【2023年版】今後のゲーム業界はどうなるのか?3つの現状と課題、求められる人材まで解説
2023年10月2日
ゲーム業界への就職や転職を目指す人にとって、「ゲーム業界は今後発展していくのか」、「関わることにリスクはないのか」といった点が気になると思います。
そこでこのコラムでは、ゲーム業界の現状や今後の展望を、数値データをもとに徹底分析します。業界の課題や求められる人材も詳しく解説しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
ゲーム業界とは
「ゲーム業界」では、ゲーム機やゲームソフトの開発、販売、運営などを行っています。
ひと口に「ゲーム」と言っても、家庭用ゲーム機やゲームセンターなどにあるアミューズメント設備でプレイするものなどさまざま。また、パソコンやスマートフォンなどプレイする環境は近年増加しています。そのため、単一のハードやプラットフォームを限定して扱っている会社もあれば、ひとつに特化せず幅広く開発や運営を行っている会社もあります。
ゲームをプレイするにはハードウェアとソフトウェアが必要なので、それぞれを作っている会社もゲーム業界の一角を担っています。
ゲームソフトを扱う会社は、ゲームの企画から発売までを行うパブリッシャーと、開発を専門とするデベロッパーに分けることができます。ゲーム開発の流れとしては、パブリッシャーがゲームを企画し、開発をデベロッパーに依頼するという形で進められることが一般的です。
とはいえ、自社で開発から販売、運営まですべてを行っている会社もありますし、デベロッパーとパブリッシャーの両方の動きをする会社もあり、企業ごとに違いがあります。
ゲーム業界の3つの現状
ここからは、ゲーム業界の現状を、3つの側面から見ていきます。
①ゲーム業界の市場規模は拡大している
角川アスキー総合研究所が2022年8月に発刊した『ファミ通ゲーム白書2022』によれば、2021年の世界のゲーム市場は約21.9兆円に達しています。
この前年は約20.6兆円でしたが、2020年は世界各地で新型コロナウイルスの感染拡大から「巣ごもり需要」が発生し、世界のゲーム市場は大きく成長した年でした(2020年のコロナ需要に関しては、当コラムの「新型コロナウイルスはゲーム業界にどのような影響を与えたのか?」の項で詳しく解説します)。その2020年と比較して2021年に約6%の成長が見えたことで、2020年の成長が単なる一時的なものではなかったことが証明されました。これらのことから、今後も世界のゲーム市場は成長していくという予想がされています。
一方、2021年の日本のゲーム市場は約1.6兆円でした。2012年から2020年までは右肩上がりで成長しています。コロナ需要で大きく伸びた2020年と比較して2021年は横ばいでしたが、全体を見れば衰退は見られず、さらなる発展が期待されています。
②国内ゲーム市場はゲームアプリがけん引
前述の角川アスキー総合研究所の『ファミ通ゲーム白書2022』で日本国内のゲームソフトの売り上げを見ると、ゲームアプリが約79%、PCゲームが約8%、家庭用ゲームが約13%となっています。数値比に違いはあるとはいえ、2012年以降、PCゲームと家庭用ゲームの総売り上げよりゲームアプリの売上規模が数倍である構図は変わっていません。つまり、日本国内のゲームソフト市場はアプリがけん引している、と言い切っても間違いではないでしょう。
③東南アジアではゲーム市場が急拡大中
近年、ベトナム、インドネシア、フィリピンなどの東南アジア諸国で、ゲーム市場が急速に拡大しています。2022年の時点で約2.7億人のユーザーが存在しており、市場規模は約50億ドル(1ドル145円換算で7,250億円)に達しているとの報告があります。通信環境や経済状態が発展しつつあることを踏まえると、上記の数値はまだ伸びるであろうと予測できます。
また、インディーゲーム開発もさかんで、インドネシアからはすでに世界で楽しまれる作品が生み出されています。これらを踏まえると、今後東南アジアから世界的ヒットタイトルが生み出されたり、ゲーム先進国から見て魅力的な市場に成長したりする未来も遠くはなさそうです。
新型コロナウイルスはゲーム業界にどのような影響を与えたのか?
