ゲームのローカライズとは?考え方や作業詳細までを徹底解説!


2024年1月26日

世の中のグローバル化とともに、ゲームも国や地域を超えて楽しまれるようになっています。そのためゲームのローカライズに関わる仕事にも注目が集まっています。

 

そんなおりですから、「ローカライズって何をするの?」、「翻訳とは違うの?」といった疑問を持つ人も少なくないでしょう。そこでこのコラムでは、ゲームのローカライズの概要や翻訳との違いなどを解説します。ゲームのローカライズ関連の求人例も紹介しますので、仕事としてのローカライズに興味がある人もぜひ最後まで読んで参考にしてください。

 

ゲームにおけるローカライズとは?

この項目では、まずゲームのローカライズの概要をわかりやすく解説します。

 

概要説明

ゲームの「ローカライズ」とは、特定の言語や文化に基づいて作られたゲームを、海外展開する際に展開先の人たちが楽しめるようにする作業です。

 

国や文化によって、同じ展開でも受けとられ方が違いますし、暴力描写や性描写に規制がかけられる場合があります。例えば『バイオハザード』シリーズなどの激しいゴア描写を含むタイトルでは、日本の会社であるカプコンのタイトルながら日本版と海外版で表現が異なることが珍しくありません。

 

また、考え方の基盤が大きく異なる場合、もともと「楽しい展開」として作られている場面が、「不快な展開」として受け取られることもあり得ます。

 

文化の違いとして分かりやすい例に、〇と×の違いがあります。コンシューマー機のコントローラーを見ると、日本では決定は〇、キャンセルが×が一般的でした。しかし欧米では〇がキャンセル、×が決定と受け取られがちです。そのため、近年は日本で販売されるコンシューマー機の操作スイッチも×を決定とする動きが増えています。

 

このように、ある国の常識がほかの国では通用しない例は多数あります。ローカライズとは、このような違いを踏まえて、ほかの文化圏の人にゲーム本来の楽しさを伝えるために行う作業なのです。

 

「翻訳」との違いは?

ローカライズの作業には「翻訳」を含みますが、セリフや文字を単純に外国語に変えれば良いというものではありません。

 

特にゲームの名称が伝える印象は大きいので、直訳されないことが多いです。例えば『龍が如く』は英語版では『YAKUZA』とされていますし、『バイオハザード』は『Resident Evil』です。

 

また、絵柄やキャラクターの名前が与える印象が文化によって異なることを踏まえて、パッケージのデザインやキャラクターの名称が異なる場合もあります。例えば、『ポケットモンスター』の「サトシ」は海外版では「Ash(アッシュ)」に変更されています。「サトシ」という名前は日本では一般的な男子の名前として受け入れられますが、海外ではその効果は出ないからでしょう。

 

つまり、ローカライズは単に文字情報を展開先の言語に合わせて翻訳するだけでなく、どうすればその国に受け入れられやすくなるか、ゲームが本来持っている世界観や持ち味を伝えるにはどうすればよいか、といった視点で行われます。

 

ゲームローカライズにおけるポイントは?

この項目では、ローカライズの大きなポイントである「カルチャライズ」と「インターナショナライズ」について、それぞれを解説します。

 

カルチャライズ

「カルチャライズ」とは、ゲームを展開する対象となる国や地域の文化に合わせる作業です。この作業を怠ると、その地域の好みにマッチせず、ゲームが受け入れられないことが考えられます。また、文化的にタブーとされる言葉や動作、宗教上忌避される表現を変更しなかったことで、批判の対象となる可能性もあります。

 

例えばカルチャライズの一環として、キャラクターの顔つきや体形、服装をその国で受け入れられやすいように、デザインをカスタマイズすることは珍しくありません。また、日本では通常7等身のキャラクターが演出上3等身になっても違和感なく受け入れられますが、海外では同じキャラクターとして理解されなかったり、3等身のキャラクターが子どもと勘違いされたりすることもあり得ます。

 

さらに、イスラム教徒が多い地域であれば、豚肉を食べる表現があった場合に別の肉に変えるなど、宗教的にNGに当たる表現を変更することもあります。ほかにも、暴力表現や性的表現の許容範囲は国や地域によって異なるので、カルチャライズすべき場合もあります。

 

とはいえ、上記に配慮する上でゲーム性が失われてしまったら意味がありません。そのためカルチャライズを担当する場合、扱うゲームの世界観やテーマと、展開先の文化や宗教の両面を踏まえなければなりません。

 

インターナショナライズ

「インターナショナライズ」とは、ゲームシステム面で海外展開に対応するための作業です。ゲームを複数の言語圏で楽しめるようにするためには、ゲーム内の文字表記をユーザーが望む言語に変更できる方が有利です。そのため、ユーザーが設定を操作することで、表示される言語を変更できるように、インターナショナライズを行います。

 

インターナショナライズは表示を外国語に翻訳する作業ではなく、システムを変更する作業なのでエンジニアやプログラマーが関与することを特徴としています。

 

ゲームをローカライズするステップは?

