ゲームを面白くするレベルデザインとは?基本概念から応用テクニックまで


2025年5月8日

ゲーム開発を行ううえで「レベルデザイン」は非常に大きな意味をもちます。しかし、レベルデザインは「難易度調整」と誤解されていることが多いため、その重要度がまだ浸透していない様子が見られます。そこでこのコラムでは、レベルデザインの定義や役割を解説したうえで、レベルデザインに関する入門編となる知識を紹介します。

 

レベルデザインとは何か

ゲームの「レベルデザイン」は「レベル」という言葉を含んでいることから、ゲームの「難易度調整」と勘違いされがちです。しかし、難易度調整はレベルデザインに含む要素ではあるものの、全体の一部でしかありません。以下の項目で、ゲームのレベルデザインの定義や役割、ゲームデザインとの違いなどを解説します。

 

レベルデザインの定義と役割

「レベルデザイン」という言葉は、残念ながら二文字や四文字の熟語で表される言葉ではありません。

 

ある人は、「ゲームをプレイするための環境デザイン」と説明しますが、では背景やステージをデザインする仕事か、というとそれを含むもののそれだけではありません。またある人は、レベルデザインを「プレイヤーがゲームを楽しむための空間づくり」と表現します。

 

たとえば、ダンジョン攻略をする場面のために洞窟や遺跡のビジュアルデザインやモデリングをする、という作業だけではレベルデザインの全体ではなく一部でしかありません。ゲーム開始直後のダンジョン攻略なので、比較的難易度低めに罠や倒しやすい敵を配置し、キャラクターの初期的な能力を出させて攻略できるように空間をデザインする、というゲームの楽しみを最大化するためのギミック配置や空間設計がレベルデザインなのです。

 

上記はゲーム開始初期の例ですが、当然キャラクターの育成やプレイヤーの熟練度が上がれば、プレイヤーが飽きずに楽しむための難易度設定も高くなります。しかし、最初に攻略できるステージからいきなり難易度が高すぎるとプレイヤーのやる気はそがれて、ゲームから離れてしまうでしょう。

 

そのため、プレイヤーがゲーム全体を楽しめるように配慮しながら、罠や敵の強度・配置を設定し、プレイヤーに行ってもらいたい行動も想定しながらステージや環境を整えていくのがレベルデザインの目的であり役割です。

 

ゲームデザインとの違い

ゲームデザインとレベルデザインは混同されがちですが、明確な違いがあります。ゲームデザインはゲームの世界観や大まかなシステム設計を指す言葉であり、作業の時系列としてはレベルデザインより先に行われます。

 

レベルデザインはゲームデザインで定義された世界観やゲームの方向性を踏まえて、具体的なゲーム上の行動やステージを設計する仕事なので、ゲームデザインがしっかりしていなければレベルデザインもちぐはぐなものになる可能性があります。

 

レベルデザインの歴史と進化

 

ここでは、レベルデザインの歴史や進化について解説します。

 

初期のゲームにおけるレベルデザイン

レベルデザインは1970年代の初期のゲームでも行われていたものの、レベルデザイナーという職種は存在しませんでした。当時のゲームはルールや構成がシンプルだったので、レベルデザインの作業もプログラマーの業務の一環として行われる程度だったからです。

 

まるで作家がひとりで物語を生み出すように、当時のゲーム開発もひとり(あるいは少人数)で完結可能な状況だったのです。

 

技術の進歩とレベルデザインの変遷

前の項目で記載したようにレベルデザインがプログラマーの仕事の一部であった時代は過ぎ去り、1980年代になるとハードウェアの高スペック化やゲームに求められるクオリティの高騰、見込める利益の増大が進みます。すると自然とゲーム開発が分業で行われるようになり、やがてレベルデザインを担当する職種も誕生します。

 

1983年にアメリカでリリースされた「Lode Runner」というゲームの開発ではレベルデザインを分業していることがわかっています。

 

レベルデザインの基本要素

この項目では、レベルデザインを行う際に基本となる3つの要素について、個別に解説します。

 

空間設計

レベルデザインの中でも空間設計は非常に重要です。ゲーム内の空間は単なる入れ物ではなく、ゲームをプレイする感覚や攻略の難易度も左右するからです。そのため、レベルデザイナーの仕事を「ゲーム空間デザイナー」と表現する人もいるほどです。

 

敵キャラクターとアイテムの配置

前の項目で解説した空間設計に次いで行うべきなのが敵キャラクターやアイテムの配置です。どの段階でどの程度の強さの敵を配置するか、罠などのギミックをどこにどの程度置くかでゲームの難易度は激変します。そのため、敵やアイテム(ギミック)の配置はゲームの進行度や、到達していると予想される育成度合いを踏まえて行う必要があります。

 

難易度調整

難易度調整はゲームの楽しさのカギを握る最重要課題です。ゲームの前半から後半に向かって難易度が上がるのは当然ですが、近年のゲームはレベルアップがシームレスに行われることが多いので、昔のゲームほどレベルによる強弱の差が明確ではありません。そのため、前半から後半に向かって直線的に難易度が上がっていくゲームは現代では好まれないでしょう。

 

また、高難易度のステージに部分的に低難易度のギミックを配置することで、困難ななかでの一瞬の心地よさを提供する手法もあります。さらに、プレイヤーにとって操作が難しいと思える組み合わせ技などでしかクリアできない敵やギミックを配置することで、高等テクニックでクリアする達成感を設計する場合もあります。

 

