ゲームエンジンとは?種類・特徴・メリット・ゲーム開発に必要なスキルを解説
2023年3月8日
ゲームエンジンとは、ゲームを制作するために必要不可欠な開発環境です。ゲームエンジンがゲーム開発に必要な機能やプログラム、素材などをまとめて提供してくれるので、効率良く高品質なゲームを制作できます。
ゲームエンジンにはさまざまな種類があり、状況によってどのようなエンジンを選ぶべきかが異なります。このコラムでは、ゲームエンジンとは何か、ゲームエンジンの種類、ゲームエンジンを使って開発する際に必要なスキルなどについて解説します。ゲームエンジンに関する基本的な疑問は、本コラムを読めば解決するでしょう。
ゲームエンジンとは
ゲームエンジンとは、簡単に言うと「ゲーム開発のために必要な要素が詰まった開発環境」のことです。開発コンソールやゲーム用のライブラリ、素材、機能などがまとまっています。
ゲームエンジンがあればプログラミングは不要、というわけではありませんが、必要な機能が揃っているのでゲーム開発を効率良く進められます。
ゲームエンジンの必要性
ゲームエンジンが必要な理由は、ゲーム開発を効率良く進めるため、そして、高品質なゲームを開発するためです。
すでにご説明したとおり、ゲームエンジンにはゲーム開発を効率化するためのさまざまな機能が備わっています。プラットフォームに依存しない開発環境や、そのままゲーム開発に使える部品や機能などが挙げられるでしょう。
ゲームを開発する際には、コンシューマー機やパソコン、スマホなど開発したいプラットフォームに合わせて開発する必要があります。しかし、ゲームエンジンがあれば、プラットフォームを問わず開発が可能なので非常に便利なのです。
また、すでに出来上がっている部品や機能を使って開発できれば、一から開発するよりも開発効率が上がるのは言うまでもありません。たとえば、「3Dキャラの動き」などがすでに完成されていれば、そこにカスタマイズを加えるだけでそのまま使えます。しかも、出来上がっている部分はもともと高い品質が保たれています。そのため、ゲームエンジンを使う方が効率良く高品質なゲームを制作できるのです。
ゲームエンジンに備わっている機能を一からすべて集めるのはコストや手間がかかりますが、ゲームエンジンさえあれば必要なものはほとんど揃います。ゲームエンジンには有料のものもありますが、ランニングコストがかかってもトータルで見るとコストパフォーマンスが良いと言えるでしょう。
選び方のコツ
ゲームエンジンの選び方には、いくつかのコツがあるのでご説明します。
・費用
ゲームエンジンには一切費用がかからないものもあれば、基本機能は無料だがグレードアップすると有料になるなどのタイプもあります。また、買い切りタイプや、年額制などランニングコストがかかるタイプ、開発したゲームが売れたら利益によってロイヤリティが発生するタイプなどもあります。
そのため、どのタイプがよいのか、費用がいくらかなどを、しっかりと見極めることが大事です。個人で楽しみたいのか、ゲームを売りたいのか、どれくらいの規模で売りたいのかなどによって、適したタイプは異なります。今後ゲームエンジンをどのように使っていきたいのかを考えて、自分に合った費用のゲームエンジンを選びましょう。
・使用するプログラミング言語
ゲームエンジンによって、使用するプログラミング言語が異なります。たとえば、UnityならC#、Unreal EngineならC++などです。自分が得意な言語やこれから習得するつもりがある言語を使うゲームエンジンを選びましょう。
→「ゲーム制作のプログラミング言語完全ガイド 学習難易度や年収アップのコツも解説!」
・日本語の情報の充実度
ゲームエンジンには海外製のものが多く、日本人の利用者が少ないことも珍しくありません。その場合、日本語の情報がほとんどないことも多く、困る場合もあるでしょう。
英語の情報を収集できるならあまり気にする必要はありませんが、日本語情報が欲しい場合は注意しましょう。事前に日本語情報をネットで調べてみて、情報量が多いかどうかを確認してみてください。
・プラットフォームへの対応状況
自分が作りたいプラットフォームに対応しているかどうかも、要確認です。Windows上で動くゲームを作りたいのか、スマホアプリゲームを作りたいのかなどによって、適したゲームエンジンを選びましょう。
・普及率
そのゲームエンジンが今どれくらい普及しているかも重要です。Unityのように人気が高く利用者が多いゲームエンジンなら安心です。しかし、利用者が減少傾向にあるゲームエンジンの場合、アップデートやバージョンアップなどもほとんどなくなり、不便なことが増えるでしょう。今どれくらい普及しているか、今後も使われそうなのかなども確認しましょう。
