速度が速く、これはゲーム開発に限らずどのような現場でも大きなメリットになります。もとになったC言語も処理速度が速く、C++はその特徴を受け継いでいます。
近年のゲーム業界ではオンラインゲームや解像度の高いグラフィックのゲームなどが増えており、処理速度の速さが重要です。そのため、C++の処理速度が速いというメリットは、ゲーム業界でも存分に生かされています。
C言語より複雑な言語を実行できる
C++はC言語を拡張した言語なので、C言語よりももっと複雑な処理を実行できます。プログラムで複雑な機能を実装すると処理の負担が大きくなりますが、C++なら対応可能です。
ゲーム業界ではユーザー数が多い大規模オンラインゲームや複雑なゲームシステムなども採用されるようになりました。そのため、複雑な処理を実行できるプログラミング言語が求められていますが、C++はそのような要求にも十分対応できる優秀なプログラミング言語です。
C言語と互換性がある点
C言語と互換性があるという点も、大きなメリットです。そのため、C言語で開発されたゲームプログラムを、拡張性が高くメンテナンスがしやすいC++に移行することなども可能です。
C言語は古い言語ですが汎用性が高いためゲーム開発の分野でも採用されるケースが多く、C言語で作られたゲームは多数あります。古い言語とはいえC言語はまだまだ現役なので、Cと互換性があるC++を扱えることはゲームエンジニアにとって大きな強みになるでしょう。
ゲーム開発でC++が活用されるケース
ゲーム開発現場では、どのような場面でC++が活用されるのかを見てみましょう。
OS(オペレーションシステム)
C++のもとになったC言語は、もともとOSを開発するために作られた言語です。そのため、そのC言語から生まれたC++はC言語で開発されたOSの拡張が得意です。もちろん、C++でOSを開発することも可能です。
スマホアプリ・ゲーム
C++やC言語を使えば、動作が速いAndroidアプリやゲームを制作できます。激しい動作をともなうゲームや大量のデータ処理が必要なゲームを開発する場合、処理速度が速いC++はとても役に立つのです。
最近のスマートフォンゲームでは、ネットワークに接続してデータアクセスしたり、オンライン上で協力プレイをしたりすることが求められるようになりました。そのため、処理速度が速いC++はとても適していると言えるでしょう。
【参考情報】業務システム
C++は非常に汎用性が高く、業務システム開発も可能です。
処理速度の速さを生かして、大量のデータを扱う大手企業の大規模業務システムの開発も可能です。C++は古くから採用されている実績のある言語で安全性が高く、金融システムや官公庁のシステムなどにも採用されています。
このように、C++はあらゆる場面で活躍できるため、エンジニアとして活躍するために習得しておくことを強くおすすめします。
C++のゲームを開発する方法・流れ
C++のゲームを開発する際に、環境構築やゲーム開発の方向性などをどのように決めていくべきかについてご説明します。
開発環境をインストール
まずは、C++でゲーム開発するための開発環境をパソコンにインストールします。
IDE(Integrated Development Environment)と呼ばれる統合開発環境をインストールしましょう。IDEがあればプログラミングだけでなく、プログラムのバグを取り除くデバッグやプログラムを実行するためのコンパイルなどもできます。IDEさえあれば、プログラミングに必要なほとんどのことを行えるでしょう。
おすすめのIDEは以下のとおりです。
<C++で開発する際におすすめのIDE>
・eclipse
・Visual C++
・Code::Blocks
・GNAT Programming Studio
・CodeLite
・NetBeans
・Qt Creator
・Dev C++
・C++ Builder
・Anjuta
・MonoDevelop
特に有名なのが、「eclipse」と「Visual C++」です。
eclipseには、無料で使える、Windows、Mac OS、LinuxなどのOSに対応しているなど多くのメリットがあります。特に、GUIが優れておりドラッグ&ドロップ操作などもできるため、わかりやすく使いやすいという点が初心者におすすめです。
「Visual C++」はMicrosoft社が出しているC言語、C++、C++/CLI用のIDEです。Microsoft社製なので安心して使えてサポートも充実しており、グラフィカルな開発環境なので使い勝手が良いでしょう。Visual C#やVisual Basicなどの言語を含めた、「Visual Studio」としてパッケージになっています。Windowsだけでなく、Macでも使えます。
