ゲームテスターとは?仕事内容や年収、必要なスキル・資格を紹介
2023年11月27日
ゲームテスターは、ある程度開発が進んだゲームをプレイして、問題点を洗い出す仕事です。比較的未経験からでも入りやすい職種なので、異業種からゲーム業界に転職したい人に向いている側面があります。
このコラムでは、そんな「ゲームテスター」に着目して、業務内容や年収、必要なスキルや将来性なども解説していきます。ゲーム業界への転職を考えている人や、ゲームテスターを目指そうとしている人に役立つ情報が満載なので、ぜひ参考にしてください。
ゲームテスターとは
この項目では、まず「ゲームテスター」という業種がどんなものかをわかりやすく解説します。
ゲームテスターの主たる業務は、開発したゲームが仕様書の通りにできているかをテストすることです。そのため、ゲームをプレイしてみて、バグによる動作不良がないか、動くとしても仕様書と異なっている点がないか、操作しにくい部分がないかなどを確認し、問題点を報告するまでが仕事です。
ゲームテスターの求人は、比較的「学歴不問」や「未経験者OK」などの条件が付くことが多いので、ゲーム業界の中では入りやすい職種だと言えます。そのため、「ゲーム業界に転職したいが、経験の無さが障害になっている」という人にとっての登竜門となる場合もあります。
とはいえ、ゲームテスターは決して楽な仕事ではありませんし、業界内で軽視されるものでもありません。その点はこのコラム全体を読んでいただければ、理解が深まると思います。
ゲームテスターとデバッガーの違い
ゲームテスターとデバッガーは業務としてかぶる部分が多いので混同されがちですが、実際には明確な違いがあります。
ゲームテスターは、開発したゲームに仕様と異なる点や仕様通りに動かない点がないか、操作しにくい部分がないかをチェックし、報告を上げるまでが仕事です。
一方デバッガーは、バグの発見を行うだけでなく、バグの解消も行います。そのため、デバッガーはプログラミングのスキルを持っていることが要求されます。
ゲームテスターの仕事内容
この項目では、ゲームテスターの仕事内容をくわしく紹介します。
仕様チェック
ゲームテスターの大きな仕事のひとつに、仕様通りにできているかのチェックがあります。このとき、問題なく動作ができるかどうかもチェック項目に含まれますが、仕様チェックは動けばよいという仕事ではありません。動作自体は止まらずにできても、その動作が仕様にあっていることを見極めなければならないからです。
例えば特定のバトルが想定されたレベルでクリアできるか、といった点もテストに含まれます。高レベルに達した人だけが倒せる想定のボスが、まだ低いレベルでプレイしている人に容易に倒されてしまってはゲームが成り立ちません。また、想定したレベルで全く歯が立たないような敵が存在することも、ゲームにとってマイナスです。このように、難易度のチェックもゲームテスターが注意を払うべきポイントです。
他にもストーリー上の矛盾がないか、挿入されるべきエフェクトやサウンドが入っているかなど、ゲームテスターは細かい点までチェックしなければなりません。
操作性チェック
ストーリーの面白さやビジュアルの美しさなどがあっても、操作性が悪いとゲームの評価が下がることもあります。その点を踏まえて、ゲームテスターは操作のしやすさにも目を配ります。
また、操作に対する反応速度もゲームテスターが注意すべき点です。操作性や反応速度が水準に達しているかは、他のゲームとの相対的な比較で行われます。そのためゲームテスターには、一般的なゲームにある程度精通していること、他のゲームの使用感を記憶しておくことなども求められます。
不具合の報告と再テスト
仕様チェックと操作チェックを行い、問題や改善したほうが良い点をまとめて報告するのもゲームテスターの重要な仕事です。
報告は具体的であることが大切なので、同じ個所を何度もプレイして挙動を確認し、問題が起こる操作を正確に記載するなどの細やかさが要求されます。
また、報告書はわかりやすくなければならないので、ゲーム上で起こったことを相手に伝える表現力も試されます。そのため、「ゲームテスターはゲームをプレイしてお金がもらえる楽な仕事」などというのは謝った理解です。