この項目では、ゲームをローカライズする際のステップを5段階に分けて説明します。

 

ファミリアライズ

「ファミリアライズ(familiarize)」という英単語には、習熟する、慣れる、馴染ませる、普及させる、といった意味があります。

 

ゲームのローカライズにおいてのファミリアライズは、ゲームの内容やシステム、世界観を理解することを指します。日本で作られたゲーム内のセリフやナレーションには、日本語ならではの慣用表現が含まれていますし、そのゲームならではの造語があることも珍しくありません。そのため、ゲームのテーマや世界観を知らずに言語を置き換えただけでは本来の意味は伝達されません。

 

用語集(グロッサリー)/スタイルガイドの作成

ローカライズ業務にはゲーム会社だけでなく翻訳会社など複数の企業が関わることが多いため、ゲーム内で使用する言葉を統一する必要があります。そのため、グロッサリー(glossary)と呼ばれる用語集が、ゲームごとに作成されます。

 

また、画面上の文字表記方法やプログラム上のソースコード(コンピューターに命令を与えるための文字列)などの統一性を保つために「スタイルガイド」も作られます。スタイルガイドでは、画面表示される文字のフォントや、キャラクターの表情やポーズなどの指定も行われます。

 

翻訳の実施

用語集(グロッサリー)やスタイルガイドができたら、翻訳作業が開始されます。

 

ゲームの翻訳は、画像と音声、画面上に表記される文字という3つの要素のバランスを取りながら進める必要があります。そのため、単純に2つの言語に習熟しているだけでは業務を完遂できませんし、小説や映画の翻訳とは異なる技術が必要です。

 

また、ゲーム特有の言い回しに慣れている方が良いとされているため、ゲームプレイの経験がある方が有利とされています。

 

ボイスオーバーの実施

翻訳が終わったら、ゲームの画像にあわせて展開先の言語による音声を吹き込み、画像に重ねていきます。

 

ボイスオーバーの方法としては、音声を完全に新しい言語に変える方法と、意図的に元の音声を小さい音量で残しながら新たな音声を被せる方法に大別されます。どちらの方法を取るとしても、ゲームの進行に違和感がないように尺を考慮しながら作り上げていくことが重要です。

 

LQAの実施

「LQA(Language Quality Assurance)」は、言語品質保証と訳されます。ゲームのローカライズの翻訳やボイスオーバーのあとに、最終的な作業として実施される、チェック工程です。

 

例えば画面表記される文字に誤りがないかといったケアレスミスの確認から、全体としてローカライズによる違和感が発生していないか、展開先の文化や宗教に抵触する表現はないか、といった点までチェックが行われます。

 

仕事としてのゲームローカライズを考えてみる

この項目では、ローカライズに関連する仕事をしたいと思っている人に向けて、ローカライズに適した素養を紹介します。

 

ローカライズが向いている人は?

ゲームのローカライズを仕事にする場合、いくつかのスキルや素養がある方が有利です。まず持っていた方が有利なスキルを以下に列挙します。

 

・日本語とそれ以外の言語をネイティブレベルで扱うスキル

・海外文化の知識があることや、文化の違いを理解しようとする意識があること

・ゲームプレイの経験

・元のゲームの楽しさをできるだけそのまま伝えようとする意識

 

上記の4点をひとつずつ解説します。

 

日本語とそれ以外の言語をネイティブレベルで扱うスキル

日本のゲームを海外向けにローカライズする場合でも、海外のゲームを日本国内向けにローカライズする場合でも、日本語とそれ以外の言語を扱うスキルを持っていることが大前提です。そして、できればその言語をネイティブと同等に使えることが望ましいでしょう。

 

海外文化の知識があることや、文化の違いを理解しようとする意識があること

ゲーム開発は、中心となる開発者の文化をベースとして行われます。海外や異世界を舞台にしたゲームも多数存在しますが、日本で開発されていればセリフや文字表記は日本語ですし、日本人が理解しやすいように作られるのが基本です。

 

そして、国や文化圏ごとに独特の習慣や固有の表現などがあるので、直訳してもゲームの意図は伝わりません。また、場合によっては直訳することによって、相手に不要な嫌悪感を抱かせてしまうこともあり得ます。

 

そのため、相手の国や地域の文化を理解していることや、現在以上に理解しようとする意識をもち続けることが重要です。

 

ゲームプレイの経験

ゲームは他の娯楽とは異なり、画像と音声と画面上の文字という3種類の情報を同時に伝える特徴を持っています。また、テレビドラマや映画とは異なり、進行の速度がユーザーによって変わること、ストーリーの分岐が多数存在することなどの特徴もあります。