この項目では、新型コロナウイルスがゲーム業界に与えた影響を解説します。新型コロナウイルスは2019年の12月に最初の感染例が報告され、短期間の間に世界中に拡散し、各地でロックダウンなどの行動制限が行われました。
外出自粛により、ゲームの需要が増加
ロックダウンによって外出ができなくなった中で、多くの人が今まで味わったことがないほど自宅などにこもって過ごすことになりました。そんなストレス過多な状況の中で、自宅で快適に過ごすことや、コロナ感染を防ぐための空気清浄機などにお金を使われる流れができました。これがいわゆる「巣ごもり需要」です。
ゲームもその巣ごもり需要で、大きく消費が伸びた分野です。「Nintendo Switchが入手できない」、「誰もが『あつまれ どうぶつの森』をプレイしている」といった状況は、普段あまりゲームに関心が無い人でも注目した話題のひとつでしょう。
巣ごもり需要は明確に数値にも出ていることが、角川アスキー総合研究所が2021年7月に発刊した『ファミ通ゲーム白書2021』で証明されています。世界のゲーム市場は2019年には約15.7兆円でしたが、2020年は31.6%も成長し、約20.6兆円に達したのです。
また、日本のゲーム市場も巣ごもり需要の追い風を受け、2019年の約1.7兆円から、2兆円を突破するなど明確な需要増加がありました。
オンライン通信でのコミュニケーション
コロナ禍で外出ができなくなったこともあって、友人やビジネス上の取引先の人と直接顔を合わせることも難しい時期がありました。そんな中で発展したのが、オンライン通信でのコミュニケーションです。
経済産業省が2020年7月に出した「2020年版通商白書」によれば、オンラインコミュニケーションツールのひとつ「Zoom」は、2020年4月のわずか1カ月間で1億人もアクティブユーザーが増加したという驚異的な数値が記録されています。Zoomはビジネスシーンで使用されただけでなく、知人とのコミュニケーションにも利用されました。
ゲーム実況動画の普及
新型コロナウイルス感染拡大による影響下では、ゲーム需要とオンライン通信によるコミュニケーションが活況になっただけでなく、ゲーム実況動画の配信も大きく伸びました。一般財団法人 マルチメディア振興センターが出した「デジタルゲームの動画視聴(ゲーム実況)に関する日米動向調査」にて、コロナ下でのゲーム実況の増加が数値化されています。
例えばアメリカでは、ゲーム実況を視聴した時間が「Twitch」と「YouTube」の両方で、2019年と2020年の1年間で倍増していると報告されています。
また、緊急事態宣言下の日本でも、2020年のゴールデンウイーク中にそれ以前と比較してゲーム配信の視聴時間が倍増したと記録されています。
ゲーム業界のトレンド
この項目では、ゲーム業界のトレンドを、「eスポーツ」、「VR」、「サブスクリプションなどの新課金」、「NFTゲーム」という4つの角度から解説します。
eスポーツ
ゲーム業界内で成長が著しい分野のひとつに「eスポーツ」があります。アメリカの統計調査プラットフォームStatistaが出したデータによれば、eスポーツ市場は2022年に14.5億ドルでしたが2023年には17.2億ドルに成長しています。また、今後も20%を超える成長が予測されており、2030年には2023年の約4倍の67.5億ドルに達すると言われています。
日本はeスポーツに関して、世界に比べると出遅れた感がありましたが、2022年は前年比約1.5倍の成長をとげ、116億円に達しています。
日本の企業各社もスポンサーや大会運営、プロチームの育成などさまざまな角度でeスポーツ業界に参入していますから、市場としての発展が期待される分野です。
VR
「VR(バーチャルリアリティー)」もゲーム業界成長のカギとなると予測される分野です。近年話題に上ることが増えている「メタバース」に関して、VRは没入感を高めるために欠かせない要素だからです。
株式会社富士キメラ総研が2023年2月に出した「AR/VR関連市場の将来展望2023」によれば、AR/VR表示器の世界市場は2030年に2021年の11.6倍である約7.4兆円を超えると予測されています。
また、ゲームを含むVRコンテンツの増加も予想されており、BtoCのVR国内市場は、2021年から2030年までに3倍に増加すると言われています。
