インフラエンジニアの年収は高いのか?ゲーム業界の場合も含めて解説!
2023年7月24日
今回は、「インフラエンジニア」という職業について詳しく解説します。まずインフラエンジニアの業務内容を工程別に説明したうえで、平均年収を紹介して日本の平均年収と比べて高いのかどうかを比較します。そのため、これからインフラエンジニアを目指す人にとって、参考になる内容が豊富です。
また、年収アップにつながる方法や必要なスキルなども詳しく書いていますので、現在すでにインフラエンジニアとして就業している人も、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
インフラエンジニアの仕事内容とは?
まずはインフラエンジニアとはどんな仕事なのかを、工程ごとに分けて紹介します。ただし、業務の規模や内容、会社によって異なる部分はありますので、あくまでも参考例であることはご了承ください。
プラットフォーム・技術決定
まず、クライアントや社内のシステム企画者が、どんなシステムを作ろうとしているのかを踏まえることがインフラエンジニアの最初の仕事です。
システム上に必要な機能や仕様の確認ができたら、次の工程では実際に使用するプラットフォームやサーバーを決定していきます。さらにミドルウェアの選定などもインフラエンジニアの重要な業務として位置づけられています。これらの工程を、「要件定義」と呼ぶ企業もあります。
システム開発やプロジェクトを進めるうえで、要件定義は後から変更しにくく初期検討の重要度が非常に高い工程として知られています。そのため会社内やチーム内で、ベテランのインフラエンジニアが担当することが一般的です。
設計工程
インフラエンジニアの設計工程は、基本の部分と詳細部分に分けることができます。基本設計の主たる目的は、使用する機器やOSを選択し、システムに盛り込むべき機能の概要を洗い出していくことです。
基本設計が完了して詳細設計に移行してからは、インフラ構築がスムーズに進められるように詳細の設計を行っていきます。
またインフラエンジニアには、プロジェクトを進める上での予算やスケジュールなども設計工程でしっかりと考えておくことが求められます。これらの設計が雑だと、あとの工程で混乱が起きたり、業務が進めにくくなったりするので、丁寧に仕事を進めなければなりません。
構築工程
作製された設計書に沿って、実際にインフラを構築していく工程です。
そもそも「インフラ」とは、IT業界やゲーム業界のみで使う言葉ではなく、電気や水道、交通機関など、社会を支える設備や施設などを示す言葉です。一方、ITやゲーム業界においては、インフラという言葉はサーバーやパソコンなどの物理的機器を指す場合がありますし、その一方でネットワークやOSなどの物理存在ではないものも含みます。
サーバーに関しては、近年まで社内などに物理的な機器を設置するオンプレミスという手法が中心でした。しかし近年は、クラウド上にサーバーを置くことも増えています。
この工程ではハードウェアやサーバー、ストレージやネットワーク、ソフトウェアやOS、ミドルウェアなどを必要に応じて構築していきます。
また、構築が終了したあとには、実際の運用に耐えられるかどうかの負荷試験などを行う必要があります。負荷試験を行う際にはサーバーサイドエンジニアとの連携も欠かせないので、インフラエンジニアは複数の職場の人と支障なくやり取りするコミュニケーションを求められる一面もあります。
運用・保守工程
運用が始まった後は、構築したインフラが適切に稼働するように監視や保守を行います。
何らかのイベントや、企業や商品の情報がネット上などで話題に上がったときなどにアクセスが殺到することがあります。そんなとき、想定した許容量を超えるとサーバーがダウンしてしまうトラブルも起こり得ます。
それらのトラブルが発生した場合、ユーザーやクライアントに不利益が生じることもあるので、インフラエンジニアには早急な対応が要求されます。そのため、迅速な状況把握や問題解決ができることもこの職業の重要な要素です。
【徹底解説】インフラエンジニアの年収事情とは?