ゲームエンジンの種類・特徴
ここでは、いくつかのゲームエンジンの特徴についてご説明します。
Unity
Unityは、特にスマホアプリゲームやインディーズゲームの開発でシェアが高いゲームエンジンです。マルチプラットフォーム対応しているので、パソコン、スマホ、コンシューマー機などのさまざまなゲーム機での開発が可能です。
メリットとしては、動作が軽く高スペックパソコンがなくても使えるという点です。また、アセットストアでゲーム開発に役立つ3Dモデルなどの素材やプラグインなどの機能を、必要に応じて購入できるのも大きなメリットです。しかも日本語情報も充実しているので、英語が苦手な人でも使いやすいでしょう。
このようにメリットが多いことから、個人の開発者向けにも幅広く普及しています。Unityで使うプログラミング言語はC#ですが、他言語と比べると比較的習得しやすいでしょう。このようにUnityにはメリットが非常に多く、致命的なデメリットはあまり見当たりません。
有名なゲームでは、「ポケモンGO」や「スーパーマリオ ラン」などの開発に採用されています。
Unityの料金は年額制で、以下のとおりです。
【料金】
プラン |
Personal |
Plus |
Pro |
料金 |
無料 |
48,394円/年 |
267,960円/年 |
参考:https://store.unity.com/ja/compare-plans
Unreal Engine
Unreal Engineのもっとも大きなメリットは、グラフィックの素晴らしさです。美しいグラフィックの表現が可能で、個人でも壮大で美しい世界観やキャラクターが登場するゲームを開発できます。マーケットプレイスで3Dモデル、プラグイン、アニメーションを購入でき、自在にカスタマイズして自分だけのゲームを開発できます。
ブループリント機能によりプログラミングなしで開発が可能なのもメリットの一つです。ただ、ゲーム開発の内容によってはプログラミングが必要になる場合もあり、その場合はC++を使います。C++は他言語よりも習得が難しいと言われているので、注意してください。
他のデメリットとしては、グラフィックの処理が重いため高い性能のパソコンスペックが求められる点です。スペックによっては動作が重くなり満足に開発できない可能性もあるので、一度テンプレートを動かして確認してみてください。
料金は以下のとおりですが、四半期で3,000ドル以上の売り上げがあった場合は3%のロイヤリティが発生します。
【料金】
プラン |
スタンダード ライセンス |
エンタープライズ プログラム |
カスタムライセンス |
料金 |
無料 |
$1,500/年 |
条件により異なる |
参考:https://www.unrealengine.com/ja/license
GameMaker
GameMakerはドラッグ&ドロップなどの視覚的な操作でゲームを開発でき、プログラミングがいらないゲームエンジンです。そのため、初心者でも簡単にゲームを制作できます。細かいところを作り込みたい場合は、独自言語の「GML」を使うことで、こだわったゲームを開発することも可能です。2Dエンジンなので動作が軽く開発しやすいというメリットもあります。
ただ、海外のゲームエンジンで日本ではあまり知名度が高くないため、日本語情報が少ないというデメリットがあります。英語の情報で十分という場合は問題ありませんが、日本語情報が欲しい場合は探すか翻訳が必要になるでしょう。
GameMakerの料金は以下のとおりです。
【料金】
プラン |
FREE |
CREATOR |
INDIE |
ENTERPRISE |
料金 |
無料 |
$4.99/年 |
$9.99/年 |
$79.99/年 |
参考:https://gamemaker.io/ja-JP/get
Godot
Godotは、今世界で人気が高まっているゲームエンジンです。完全無料のオープンソースソフトウェアなので、ゲーム開発にお金をかけたくない方におすすめです。動作が軽く高速で、サクサク開発を進められるでしょう。面倒な初期設定などはほとんどなく、インストールしたらすぐにゲーム開発を始められます。
ただ、新しいゲームエンジンなので、情報が少なく実績もまだそこまでありません。また、日本語情報も少ないため、英語で情報収集する必要があります。
Godotはオープンソースソフトウェアで、MITライセンスで公開されています。個人的に利用する場合はもちろん、商用で利用する場合も無料です。
Cocos2d-x
