ゲームエフェクトとは?種類やエフェクトデザイナーについても紹介
2023年11月27日
近年、ゲーム画像に要求されるクオリティが劇的に上がっていることを受けて、「ゲームエフェクト」の需要も高まっています。また、ゲームエンジンなどのゲーム開発ツールが発展したことで、「ゲームエフェクト」を専門的に扱う職種も登場しています。
これらの背景を踏まえて、このコラムでは「ゲームエフェクトとは何か」を解説し、ゲームエフェクトの役割や種類、作り方や扱う職種などに言及していきます。
「ゲームエフェクトについてもっと知りたい」という方や、「ゲームエフェクトに関わる仕事をしたい」と思う方はぜひ最後まで読んで参考にしてください。
ゲームエフェクトとは
この項目では、まずゲームエフェクトがどんなもので、どんな役割を持っているのか、また代表的なゲームエフェクトの種類を紹介します。
ゲームエフェクトの役割
「ゲームエフェクト」は、ゲームの各シーンの意図を伝えるために行う「演出」的な役割と、状況やキャラクターの心情をわかりやすくするための「説明」的な役割を持っています。とはいえ、演出と説明は明確に分離できるものではありません。
例えばキャラクターが剣を振り下ろしたとき、相手の鎧に当たってスパークが起これば、見る側の臨場感が上がり、演出効果を発揮します。そして同時に、小さなスパークなら小ダメージ、激しく大きなスパークがあれば大ダメージを与えたことがプレイヤーに伝わります。つまり、この場合のゲームエフェクトは、演出と状況説明を兼ねた役割を果たします。
また、炎や煙、爆発や水、雷、魔法陣やキャラクターがまとうオーラなどもシーンを盛り上げつつ、状況を説明する効果を期待できます。
例えば、エフェクトの勢いや大きさなどで、ユーザーが扱うキャラクターがピンチに陥ったことが演出できます。また、オーラの色や大きさは新たに登場したキャラクターの強弱などを表現する方法としても利用可能です。
このように、ゲームエフェクトが持つ「演出」と「説明」の効果は、シームレスに利用できるのです。
ゲームエフェクトの種類
ゲームエフェクトは、大きくはポスト・エフェクトとパーティクル・エフェクトに分類されます。
ポスト・エフェクトとは、レンダリング(CGを描画すること)のあとに、画面全体にかけるエフェクトのことです。イメージとしては、写真撮影をする際に、レンズにフィルターを付けるような効果が得られる、と考えるとわかりやすいでしょう。
例えば、日常的な街の画像に対して、全体をぼかすようにエフェクトをかけると、霧が立ち込めた情景を演出することができます。また、日常的な色合いの街並みから、瞬間的にモノトーンにすることで、その街に良くないことが起こる予兆を示すことも可能です。
さらに、色合いに温かみを与えてほのぼのとした雰囲気を出したり、タッチを油絵調にしてアートな空間を意識させたりもできるので、ポスト・エフェクトは画面全体に影響を与えることに適しています。
一方のパーティクル・エフェクトも詳しく解説しましょう。そもそも「パーティクル(perticle)」という英単語には、「粒子」の意味があります。パーティクル・エフェクトは、その名の通り粒子を利用したエフェクトです。
前述したポスト・エフェクトのように画面全体に影響するのではなく、開発者がエフェクトを挿入したいと考える特定の部分のみに登場させることができます。ポスト・エフェクトに比べると、パーティクル・エフェクトは用途が多いため、多くのゲームで使用頻度も高くなっています。
パーティクル・エフェクトの生成方法は、使用するソフトウェアによって異なりますが、おおむね「エミッター」という機能を使用します。エミッターを使うことで、発生させるエフェクトの形やポイント、量やタイミングを指定します。形は円形や円柱状など指定できますし、ポイントも画面上の一点から少しずつ動かすなど、パラメータ的に扱うことが可能です。さらに、放出量やタイミングのパラメータを調整して、ランダム性や規則性を加えることで、ゲームを盛り上げるエフェクトを生成します。
パーティクルの形状は基本的に3種類あります。立方体である「クアッド・パーティクル」、帯状の「ストライプ・パーティクル」、3Dモデルを使った「モデル・パーティクル」という3種類を用途に応じて使い分けることで、火炎や閃光、爆発や煙、水しぶきのほか、群衆を表現することもできるのです。
ゲームエフェクトの作り方
この項目では、ゲームエフェクトの作り方を紹介します。
ゲームエフェクトの作り方を解説する上でまず書いておかねばならないことは、「アニメや映画などの映像作品に登場するエフェクトと、ゲームエフェクトには大きな違いがある」という点です。
CGを使う場合、映画でもゲームでも「レンダリング」という工程を経て画像が描画されます。ただし、映画であればレンダリングの結果を画像として編集して見せることができますから、プレレンダリングという手法を使います。