この項目では、インフラエンジニアの年収について、詳しく解説します。正社員や派遣社員、アルバイトといった雇用形態による違いなど複数の観点から記載し、日本の平均年収とも比較します。インフラエンジニアがどの程度の収入を得られるのかをくわしく知りたい人は、ぜひ注目してください。
日本の平均年収
インフラエンジニアの年収が高いのかどうかを判断するために、まず職業を問わない日本の平均年収について解説します。
期間工合同会社が2023年7月に発表した情報では、日本の業種を問わない平均年収は約445万円と記載されています。
これに対して、インフラエンジニアの平均年収は、正規雇用であれば平均が約520万円と報告されています(「求人ボックス 給料ナビ」2023年7月5日発表値より)。そのため、インフラエンジニアの平均年収は日本全体の平均値よりも75万円ほど高く、日本の多くの職種よりも収入的に良好であることがわかります。
さらに、派遣社員やアルバイトという雇用形態でインフラエンジニアとして働く場合の年収にも着目してみましょう。「求人ボックス 給料ナビ」2023年7月5日発表値によれば、インフラエンジニアの中でも派遣社員の平均時給は2285円、アルバイトであれば1102円と記載されています。
上記は時給換算なので、比較対象とするために年収を算出していきましょう。年間の休日を120日と仮定すれば、就労する日数は365–120=245日と算出されます。また、稼働日の就労時間はすべて8時間と仮定します。これらの数値を乗算して年収を求めると、インフラエンジニアの派遣社員の年収は約448万円、アルバイトであれば約216万円と想定できます。
上記の数値を整理すると、インフラエンジニアは正社員として雇用されれば日本の平均を明確に上回る収入が得られますし、派遣社員として働く場合、日本の平均的な年収とほぼ同等の生活を送ることができます。
一方インフラエンジニアであっても、アルバイトで雇用されればかなり収入が落ちることがわかります。そのため、インフラエンジニアとして活躍するのであれば、できることなら派遣社員以上で雇用されるように就職や転職活動を行うことをおすすめします。
インフラエンジニアは年収1000万を目指せるのか?
ここからは、インフラエンジニアとして働きながら、年収1000万円以上を実現することはできるのかを解説していきます。
結論:目指すことは可能
まず結論から言えば、インフラエンジニアとして年収1000万円を目指すことは十分に可能です。ただし、単にインフラエンジニアになって、コツコツと努力していれば誰もが1000万円の年収を獲得できるというわけではありません。
インフラエンジニアとして年収1000万円を実現するためのポイントを以下に記載します。
年収1000万円をめざす為のポイント
インフラエンジニアとして年収1000万円という大きな目標を実現するためには、大手企業や外資系企業に就職・転職する、フリーランスエンジニアとして売り上げや利益が高い仕事を積極的に取りに行くなどの方法があります。また、いったんベンチャー企業などに入社して、その中で圧倒的に高いスキルを獲得するなどの方向性も考えられるでしょう。
上記の方法の中で、高収入と長期的な安定性を両立させたい人は、やはり大手企業への就職・転職を目指すことが一番です。一般的に従業員が1000人を超える大手企業と、100人未満の小企業では平均年収で100万円を超える差があると言われています。
もちろん高い収入を安定して得られる大きな会社は、就職や転職に際しての競争率が高いことは予想できます。そのため、有名大学を出ることや、いったん就職して高いスキルを身につけることなどが欠かせません。
また、どちらにしても高いスキルは必要ですが、フリーランスとして高収入を目指すのであれば、就職活動に関しては苦労がないというメリットがあります。
一方、フリーランスとして生きていく場合、収入の安定性を欠くことや、雇用されるより福利厚生が弱いことなど複数のデメリットもあります。そのため、人生設計をしっかり行ってから決断することを当コラムはおすすめします。
インフラエンジニアで活躍するための必要なスキルは?
この項目ではインフラエンジニアとして活躍するために必要なスキルを4つ紹介します。紹介するスキルは、ポータブルスキルと専門スキルに分けて解説します。
紹介する項目について、自分自身が現状どの程度のスキルを持っているか検討し、不足しているようなら意識的に上げるようおすすめします。
※ポータブルスキルとは、特定の職種だけで通用する知識や技術ではなく、業種や担当部署が変わっても有効な普遍的スキルのことです。
ポータブルスキル:課題解決能力
業務を遂行する中では必ず何らかの問題は発生します。そのため、課題解決能力があれば、職場で活躍できるチャンスも増すでしょう。課題を適切に解決するには、発生している問題点を把握して分析する力と、実現可能な対策を実施する力が必要です。
例えば業務のスケジュールが遅れているときに、メンバーに「頑張れ」と連呼しても問題解決は難しいですし、心身の調子を崩すメンバーが出ることも考えられます。そんなとき、課題解決能力がある人なら、人員配置や工程などを見渡して問題の根源を探そうとするでしょう。原因がわからなければ有効な対策も打てませんし、間違った対策をすれば時間や予算を失い、状態をさらに悪化させるリスクもあります。