Cocos2d-xもGodotと同じように、完全無料のオープンソースソフトウェアです。かつては人気が高く多くのユーザーに使われていましたが、今は利用者が減少傾向にあります。動作が軽く必要なパソコンのスペックも低いので、非常に使いやすいです。
有名なゲームでは、「モンスターストライク」や「LINE:ディズニー ツムツム」などが開発されています。特にスマホアプリゲームの開発に強く、多くのゲームが開発されてきました。
ただ、かつては人気でしたが今では下火になっており、Unityなどに利用者が流れているようです。最近はメジャーアップデートや機能追加が行われなくなりました。そのため、今後長く使えるかというと疑問が残ります。
Cocos2d-xはオープンソースソフトウェアで、MITライセンスで公開されています。個人的に利用する場合だけでなく、商用で利用する場合も無料です。
PhyreEngine
PhyreEngine(ファイヤーエンジン)はSony Computer Entertainment Europeが制作したゲームエンジンです。一般的なゲームエンジンとは異なり、もともとはソニーのプレイステーション3向けにゲームやグラフィックを作成するツールでした。その後、Xbox360、Windows、iOS、Android、PSP、プレイステーション4などにも対応しています。そして、2018年頃にはNintendo Switchにも対応し、話題を集めました。PhyreEngineで制作されたゲームには、「ダークソウル」や「ドラゴンクエストビルダーズ」などがあります。
PhyreEngineは多くのゲームプラットフォームに対応した非常に優れたゲームエンジンです。ただ、一般的にはそこまで知名度は高くはないので、Unityのように情報が容易に手に入るわけではありません。
PhyreEngineは、開発するゲームのライセンスを受けた開発者に対して無償で提供されます。
ゲームエンジンを使ってゲーム開発をするときに必要なスキル
ゲームエンジンを使ってゲーム開発を行う際に、必要なスキルについて見ていきましょう。
ゲームエンジンを使いこなすスキル
ここまでご説明した通り、ゲーム開発を行うためにはゲームエンジンの存在が必要不可欠です。そして、ゲームエンジンをどれだけ活かせるかが、ゲーム開発の鍵になるでしょう。
ゲームエンジンにはゲーム開発に必要なすべてが詰まっています。その機能や素材を活用することで、優れたゲームを開発できます。追加パーツなどを購入すれば、表現できるゲームの世界がさらに広がりますが、どれを選ぶか、どのように組み立てていくかによってゲームの良さが大きく変わっていきます。
良いゲームを開発するためには、ゲームエンジンについて詳しく知って使いこなしていく必要があるのです。
プログラミングスキル
制作するゲームの内容にそこまでこだわりがなければ、ゲームエンジンの機能だけを使ってゲームを開発できるので、プログラミングが不要な場合もあります。しかし、より高度な機能や込み入った作りのゲームを開発する際には、プログラミングスキルが欠かせません。
たとえば、UnityではC#を、Unreal EngineはC++を使います。ゲームエンジンによって使うプログラミング言語が異なるので、ゲーム開発のためにプログラミングスキルを習得する場合は注意しましょう。これからプログラミングスキルを習得する場合は、まずはゲームエンジンを選んでから言語を選ぶことをおすすめします。
3Dモデリングスキル
3Dモデリングとは、3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)を作成するために、イラストなどの2Dデータから3Dデータを作成することです。3Dゲームには、多くの3Dのキャラクターや背景などが登場します。これらのすべての3Dモデルを作成する必要があります。3Dゲームの開発には欠かせないスキルです。
仕事例をご紹介!:Unityエンジニアの場合
ここでは、Unityエンジニアの仕事例について見ていきましょう。Unityではさまざまなことができます。
ゲーム開発
Unityを使うとさまざまなゲーム開発ができます。マルチプラットフォーム対応をしているため、スマホアプリやパソコン、コンシューマー機などさまざまなプラットフォームに対応したゲームを作れます。2Dゲームも3Dゲームもあらゆる種類のゲームも開発でき、開発中のゲームのテスト作業や修正作業なども可能です。Unityを使いこなせればゲーム開発者として活躍できる場が広がるでしょう。
フロントエンド開発
フロントエンド開発とは、ユーザーから見える側の画面の処理やユーザーが操作や入力を行う部分の処理の開発です。また、フロントエンド側とサーバー側との通信処理の開発も行います。