ゲーム業界各社もVR事業での事業拡大を進めており、AppleのVRデバイス発売やソニーのPlayStation VR2のリリースなど話題が豊富です。また、Microsoftのアクティビジョン・ブリザード買収はメタバースやVR事業拡大に向けた一手であるとも言われており、VRに関連してゲーム市場の動きは活発化しています。
サブスクリプションなどの新課金
動画や音楽配信ですでに社会に定着したサブスクリプションは、ゲーム業界でも利用が進んでいます。
レポートオーシャンが2023年5月に出したプレスリリース「サブスクリプション型ゲームの世界市場の最新動向、需要、主要プレイヤー、世界概況」によれば、2022年時点で世界のサブスクリプションゲーム市場は171.6億ドルでした。そして2031年まで年平均成長率12.9%という数値で伸び続け、2031年のサブスクリプションゲーム市場は2021年の3倍を超える559.4億ドルに達すると予想されています。
ゲーム業界でサブスクリプションが普及すれば、ゲーム会社としては定額の収益を見込みやすくなりますし、ユーザーとしては一定額で様々なタイトルをプレイできるなど双方にメリットがあります。
日本のゲーム業界最大手であるソニーと任天堂もすでにサブスクリプションサービスを展開しており、今後も拡大していくことは確実でしょう。
NFTゲーム
NFTとは、Non-Fungible Tokenの略語で、代替えのない暗号資産を意味しています。よりわかりやすく言い換えると、「唯一無二のデジタルデータ」であり、コピーや偽装品でないデータを示します。
なぜこのような言葉が登場したかと言うと、デジタルデータは劣化の心配がなく無限にコピーできてしまうので、デジタル上で書いたイラストのオリジナル性が保証されないからです。そのため、作者の著作権が保証しにくいうえに、盗用でも商売ができてしまうという問題があり、NFTはその点を解決する技術として期待されています。
NFTゲームも同様で、まず作った人の権利が保障されるメリットがあります。またそれだけでなく、データの改ざんがされにくいのでチートなどの不正行為が起きにくいことも利点です。
さらに、NFTゲームは「プレイしながらお金が稼げる」という話題性もあります。NFTゲームで獲得するアイテムやキャラクターもNFTとしての価値があるので、それを売って利益が得られる場合があるのです。ほかにも、NFTによってゲーム開発者の収益が得やすくなるというメリットもあり、NFTゲームの普及がゲームを提供する側とプレイする側の双方にプラスになると予測されています。
これらの特徴から、NFTゲームは2022年から2027年までの5年間で年平均成長率32.5
%という高い水準で躍進を続けると考えられています。
今後のゲーム業界が抱える2つの課題
この項目では、ゲーム業界の問題点を、「働き手の不足」と「海外市場の拡大」というふたつの側面から見ていきます。
働き手(人材)不足
当コラムで記載してきたように、ゲーム市場全体は拡大を続けています。その一方で、働き手の不足という問題にも直面しています。これは働く人の数的不足という面もありますが、ゲーム業界では先端技術を扱うことができる優秀な人材が必要です。
具体的な例を挙げると、例えば3DCGデザイナーや各種エンジニア、VRを扱うクリエイターは明らかに不足していますし、「面白いゲーム」を作り続けるためのシナリオや企画を作る人も十分とは言えません。その上、日本では少子化が進んでいることで、就労人口自体が減っているという問題もあります。
このため、人材の育成や確保と、働き方の見直しによって効率的に働くことが日本のゲーム業界の大きな課題です。
海外市場の拡大
ゲーム業界を見るとき、一部で「日本のゲーム業界は衰退している」という声もあります。しかし当コラムの「ゲーム業界の3つの現状」の項で解説したように、ゲーム業界全体は拡大していますし、日本は2021年から2022年こそ横ばいだったものの、10年のスパンで見れば成長傾向にあると言えます。そんな中で、「日本が衰退している」というミスリードが生まれるのは、海外市場の拡大や中国や東南アジアなどのゲーム業界の発展があることにもよるでしょう。
これらの点を踏まえて現状を打開していくには、日本のゲーム会社も今以上に海外展開を意識していくことが必要です。
単に日本で作った作品を翻訳して海外に出すのではなく、海外の考え方や嗜好を取り入れることや、長い期間をかけて築かれてきた文化を理解して開発やローカライズを進めることなどの取り組みは必須となっていくでしょう。