また、報告に沿って修正が行われた後にも、再度テストプレイを行って問題が解消されているかを確認することも業務の範囲に含まれます。このため、同じシーンを何度も繰り返しプレイし続ける忍耐力も重視されます。
ゲームテスターのやりがい・魅力
この項目では、ゲームテスターという職業のやりがいや魅力について解説します。
ゲームテスターの魅力は多数ありますが、もっとも代表的な点は、完成間近のゲームの仕上げに関わることができることや、自社のゲームの問題点をユーザーの手に渡る前に気づいて問題発生を防ぐことなどにあります。
また、ゲームテスターは仕様を細かくチェックする上で、シナリオや画像、サウンドや動作などさまざまな点に目を配ります。そのため特定の分野に限らず、ゲーム開発の知識が広く身に付くメリットがあります。
さらに、誰もが知るようなビッグタイトルであれば、それを人よりも早くプレイできる喜びもあるでしょう。とはいえ、そんなケースはそれほど多く存在しません。もし誰もが知るような有名タイトルのテスターを務めることができれば、それ自体がボーナス的な喜びと考えた方が良いでしょう。
ゲームテスターの年収
「ゲームテスター」という職種の年収統計は存在しないので、ここではdodaが2022年12月に発表した「年収の高い職業は?平均年収ランキング(職種・職業別)【最新版】」から、デバッグ/テスターの情報を掲載します。
上記の報告によると、デバッグ/テスターの平均年収は376万円と報告されています。さらに、同じ調査で年齢別の平均年収を見ると、20歳代で324万円、30歳代で413万円、40歳代で494万円、50歳代以上で541万円とされています。
国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によれば、日本の平均年収は443万円とされています。上記のデバッグ/テスターの平均年収を見ると40歳代で494万円となっているので、デバッグ/テスターは、平均的な年収が得られる職種と考えて良いでしょう。
ゲームテスターに求められるスキル
この項目では、ゲームテスターに特に求められるスキルや素養について解説します。
様々なジャンルのゲーム経験
ゲームテスターの仕事は仕様のチェックや問題の発見だけでなく、ゲームの操作性や難易度に問題がないかを確認することも求められます。
とはいえ「操作性」や「難易度」は感覚的な部分があり、その感覚は比較対象があってこそ成り立つものです。もちろん、新たにリリースするゲームを、5年前、10年前の水準と比べても意味がありません。そのためゲームテスターには、比較対象となるように最近の多数のゲームをプレイしている経験が求められます。
洞察力、集中力、忍耐力
ゲームテスターには、洞察力、集中力、忍耐力が求められます。
まず洞察力とは、「物事の本質を見抜く力」です。例えばゲームテスターが操作しにくい部分を見つけたとき、単に「操作性が悪い」と報告したとします。この報告を受けた側は、「どこがどの程度操作しにくいのか」と考えなければならないので、報告としては不親切です。一方、洞察力を持ってなぜ操作しにくいのかを検討し、その考えを報告書に添付すれば、改善する側も効率よく仕事を進めることができます。
また、集中力は細かい問題や仕様との違いを見逃さないために欠かすことができない素養です。
さらに忍耐力は、挙動がおかしい点を見つけたときに、繰り返して操作して正確に状況を把握するために役立ちます。例えばアイテム獲得のシークエンスに問題点があった場合、数百も存在するアイテムの獲得を全パターン試すということもあり得ます。こんな時こそ、忍耐力を持っていることが重要視されるでしょう。
思考力
思考力が要求されるのは、おかしな挙動を見つけたときの対応などです。例えば何となくテストプレイをしていると、問題点には気付いても、どんな操作をした時に問題が起こったのかを再現できないことがあります。こんな時、思考力が無いとさまざまな操作を試さなければなりません。一方、思考力がある人なら問題が起こりそうな操作を予測して、効率よく問題に対処していくことができます。