一方ゲームの場合、プレイヤーの操作に応じて画面に現れる画像が変わるので、事前に描画するプレレンダリングは使用できません。そのため、ユーザーが操作してからレンダリングを開始するリアルタイムレンダリングという手法が選択されます。
エフェクトは作り方によって情報量が非常に大きくなりますが、プレレンダリングであれば情報量をあまり気にせず、大きな容量のエフェクトをかけることができます。ところがゲームで用いるリアルタイムレンダリングの場合、情報量が多すぎると瞬間的な処理ができない可能性があるため、せっかく用意したエフェクトがプレイヤーに伝わらないことがあり得ます。
そのため、ゲームエフェクトを扱う技術者は、問題の無い情報量をしっかりと把握し、抑えられる部分は抑えながら、エフェクトの効果を最大限に発揮するスキルを磨かなければならないのです。
エフェクトの具体的な作り方にはさまざまな手順や手法があります。そのためここから示すのは、ほんの一例です。例えば勇者が剣を振り下ろす際に発生する閃光のエフェクトを作る場合、まず3Dソフトを使って閃光のマテリアルとなるポリゴン形状を作ります。このポリゴンにテクスチャを貼り、ゲームエンジンを使って色などを付けて、マテリアルを完成させます。その後、マテリアルをゲームエンジンに読み込ませ、パーティクルのパラメータを設定していきます。これによって、形状やタイミング、量や場所を変化させ、エフェクトを仕上げます。
ゲームエフェクトの制作ツール
ここからは、ゲームエフェクトを制作するための代表的なツールを紹介します。
Cascade
「Cascade」とは、ゲームエンジンの一種である「Unreal Engine」に実装されたパーティクル作成ツールの名称です。
「Cascade」を使うと、読み込んだマテリアルをそのままパーティクルとして利用できますし、静的なメッシュとしても活用できます。ほかにも、半透明と不透明のどちらでも表示できること、ライティングができることなどでさまざまな表現が可能です。
なお、「Unreal Engine」はアメリカのゲーム会社であるEpic Gamesが開発しており、「Unity」と双璧をなす世界有数のゲームエンジンとして知られています。
「Unreal Engine」はリリース当初はライセンス方式を取っており、有償のソフトウェアでしたが、2015年以降は無償で提供されるようになりました。ただし、「Unreal Engine」を使ってゲームなどを作成し、そのタイトルが100万米ドル以上の売り上げを記録した場合は、Epic Gamesに対してロイヤリティを払うという課金システムがあります。
「Cascade」は2010年代には主要なパーティクルシステムとして使用されていましたが、「Unreal Engine」に「Niagara」が実装されたことで、2023年現在はレジェンド(遺産)という扱いになっています。
Niagara
「Niagara」とは、「Cascade」と同様にゲームエンジン「Unreal Engine」に実装されているパーティクルシステムです。「Unreal Engine」は無償でダウンロード可能ですし、ダウンロードすれば全機能が使用できますから、「Niagara」も無償で利用できます。ただし「Unreal Engine」を使用した作品で100万米ドル以上の売り上げが発生した場合、ロイヤリティを5%支払うというシステムが取られています。
「Niagara」は「Cascade」の後継的な位置づけで、2018年頃から利用可能となっています。後継である「Niagara」は「Cascade」と同様にモジュールとエミッターで構成されていますが、モジュールとエミッターが別々に管理できるようになったことで、エミッターが使いやすくなったメリットがあります。
より具体的に解説すると、モジュールの用途が限られていた「Cascade」ではプログラマーの協力を得なければできないことも多数ありました。一方「Niagara」は、使用者がさまざまなパラメータにアクセスしやすいように作られているので、効率よく、ダイナミックなエフェクトを生成できるようになっています。
他にも、テクスチャをサンプリングすることで色の選択がしやすくなっていますし、エフェクトの微小な調整がしやすくなっている点も利用者にとってのメリットとなっています。
Shuriken Particle
「Shuriken Particle」とは、ゲーム開発エンジンの一種である「Unity」に実装されているパーティクルシステムです。
ちなみに「Unity」は、アメリカのUnity Technologiesが提供しているゲームエンジンです。「Unity」はゲームエンジンとして世界最大のシェアを持つことで知られています。