他にもマルチプラットフォーム対応をしていたり、無料で使えたりするIDEがあるので、使い勝手が良いものを選んでみてください。最初は無料で使えるもので十分ですが、使っていくうちに高機能で使いやすいIDEが欲しいと思ったら、有料のものに変えていくと良いでしょう。
ゲーム開発を進めていく際には、ライブラリを活用すると効率よく開発できます。最初は標準ライブラリだけでも十分ですが、より高機能なゲームを開発するようになったらゲーム開発に役立つライブラリを活用していきましょう。
また、IDEを使って一からプログラミングしていくのではなく、ゲームエンジンを使うという方法もあります。C++に対応したゲームエンジンには、Unreal EngineやCocos2d-xがあります。
Unreal Engineを使えば美しいグラフィックスの3Dゲームを開発できます。C++を使えなくてもUnreal Engineでゲーム開発ができますが、C++を使うことでより細かいカスタマイズが可能です。Cocos2d-xは動作が軽く開発しやすいゲームエンジンで、2Dゲーム開発に適しています。
ゲームエンジンを使えば、プログラミング知識がなくてもある程度の品質のゲームを開発できるでしょう。
ゲームの方向性の決定
ゲーム開発の環境が整ったら、ゲームの方向性を決めていきます。
ゲームのコンセプト、規模、キャラクター、世界観、ストーリー、ゲームシステムなどの大まかな枠組みを決めましょう。最初はいきなり大規模なゲームにせず、規模が小さいゲームを作り上げていくことをおすすめします。方向性を決定したらゲームを設計し、プログラミングとデバッグを繰り返してゲームを完成させます。
この一連の流れを一通り行っていくことでゲーム開発のスキルを得られるので、最初は規模が小さいゲームでも一度完成させるまでを経験することが大事です。
C++の学習におすすめの参考書をご紹介!
C++を学習する際におすすめの参考書をご紹介します。これからC++を習得するにあたり、自分に合った学習しやすいテキストを選んでください。
ゲームプログラミングC++
著者:SanjayMadhav、翻訳:吉川邦夫、読み手:今給黎隆
C++でゲーム開発をする人に向けたテキストです。ゲーム開発者が知っておくべき基本が詰まったゲーム開発の教科書、という位置づけです。ただ、前提知識としてC++の初歩が習得済みである必要があります。
ゲームプログラミングの概要から始まり、グラフィックス、AI、オーディオ、カメラなど、個々の機能についてひとつひとつ解説しています。最初から最後まで通読するのでも良いですし、ゲーム開発をしていて必要な部分だけを読むのも良いでしょう。
VisualC++2022パーフェクトマスター(PerfectMaster188)
著者:金城俊哉
IDEをVisualC++にするなら、おすすめのテキストです。C++の文法から演算子、配列、関数、ポインターなどについて、ひとつひとつ学べます。サンプルコードも豊富で、実践的にC++を学べるでしょう。
作って楽しむプログラミングVisualC++2019超入門
「作って楽しむプログラミングVisualC++2019超入門」
著者:WINGSプロジェクト、監修:山田祥寛
VisualC++で簡単なアプリを作りながら楽しくC++を学べる入門書です。基礎知識から始まり、Visual Studioの使い方、画面デザイン、コードの書き方などを学んでいきます。実際にサンプルアプリを作りながら学んでいくのでわかりやすく、理解しやすいでしょう。
C++の求人のご紹介
C++を習得したエンジニアの求人にはどのようなものがあるのかを、具体的に見ていきましょう。
・ゲームエンジン・システムエンジニア
スマホアプリゲーム会社の求人で、ゲームコンソールの開発に関わる業務を行います。CやC++の業務使用経験やゲームコンソールなどのハードウェアの知識が求められます。
・ビルド・テストエンジニア
ゲーム制作会社の求人で、ゲームエンジン制作、自動化環境構築、データ分析などの業務を行い、ゲーム開発作業の省力化を担当します。プログラム言語を用いた実務経験、特にC++によるゲームやツール開発経験があれば望ましいです。
・描画プログラマ
Unreal Engineを利用した3Dゲーム開発業務を担当します。Unreal EngineやC++によるゲーム開発経験が求められます。
他にもC++を使った様々な求人があるので、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
今回は、C++の特徴やC言語との違い、ゲーム開発にC++を採用するメリット、おすすめのテキストなどについて解説しました。
C++はゲーム開発に適した言語であることがわかっていただけたと思います。処理速度が速い、C言語と互換性がある、C言語よりも複雑な機能を実装できるなど、多くのメリットがある言語です。
C++ゲームエンジニアの求人も多いため、ゲームエンジニアとして活躍していきたいならC++を習得することをおすすめします。