また、A→B→Cの動作をした時に問題が起こるのなら、A→C→Bと操作しても問題が起こるかもしれない、と考えてプレイしてみることで、さらに問題を発見できたり、問題が無いことを確認できたりもするでしょう。
情報管理力
ゲームテスターはプログラム上の問題だけでなく、デザインやシナリオ、サウンドなど多岐にわたる項目をチェックします。そのため、テストによって得た情報を、必要な部署ごとに適切に伝えなければなりません。このため、ゲームテスターには高い情報管理力が求められます。
コミュニケーション能力
問題点や改善点を発見して報告するには、報告書の記述だけでなくコミュニケーション能力も必要です。操作性や難易度などの問題には感覚的な要素もあるため、感じたことを過不足なく文章化して伝えることが重要だからです。
また、報告書に対して質問を受けたときや、修正された内容を再テストする前後にも他部署の人との接触があります。その都度申し送りなどを受けて、適切に対応できれば社内の評価も自然と上がっていくでしょう。
ゲームテスターに役立つ資格
ゲームテスターになるために必須の資格はありませんが、ゲームテスターを務める上で持っていると役立つ資格は複数あります。ここではその中の4つの資格を紹介します。
IT検証技術者認定試験
「IT検証技術者認定試験」は一般社団法人IT検証産業協会(IVIA)が運営する資格試験で、IVECと略されることもあります。実務を遂行する上で必要な内容が試験問題となっていることを特徴としており、7段階のレベルが用意されています。
テストを実行し問題の報告を行うレベル1から、業界に影響を与えるような活動を行う研究者、上級コンサルタントを想定したレベル7まで細かく分かれているので、状態にあった試験を受けることができます。
2020年から2022年の3年間で、エントリーレベルと言われるレベル1の合格率は70%前後ですが、ハイレベルに分類されるレベル5にいたっては20%前後と高い難易度に設定されています。これを踏まえると、高レベルの試験に合格するほど就職や転職に有利となるでしょう。
JSTQB認定テスト技術者資格
「JSTQB」とはJapan Testing Certification Boardの略語で、ソフトウェアテスト技術者資格認定を運営する組織を示します。
「JSTQB認定テスト技術者資格」は、ソフトウェアテスト技術者の知識やスキルを向上させるための資格です。試験に向けた学習を行うことで、ソフトウェアテストの知識を体系的に学ぶことができますし、合格すればテスターとしてのスキルを持っていることが証明できます。
難易度としては、基礎的知識を問う「Foundation Level」の過去平均合格率は60%前後、ハイレベルな技術者向けの「Advanced Level」は20%程度とされています。
ソフトウェア品質技術者資格認定
「ソフトウェア品質技術者資格認定」は、一般財団法人日本科学技術連盟が運営する資格試験です。ソフトウェア技術者が品質について学習することで、ソフトウェアの品質向上実現を目的としています。
初級、中級、上級の3つのレベルが設定されており、初級でも合格率は例年30%代、中級では10%代と、かなり難易度が高い資格試験として知られています。受験すればおおむね取れるといった種類の資格ではないので、受ける人は計画的に学習することをおすすめします。
マイクロソフトオフィススペシャリスト
「マイクロソフトオフィススペシャリスト」は、MOSと略されることもあります。マイクロソフトがリリースしているWordやExcel、PowerPointやAccessなどのソフトごとに試験があります。また、基本的な操作を問う一般レベルと、高度な使い方ができるかを問う上級レベル(エキスパート)の2段階があるので、レベルに応じて受験することができます。
一般レベルの合格率は約80%程度とされているので、きちんと準備していれば取得可能なレベルです。上級レベル(エキスパート)は合格率約60%と難易度が上がりますが、しっかり学べば取れない資格ではありません。
ゲームテスターのニーズと将来性は?