 

そのため、小説や映画の翻訳が得意であっても、ゲームをプレイした経験がない人には、ゲームのローカライズは難しく感じるでしょう。

 

元のゲームの楽しさをできるだけそのまま伝えようとする意識

ゲームのローカライズで最も重要なのは、そのゲームが本来持っている楽しさを、異なる文化や言語を持つ人に可能な限りそのまま伝えようとすることです。そのため、時には「正しい翻訳」にこだわることでゲームの面白さを伝えられない可能性があります。

 

例えば笑いのツボは文化によって異なるので、言葉を翻訳しただけでは本来笑えるシーンが意味不明なシーンになるのはよくあることです。このような事態を防ぐには、そのゲームが持っている楽しさをできるだけそのまま伝えようとする意識を持ち続けることが重要です。

 

ゲームローカライズに関連する仕事情報

この項目では、ゲーム業界に特化した転職エージェントである「G-JOBエージェント」のサイトに掲載されたローカライズに関連する仕事情報を紹介します。なお、ここで紹介するのはあくまでもG-JOBエージェントのサイトに掲載された求人の例であって、常時募集しているものではないことを御了承ください。

 

〇求人名:ローカライズディレクター【言語不問】

・募集年収:500万円~800万円

・勤務地:東京都目黒区

・雇用形態:正社員、契約社員

・業務内容:ゲームの海外配信担当メンバーの募集/海外の市場調査/海外展開の戦略・方針策定/ローカライズ計画策定・管理/海外コミュニティ戦略の策定・管理

・必須スキル:バイリンガル(日本語必須、もう片方の言語は地域不問)/ローカライズ業務に伴うディレクション経験/海外市場への理解/ゲーム業界経験/プロジェクトマネジメントの経験

・歓迎するスキル:アニメやゲームが大好きで精通されている方/ローカライズ担当言語での生活経験が長く、ローカライズだけでなく海外文化をご存知の方/自ら問題をキャッチアップし実行フェーズまで落とし込める方/他部署や社内外で柔軟なコミュニケーションが取れる方/エンタメ業界問わず、海外事業に携わっていた経験がある方、もしくは海外市場トレンドの理解がある方

 

〇求人名:ローカライザー・コーディネーター/和英/東京

・募集年収:前職をベースに考慮

・勤務地:東京都渋谷区

・雇用形態:契約社員、業務委託

・業務内容:

【ローカライザー】ゲームの翻訳業務に対応/原文の品質をそのままに、広く英語圏の方に受け入れられるようなローカライズ業務

【コーディネーター】ゲームを英語圏向けにローカライズするにあたり、必要な翻訳以外の様々な業務を行う/翻訳されたもののゲームへの実装、実機確認/校正/翻訳関連資料作成、編集、管理

 

・必須スキル:

【ローカライザー】英語が母国語かつ日本語が堪能な方/文章を書くのが好きな方/和英翻訳の経験が一年以上ある方

【コーディネーター】日本語が母国語レベルの方/英語が得意な方(TOEIC700点相当以上)

 

・歓迎するスキル:

【ローカライザー】北米の文化(テレビ、映画、ゲーム等含む)に詳しい方/英語圏のスマホゲームを日常的にプレイしている方

【コーディネーター】英語圏の文化(テレビ、映画、ゲーム等)に詳しい方/ゲームを日常的にプレイしている方/翻訳に携わった経験がある方

 

なお、一般の求人サイトでは「ローカライズ」という言葉で検索をかけると、ゲーム業界だけでなく、映画やドラマ制作などの求人も無数に出てきます。一方、「G-JOBエージェントはゲーム業界の求人に特化しているので、興味のない情報を選り分ける必要がありません。

 

以下のページで、ゲーム関連の「ローカライズ」の募集を確認できますので、ぜひ参考にしてください。

「G-JOBエージェント 「ローカライズ」の求人一覧」

 

まとめ

ゲームのローカライズについて、業務としての概要や工程をまとめました。また、これからゲームのローカライズに関連する仕事をしたいと思っている人に向けて、ローカライズに関わる人に求められるスキルや素養も紹介しています。

 

ゲームのローカライズには多言語を扱うスキルや異文化への理解などが必要ですが、何よりも重要なのは「それぞれのゲームの楽しさ」を伝えようとする気持ちを持っていることです。

 

また、ゲームのローカライズに関わる仕事をしたい人には、ゲーム業界に特化した求人サイト:「G-JOBエージェント」を利用することをおすすめします。G-JOBエージェントのサイトには、ゲーム関連の求人だけが無数に掲載されていますし、エージェントもゲーム業界に特化していますから、ゲーム業界への転職を望む人に適切なサポートを提供できます。ゲーム業界への転職なら、ぜひG-JOBエージェントをご利用ください。

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