今後のゲーム業界に求められる人材
ここまで解説してきたように、ゲーム業界は成長を続けており、多くの人材を必要としています。しかしその一方で、業界全体を取り巻く環境の変化もあるため、「誰でもいいから人手が欲しい」という状況ではなく、「必要とされる人材」が要求されています。そこでこの項目では、今後のゲーム業界に求められる人材を解説します。
コミュニケーション能力が高い人材
「ゲーム開発」というと「パソコンに向かって誰とも話さずコツコツ作業している」イメージがあるかもしれません。しかし実際のゲーム開発はプロジェクトで進められますし、高い専門性を持つ人たちによる打ち合わせや議論が頻繁に行われています。
専門性が高い職場では、一般に使用しない言葉を多く使うので、他部署の人や社外の人に説明を行うとき、わかりやすい言葉や表現に置き換えて話すことが必要です。
そのため、いろいろな立場の人と問題なく対話し、相手の意図を汲みながら自分に必要なことを提示できるコミュニケーション能力は非常に重要なのです。
プログラミングの知識や経験がある人材
まず、ゲーム業界ではエンジニア系の職種で働く人が不足しているので、プログラムの知識や経験があり、エンジニアとして活躍できる人は高い需要があります。
また、直接プログラムを組むことはないシナリオやデザイン系、企画などの職種につくとしても、プログラムに対する理解は重要です。ゲームはプログラムによって動いていますから、最低限でもプログラムの知識を持っていることでゲーム開発をスムーズに進めやすいのです。
最新技術やトレンドに興味・関心を持てる人材
ゲーム業界では、常に最新技術や新たなトレンドを要求されます。そのため、「新しいもの=面倒くさい」といった思考をする人はあまり向いていません。一方、新たな技術やトレンドに積極的に向き合える人、見たことがないものに挑むときワクワク感を覚える人なら、無理なく仕事を続けていけるでしょう。
またゲームに関しては、社会やユーザーも常に「新しいもの」を求める土壌がありますから、未知のものに挑もうとする意識がある人なら、新たな手法やジャンルを生み出し、ゲーム業界に革新を起こせるかもしれません。
ほかの業界の知見を持つ人材
ゲーム業界だけでなく、社会や経済、科学や化学、文学や美術など何らかの知見を持っていると、幅が広いものや奥が深いものを生み出せる可能性が上がります。
また、異業種から転職してきた人は、その人なりの知見やネットワークを活かして、新しい会社で独自性が高い活動ができるかもしれません。
世界的な視野を持っている人材
日本は人口自体が減っていますから、世界に目を向けることは今からの社会を生きていくうえで欠かせないことです。
また、少子化により日本人の就労人口は減っていますから、海外から来た人と一緒に働いたり、海外と仕事のやり取りをしたりすることも増えるでしょう。そんなとき、「日本人だから日本のことだけわかっていればいい」という狭い意識を持っていては、スムーズなやり取りや発展的コミュニケーションはできません。
そのため、「面白いゲームを作るため、世界でヒットするタイトルを生み出すために世界に目を向けよう」という意識がある方が、ゲーム業界で活躍して行けるでしょう。
弊社G-JOBエージェントの見解
G-JOBエージェントはゲーム業界への転職をサポートする中で、メタ認知能力と思いやりが重要だと実感しています。メタ認知能力=自身を客観視する力は、その時求められる最大のパフォーマンスを発揮するために有効です。
また、思いやりは単なる優しさではなく、ユーザーや所属企業、同僚や社会など全方向を良くしたいという思いです。ゲームは利益を上げる手段でありながら、多くの人に楽しさや夢、希望を与えます。そのため、取り巻く世界のすべてを思いやることが、ゲーム業界を支える力になると弊社は考えています。
まとめ
ゲーム業界の現状や今後の動向、課題や求められる人材などをまとめました。世界的に見てゲーム業界は発展を続けていますから、多くの人材を常に必要としています。とはいえ、誰でも良いわけではないので、業界が求める人材がどんなものかを知っておくことが非常に重要です。これからゲーム業界を目指す人は、ぜひ求められるものを踏まえて、エントリーに備えてください。
G-JOBエージェントはゲーム業界に特化しており、ゲーム会社への転職を目指す方を全力でサポートしています。ゲーム業界への転職に関する情報も多数発信していますので、ぜひ以下のサイトもご参照ください。