フロントエンド開発は、ユーザーが見る部分を開発する重要な工程です。どうすればユーザーがわかりやすいシステムが作れるのか、ユーザーの満足度を高めるためにはどうすればよいのかを考えていく必要があります。
サーバーサイド開発
サーバーサイドとは、ユーザーから見るとフロントエンドのさらに向こう側にある部分です。フロントエンドで画面や操作入力などを担当するのに対し、サーバーサイドではプログラムの処理やデータベース処理、他システムとの連携などを行います。フロントエンドから処理要求が来たら、サーバーサイドで処理を行い、結果をフロントエンドに返します。
サーバーサイド開発ではシステムの根幹を開発するため、非常に重要な部分です。システム設計スキルやプログラミングスキルなどが求められます。
データ解析
Unityエンジニアが開発に必要なデータ解析を行う場合もあります。ゲーム開発において必要なデータを収集・分析するケースもありますし、ゲーム以外の分野でも同様です。
データの活用が注目を浴びるようになり、データ解析の仕事の重要性は高まっています。大量の取引履歴や顧客情報データなどを解析してマーケティング戦略に活かすなど、データ解析は今やなくてはならないものです。今後もデータ解析の分野の需要は高まっていくでしょう。
テスト・修正
Unityエンジニアは、テストや修正ももちろん行います。
制作したツールやシステムのテスト項目を抽出し、テストを行います。バグが発生すればその箇所や影響部分を修正し、再度必要なテストを行わなければなりません。このように、テスト・修正は地味な仕事ですが、ツール開発やシステム開発にはなくてはならない重要な工程です。
ゲーム以外の開発
ゲームエンジンを使わなくてもゲーム開発はできる?
ゲームエンジンを使わなくてもゲーム開発はできますが、メリットはほぼ無いと言ってもいいでしょう。ゲームエンジンなしにゲームを開発しても効率が悪く、良いゲームを制作することは難しいからです。ただし、以下の場合のみ既存のゲームエンジンを利用せずに開発するケースもあるようです。
・ゲームエンジン自体を会社でゼロから開発し、代表作に活用する場合
大手ゲーム会社のように技術力・体力がある場合、ゲームエンジン自体を開発することもあります。創出したゲームエンジンがゲーム開発の次のスタンダードになれば、ライセンス料などで新しい利益を生み出せますし、会社自体の技術力を業界にアピールすることもできます。強みをアピールするための広告塔として、開発したゲームエンジンだけを利用したタイトルを開発することもあるでしょう。
・既存のゲームエンジンでは表現が難しいジャンルのゲームを開発する場合
今のゲームエンジンで基礎を作れないジャンルのゲームはほぼありませんが、今後独創的なゲームを作る際、既存のゲームエンジンでは全く補えないケースにぶつかるという可能性もなくはないでしょう。
ゲームエンジンにはゲームを開発するための開発コンソール、ライブラリ、素材などの、さまざまな要素が詰まっています。たとえば、「ゲームをコントローラーで操作するための処理」がライブラリに入っているので、開発者はその処理内容について考える必要はありません。ただ「ゲームをコントローラーで操作するための処理」という部品を使えばよいのです。しかし、ゲームエンジンがないと、一から「ゲームをコントローラーで操作するための処理」を開発しなければなりません。奇抜な操作方法を作り上げたいというのであればともかく、そのようなことは効率が悪すぎます。
無理してゲームエンジンなしで開発することも可能です。しかし、大企業のような技術力・体力がなければ、「ゲームエンジンを利用すれば省略できていた過程を開発する」ことに予算が割かれ、ゲームの品質に影響が出るでしょう。また、すべての部品を一から作るということは、作り込む部分が多くバグが入り込む可能性も高いといえます。
このように、ゲームエンジンなしにゲームを作ることは無駄が多くメリットが少ないため、おすすめできません。ゲームを開発する場合は、作りたいゲームに合ったゲームエンジンを選んで使いましょう。
まとめ
このコラムでは、ゲームエンジンとは何か、ゲームエンジンの種類、ゲームエンジンを使って開発する際に必要なスキルなどについて解説しました。
ゲームエンジンはゲーム開発に必要不可欠なもので、導入すればゲーム開発を効率良く進められます。ゲームエンジンにはいくつかの種類があり、それぞれ特徴や向いているゲームが異なります。自分がどのようなゲームを開発したいのかをよく考え、自分に合ったゲームエンジンを探してみてください。