さらに問題の原因を把握したあとには、会社や職場の実情を踏まえた対策を打つことが重視されます。例えば会社が出せないような費用がかかる対策を考えても実施できませんし、メンバーの総入れ替えなどを行えばその時はうまくいっても後日の禍根を残します。
そのため、予算やスケジュール、メンバーの心理などを踏まえた提案ができるように、常に職場の状況を把握しておくことも欠かせないでしょう。課題解決能力が高ければ、チーム内での人望がアップしますし、売上や利益に貢献して昇給のチャンスにもつながります。そのため年収アップを目指す人は、ぜひ課題解決能力を身につけてください。
ポータブルスキル:コミュニケーション・チーム協業力
コミュニケーション力やチーム協業力は、人と接しながら業務を進めていく職場で非常に有効なスキルです。
特にITなどに関連するエンジニア職の人は、常に一般の人が使用しない言葉を使って業務を進めています。そのため、会社内の異なる職種の人や、技術的に知識が少ないクライアントに説明を行うときに、わかりやすい言葉に置き換えたり、図表を交えて説明したりすることなどが要求されます。
また、仕事をする中では、意見や立場の違いから不要な対立が起こることもあり得ます。そんなときに流れに乗って対立を深めるのではなく、友好的な対応ができれば事態の改善が進むかもしれません。対立を解消できればメンバーのストレスを減らすことができますし、業務の効率もアップするでしょう。雰囲気が改善すれば、それまでにはなかったプラス思考も生まれ、業務の質も上がる可能性があります。
さらに、打ち合わせや顧客にプレゼンを行う際にも、相手を安心させる振る舞いや話し方ができれば信頼度が増し、発注のリピート率が上がることもあるでしょう。
このように、コミュニケーションスキルやチーム協業力を上げることは、会社の利益向上に直結し、年収アップにも役立ちます。
専門スキル:ネットワーク・サーバー関連の知識・技術
インフラエンジニアとして活躍していくためには、ネットワークやサーバー関連の知識や技術を欠かすことはできません。そのため、インフラエンジニアという職種をさらに分解してサーバーエンジニアやネットワークエンジニアという職種を設定する企業もあります。
サーバーエンジニアはサーバーの選定や調達、物理的な設置や接続のほか設定なども行います。さらに、サーバー上で動くソフトの導入などを行ったうえで、システム設計を行うエンジニアに引き継ぎます。
一方、ネットワークエンジニアは、ネットワークに要求される速度や容量を踏まえて機器の選択や構築を行い、ネットワークを形成する役割を担います。
専門スキル:プログラミング知識・技術
過去にはインフラエンジニアはハードウェアを扱うことが多く、プログラミングは業務の中心ではありませんでした。しかし近年は、ITインフラがクラウド上の仮想空間に形成されるようになっています。そのため、以前はプログラマーに任せていた業務も、インフラエンジニアが行うことが増えています。
インフラエンジニアが使用する言語は複数あり、業務内容や会社によっても異なりますが、代表的な言語としては、PythonやRuby、GoやJavaなどがあります。
インフラエンジニアとして持っておくと良い資格例
この項目では、インフラエンジニアとして活躍する上で持っておくと便利な資格を紹介します。
データベーススペシャリスト(DB)
データベーススペシャリスト試験は、独立行政法人 情報処理推進機構が運営しています。「DB」と略されることも多く、国家資格に認定されています。
受験対象者の資格制限はありませんが、データベースの企画や要件定義、開発や運用のほか保守などに主導的立場で関わる人や、指導者的な立場にある人、と上級者を想定した試験です。そのため難易度はかなり高く、過去の合格率が毎年15%程度しかないことからも、レベルの高さが伺えます。ただし、難しい資格であるからこそ、持っていることで就職や転職を有利に進めることができるでしょう。
ネットワークスペシャリスト試験(NW)
ネットワークスペシャリスト試験は、国家資格のひとつでNWと略されます。対象者の資格は定められていませんが、上級者向けの資格試験として設定されています。
具体的にはネットワークシステムの企画や要件定義、設計や構築、運用や保守などの業務に従事しつつ、指導者的な役割を持つ人で、高難易度の試験としても知られています。合格率が15%を切る年が多く、比較的合格率が高い年でも17.4%と発表されているので、多くの資格試験の中でもかなり合格しにくいレベルです。
情報処理安全確保支援士試験(SC)
情報処理安全確保支援士試験は、独立行政法人 情報処理推進機構が運営する国家資格です。この資格試験に合格すると、サイバーセキュリティに関する専門職である情報処理安全確保支援士を名乗ることができます。
サイバーセキュリティの重要度が上がったことを受けて、2017年に新設された資格です。合格率も毎年20%以下と言うこともあり、2023年4月現在で、日本全体でもまだ21,633名しか保有者が存在しません。さらに、2023年現在、情報処理系の資格で「士業」に当たるのはこの資格だけなので、かなりレアな資格と言うこともできるでしょう。
このコラムで紹介した3つの資格試験は、このSCも含めて合格率2割以下の高難易度です。とはいえ、この試験だけは毎年2回実施されるので、チャンスが多いという有利さがあります。
ゲーム業界におけるインフラエンジニアを目指すには?