2022年にStatista(世界150か国の情報を集め、さまざまな統計を行っている企業)が出した統計によれば、世界のゲームエンジンのシェアは「Unity」が45.6%で第1位であり、2位の「Unreal Engine」は17.1%にとどまっています。3位は特定企業ではなく、各ゲーム会社が自社開発したゲームエンジンとなっているので、「Unity」が圧倒的なシェアを誇っていることは明瞭です。
なお、「Unity Personal」は、年間収益または調達資金額が20万ドルを超えなければ無料で提供されています。2023年10月現在、2024年以降にリリースされるLTSというバージョンでは、年間の収益が100万ドルを超え、インストール数が一定値を超えた場合にランタイムフィーというコストが発生すると発表されているので、企業として使用する場合は注意が必要です。
「Shuriken Particle」には、エフェクトの継続時間やループ、事前実行や発生遅延、寿命や初速、初期サイズや初期回転角度、初期色や重力など非常に多数のパラメータがあるので、調整によって炎や水しぶき、爆発や光などさまざまなエフェクトを生み出すことができます。
ゲームエフェクトに関する仕事
この項目では、ゲームエフェクトに関連するゲーム業界の職種を具体的に解説します。細かい職種を紹介する前に、まず書いておくべきなのは、「ゲームエフェクト」は以前からゲームの中に多数存在していたものの、「ゲームエフェクト」を専門的に扱う職種ができたのは比較的最近であるということです。
ゲーム会社によって異なる点もあるでしょうが、過去にはゲームエフェクトはアートデザイナーやプログラマーが他の作業と一緒に扱うことが一般的でした。そんな中で、ゲームエフェクトの専門性が高まったのは、エフェクトを制作するツールが生み出され、ゲーム業界に導入されたことで、それを扱う人の存在も大きくなったからです。
また、近年ゲーム画像のクオリティが急激に上昇しており、迫力あるシーンを作るためにエフェクトの存在意義が高まったこともあります。
このように、ゲームエフェクトを専門的に扱う職種は比較的新しいので、需要に対して人材供給が追い付かない状態です。そのため、会社によっては他の職種と兼任していることもあります。
エフェクトデザイナー
ゲームエフェクトに特化した職種自体は比較的新しいため、ここで記載する「エフェクトデザイナー」と、次の項目で説明する「エフェクトアーティスト」は同じ職種として扱われていることもあります。
一方ここで記載するように別の職種としている場合は、エフェクトデザイナーはエフェクト自体を作成することに専念し、ゲームのシーンで動く画像として挿入していくことがエフェクトアーティストの仕事と分類されることが多いでしょう。
エフェクトアーティスト
エフェクトアーティストは、エフェクトデザイナーによって作られたエフェクトを、ゲーム内の映像に加えていく作業を担当します。
「Unity」や「Unreal Engine」などのゲームエンジンを使うとエフェクトを演出しやすいですが、ゲームエフェクトの仕事は膨大なので、素材作りなどをエフェクトデザイナーと分業することでゲーム開発を効率化できます。
ゲームエフェクト関連の職種のキャリアステップは?
ここまでに解説したように、ゲームエフェクトを専門的に扱う職種は比較的新しいので、キャリアステップもまだ固定的なものではありません。そもそもゲームエフェクトのデザイナーやアーティストはまだまだ不足している現状があるので、他の職種に移行しなくてもエフェクトを扱うスキルで生活していくことはできるでしょう。
また、エフェクトを扱う人が少ない実情を踏まえれば、ある程度技術を確立した時点で、管理者や教育者として後進を育てていくことも必要になるかと思います。
さらに、エフェクトデザイナーの希少性を活かして、エフェクトの技術で独立するという選択肢もあるでしょう。
あえてエフェクトから離れて、関連職種である背景デザイナーなどにジョブチェンジすることもあると思います。
まとめ
「ゲームエフェクト」とはどんなものかを解説し、その役割や種類、制作方法などをまとめました。また、ゲームエフェクトに関連する職種を紹介し、関連職種のキャリアステップなどにも言及しています。
ゲームエフェクトはゲームの臨場感を高めつつ、ユーザーの状況把握を助ける役割を持つ重要な要素です。それだけに、エフェクトデザイナーなどのエフェクトを扱う職種には、多様なスキルが求められます。また、ゲームエフェクトを扱う専門職者は需要に対して少ないと言われているため、エフェクトのスキルを持っている人は今ならゲーム業界に就職・転職しやすい実情があります。
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