この項目では、ゲームテスターのニーズや将来性をくわしく解説します。
G-JOBエージェントの見解
角川アスキー総合研究所が2023年8月29日に出版した「ファミ通ゲーム白書2023」によれば、日本のゲーム業界は2019年の新型コロナウイルス感染拡大に関連する巣ごもり需要で急激に上昇しました。2020年は2019年の成長が大きかった分、伸び率は減少しましたが、その後2022年まで継続して高い水準を維持しています。
そもそも日本のゲーム業界が2013年から2019年まで右肩上がりで成長してきたことも踏まえれば、ゲーム業界が極端に衰退するとは考えにくいのが実情です。
その中でゲームテスターという職業に目を向けても、品質向上の流れが強い昨今の傾向から、需要が低下する要素はありません。
考慮すべき点があるとすれば、AI技術の発展によるテスト工程の自動化です。AIは規則性に添って問題点を見つけることが得意なので、ゲームの不具合発見にも活用できる可能性があるからです。
とはいえ、AIは人間ならではの微妙な感覚に左右されることはあまり得意ではありません。そのため、操作上の違和感を見つけてピックアップする作業は、やはり人間だからできる要素だと思われます。また、シナリオがAI化された際に、AIならではの違和感を発見して報告を上げる人間としての作業が増える可能性もあります。これらを総合すれば、ゲームテスターの将来性は、明るいと考えることができます。
さらに用心しておくとすれば、テスターとしての仕事だけに特化するのではなく、プログラミングの知識を増強してエンジニア系の仕事を目指す手もあるでしょう。あるいは、仕様との整合性を日々確認していることから、仕様書を見慣れているので、プランナーとして仕様書を作る側に回るという対策もあります。
ゲームテスターのキャリアパス
この項目では、ゲームテスターのキャリアパスを紹介します。
まずおすすめしたいのは、プログラマーやエンジニア系の仕事へのステップアップです。多くのゲームテスターは、業務を行う中でエンジニア系の職種の人との接触回数が増えていきます。そのため意識的にプログラマーの考え方を学び、合わせてプログラム言語の習得なども行っていれば、プログラマーへの転身も夢ではありません。また、品質管理の知識を深めて、テストエンジニアやQAエンジニアとして専門領域を進む手もあるでしょう。
どちらにしても、システムやプログラムの知識が必要な仕事なので、単純にゲームテスターの仕事だけをしていればスライドできるとは言えません。ぜひ将来に向けて、専門的な学習を前向きに行っていくことをおすすめします。
ゲームプログラマーについて詳しく書いたコラムがあるので、ぜひ以下もご参照ください。
→「ゲームプログラマーがきついと言われる理由は?年収やメリット・キャリアプランを解説」
ゲームテスターの求人例
この項目では、ゲーム業界の転職に特化して求人情報を紹介する「G-JOBエージェント」に実際に掲載されたゲームテスターの求人内容を紹介します。
※ただし、ここに掲載するのはあくまでも実際の求人例であって、この求人への応募を促すものではありません。そのため、企業名や住所の詳細は伏せています。
〇ゲームテスターの求人例
・求人名:アプリ&ゲームテスター(QC・QA(品質管理・品質保証)・デバッガー)
・募集年収:要相談
・勤務地:東京都千代田区
・雇用形態:アルバイト
・業務内容:アプリやゲームの開発や運営業務におけるテスター業務をお任せします。
アプリ・ゲームの品質管理業務:テスト対象のアプリ・ゲームの動作確認や不具合検証、報告資料作成等。
・テスト対象の仕様把握
・テスト計画の作成(テスト項目/スケジュールの設計)
・テスト計画に沿った動作確認
・発見された不具合の報告資料作成
・報告された不具合や修正済み不具合の動作確認
・テスト結果に基づく仕様改善提案(リリース予定タイトルのチューニングや適正判断)
・必須スキル:・スマートフォンアプリやゲームのテスタースタッフに適していること
※未経験者可。適性に応じて業務をお任せいたします。
・歓迎スキル:アプリ・ゲームの品質管理業務経験、Microsoft ExcelやWord、Googleスプレッドシート・ドキュメントでの業務経験、PCを使用した業務経験、ゲームに関する知識が豊富な方(1年以上プレイしているスマートフォンアプリ・ゲームが1本以上ある方)
まとめ
ゲームテスターという職業について、業務内容やデバッガーとの違いなどを解説したうえで、ゲームテスターの年収や将来性などをまとめました。また、ゲームテスターを目指す人にとって役立つ資格なども記載していますので、これからゲームテスターになろうと思う人はぜひ参考にしてください。