この項目では、ゲーム業界のインフラエンジニアを目指す人に向けて、仕事内容や年収事情などを記載します。
仕事内容
ゲーム業界のインフラエンジニアも、IT業界全般でインフラエンジニアが行っている、①プラットフォーム・技術決定、②設計工程、③構築工程、④運用・保守工程という大きな流れは大差なく行っています(当コラムはインフラエンジニアの業務を4工程に分けて記載していますが、構築工程の後に負荷試験などの工程をあげて、5工程で考える企業もあります。また、①を要件定義と呼ぶ企業も多数存在します)。
そのため、他業種のインフラエンジニアが、ゲーム業界のインフラエンジニアとして転職することは珍しくありません。もちろん、業界が異なることで言葉の違いなどに戸惑うケースはあると思います。とはいえ業務上の共通点は多数ありますから、多くの場合時間とともに新しい職場に馴染んでいき、十分に活躍することができるでしょう。
ゲームインフラエンジニアの年収事情
ゲーム業界でのインフラエンジニアの年収は、平均で650万円程度と言われているので、業種を指定しないインフラエンジニアの平均年収よりも好待遇であることが期待できます。以下に具体的な求人例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
※なお、掲載している情報は当コラム執筆時点での参考情報例であることはご了承ください。
求人例
・例1
■職種名
インフラエンジニア(ゲーム)
■業務内容
・ネットワークゲーム用に最適なサーバー構成をデザインし、セットアップやインストール、コンフィグレーションやテストのほか、モニタリングなどを行う。
・サーバーやアセットのビルド、デプロイといったパイプラインの設計、メンテナンスを行う。
・ゲーム運営中のさまざまな問題を解決するためのサポートを行う。
■必須スキル・経験
・Linux/Shell scriptなどを含んだインフラエンジニアとしての3年以上の業務経験
・Docker/Kubernetesなどの仮想化技術の理解
・AWS/GCPの基本的な理解、使用経験
・ビルド、デプロイワークフローの作成、メンテナンスの経験
・Oracle JDK / OpenJDK上の基本的な知識
・Perforce、 Git、 SVNなどのバージョンコントロールシステムの使用経験
・円滑なコミュニケーションが可能な方
■想定年収
前職をベースに考慮
https://game-matching.jp/g-job-agent/find_jobs/11595
・例2
■職種名
オンラインインフラエンジニア(ゲーム)
■業務内容
・グローバルに展開しているオンラインゲームのインフラ運用や構築、主としてサーバー、クラウドのエンジニアリング業務を担当
・オンプレミス環境におけるインフラ運用構築
・パブリッククラウドを使用したインフラ運用構築
・海外データセンターでの現地出張作業
■必須経験
下記の①②のいずれかの経験がある方
①サーバーエンジニア
・Linux系サーバーの物理層からの設計・構築・運用経験
・Infrastructure as Codeによるインフラ運用経験
・OSSのミドルウェアの利用経験
②DB・ストレージエンジニア
・Linux系サーバーの物理層からの設計・構築・運用経験
・データベースの基本的な知識(Oracle、PostgreSQL、MySQL等)
・NASストレージの基本的な知識
■想定年収
前職をベースに考慮
https://game-matching.jp/g-job-agent/find_jobs/8985
まとめ
「インフラエンジニア」という職業について、まず業務内容を解説したうえで、平均年収がどの程度なのか、日本のほかの職種よりも収入は高いのか、といった点をまとめました。また、インフラエンジニアとして年収1000万円を実現できるかどうかや、インフラエンジニアとして活躍するための方法や、あると便利な資格なども記載しています。
インフラエンジニアになれば、IT業界全般でもゲーム業界でも、ほかの業種の平均値より高い給料を得ることができます。また、働き方の工夫やスキルアップによって、年収1000万円以上を目指せる職種でもあります。
ゲーム業界でも日本全体の平均値より高い年収を得ることができますし、例えば任天堂やスクウェア・エニックスなどの大手企業に入ることができれば、年収1000万円以上は十分視野に入ります。そのため、インフラエンジニアとして働いている人のなかで「もっと年収を上げたい」と思っている人は、この機会にゲーム業界への転職を検討してみてはいかがでしょうか。