このようにレベルデザインで考えるべきことは多岐にわたりますが、ゲームの面白さを決定する工程なので、レベルデザインは大きなやりがいのある仕事です。

 

効果的なレベルデザインの手法

ここでは、レベルデザインを行ううえで効果的な手法3種類を解説します。

 

プレイヤーの動線設計

プレイヤーの動線設計を考えることでレベルデザインがしやすくなります。その際いわゆる「正解ルート」や「最短ルート」をまず設計し、そのルートにユーザーを誘導すればユーザーはゲームを楽しくクリアできます。

 

この正解ルートは、英語圏ではCritical Path、あるいはGolden Pathと呼ばれてレベルデザインの重要な要素と考えられています。

 

視覚的誘導と手がかりの配置

探索を要求されるゲームにおいては、プレイヤーが適度な手がかりを得られることが重要です。文字や音声で行き先を誘導する方法もありますが、プレイヤーにとって自然な行動と認識できるように視覚的な情報で誘導するのがおすすめです。

 

たとえば遠くに街が見えたり、目立つ物体があったりすると、プレイヤーはそこに向かう動機を得るので、自発的に冒険や探索をしている楽しみを得られます。

 

リズムとペース配分

敵やパズルなどの障害や得られる報酬の配置は、リズムとペース配分を重視しましょう。

 

カジュアルなゲームデザインであれば比較的容易に次々とクリアできる心地よさが求められるでしょうし、高難易度を前面に出したいわゆる「死にゲー」であれば容易にクリアできない場面が多くなります。

 

しかし、どちらの場合も単調になると飽きられてしまうので、達成感や心地よさ、難しさと再チャレンジしたくなる程度の失敗を、リズムよく配分する設計が求められます。

 

レベルデザインの実践例

この項目では、レベルデザインで成功したタイトルと失敗例を紹介します。

 

成功したゲームのレベルデザイン事例

2019年に任天堂がリリースした『スーパーマリオメーカー2』では、レベルデザインにおいて以下のような工夫が行われています。

 

・倒すべき敵を視覚的に認知させる

・敵と足場が同時に動くという空間設定による難易度を用意

・小さな報酬を与えつつ攻略のヒントを提供

・色による攻略ルートへの誘導

・強力なラスボス登場で緊張感を上昇

・それまでに配置してきたヒントや経験値の組み合わせによって程よいチャレンジで攻略達成

 

上記には当コラムの「効果的なレベルデザインの手法」で紹介した「プレイヤーの動線設計」、「視覚的誘導と手がかりの配置」、「リズムとペース配分」がすべて組み込まれており、レベルデザインを学ぶ上での好例と言えるでしょう。

 

失敗から学ぶレベルデザイン

ゲームは敵を倒したり課題をクリアしたりする際に喜びを提供してくれますが、なんの工夫もなく成功できるようでは面白味を得られません。そのためレベルデザイナーは、プレイヤーに失敗体験を容易する必要があります。

 

その際、わけが分からないまま失敗するだけでは再チャレンジの動機を得られず、プレイヤーはそのゲームから離脱します。これを踏まえて、失敗した理由や攻略の糸口を提示して、「次はうまくいく」と思わせることが重要です。つまり、失敗から学ぶレベルデザインを意図的に組み込むことで、プレイヤーに達成感を提供できます。

 

レベルデザインのツールとリソース

レベルデザインを成功させるには、ツールやリソースを適切に活用することが欠かせません。以下では主要なレベルデザインツールと学習リソースやコミュニティについて解説します。

 

主要なレベルデザインツールの紹介

レベルデザインには空間データの把握などが欠かせないので、ツールの適切な利用が重要です。代表的なツールとしては、ゲームエンジンとして高い知名度をもつUnityやUnreal Engineがあります。

 

学習リソースとコミュニティ

レベルデザインを学ぶ上では、専門書やオンライン講座の利用がおすすめです。プロ向けとしては比較的安価な専門書を紹介します。

 

3Dゲームをおもしろくする技術 実例から解き明かすゲームメカニクス・レベルデザイン・カメラのノウハウ | 大野 功二(著) SB Creative

 

また、レベルデザインの学習リソースはUnityやUnreal Engineも提供しています。以下はUnreal Engineが扱っている講座です。

ゲーム開発のためのレベルデザイン講座 | Unreal Engine

 

ゲーム会社におけるレベルデザインをする職種「レベルデザイナー」とは?

ここまで紹介してきたレベルデザインの業務を担うのは、「レベルデザイナー」という職種です。レベルデザイナーは、ゲームデザインに沿ってゲームを面白くするために空間構成や難易度調整、敵やギミックの配置などを行います。

 

そのため、レベルデザイナーはゲームの面白さを理論的に知っている必要がありますし、演出力も要求されます。また、実際にレベルデザインを行ううえでUnityやUnreal Engineなどのツールを使う技術も必要です。

 

まとめ

ゲームにおける「レベルデザイン」について解説しました。レベルデザインはゲームの面白さを最大化するために行う空間構成や難易度調整などを指します。そのため、レベルデザインがしっかり行われているタイトルは一貫した面白さがあります。

 

レベルデザイナーはゲームのプレイ感を左右する重要な職種ですが、それだけにやりがいもあるので、この機会にレベルデザイナーへの転職を考えてみてはいかがでしょうか。

G-JOBエージェントの求人は、約70%が非公開求人
  • サイト上に掲載されている求人は全体の約30%です。
  • 無料転職サポートにお申込みいただくと、非公開求人を含めてエージェントがあなたの希望に合った求人を探します。