アートディレクター就職完全ガイド!仕事内容・年収・必要なスキルを網羅解説します
2024年8月5日
このコラムでは、ゲーム業界の職種のひとつである「アートディレクター」について解説します。アートディレクターはどんな職種なのか、どんなスキルが必要かといったことをわかりやすく解説し、さらに将来的なキャリアパスや年収などにも触れていきます。
ゲーム業界のアートディレクターという職種に興味がある、その夢に対して動き出しているという人は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
アートディレクターとデザイナーの違い
アートディレクターはデザインに関わる仕事ですが、デザイナーとは明確な違いがあります。しかし、混同されることも多いので、この項目ではアートディレクターとデザイナーの違いを解説します。
アートディレクターの主たる業務は、ゲームの映像面の指揮やクオリティコントロールです。一方デザイナーは、キャラクターやアイテム、メカニックや画面構成などのさまざまな要素を担当制でデザインします。そのため、ゲーム開発のプロジェクトにおいて、デザイナー職は複数存在しますが、アートディレクターの肩書をもつのはひとりです。
アートディレクターはさまざまなジャンルのデザイナーに対して、ゲームの世界観やクオリティを守るためのディレクション(指揮・指導し、方向性を定めること)しなければなりません。そのため、基本的にデザインの業務経験が無い人が就く仕事ではありません。
また、デザインの経験がある人なら誰でもアートディレクターとして活躍できるとは限りません。アートディレクターはゲーム全体の映像に責任をもつため、各担当者よりも視点が俯瞰的でなければならないのです。
ゲームデザイナーについて詳しく書いたコラムがあるので、ぜひ以下もご参照ください。
→「ゲームデザイナーの仕事内容とは?年収・必要なスキル・資格を紹介」
アートディレクターの業界における仕事内容の違い
この項目では、アートディレクターの仕事が業界によってどのように違うかを解説します。
ゲーム業界
ゲーム業界のアートディレクターは、ゲームの世界観を踏まえたデザインを行う責任者としての仕事をします。ゲーム開発において、「デザイン」という言葉には、キャラクターやアイテム、モンスターやメカのデザインのほか、背景デザインなど非常に多くの要素が含まれています。さらに、プレイヤーが操作するためのゲーム画面のUIデザインも必要です。
このように幅広い分野なので、アートディレクターは複数のデザイナーを統括することが一般的です。そのため、責任者としてそれぞれのデザイナーが上げてくるデザインを確認し、統一性やクオリティ管理などの観点でチェックを行うことが日々の業務となります。
また、必要に応じてデザイナーに修正を要求することもあるでしょう。さらに、ゲームディレクターのような他部署の人と打ち合わせやすり合わせをしながら、デザインや画像の決定稿を目指すことが要求されます。
広告業界
広告業界のアートディレクターは、広告を載せる媒体に応じてかなり業務が異なります。例えば媒体が新聞である場合と、テレビコマーシャルである場合は実際の仕事は大きく異なるでしょう。
とはいえ、共通している項目もあります。それは、広告を仕上げる際のデザインやアート、ビジュアル部分の責任者であるという点です。責任者として顧客が要求するクオリティを満足させ、所属部門のスケジュールと予算を管理する必要があります。また場合によっては外注業者やパートナー企業の管理も業務に含まれます。
その他業界
例えば、クライアントから依頼を受けて何らかの画像などを制作する会社や、ロゴやパッケージなどのデザインを行う会社にもアートディレクターの業務は存在します。
業務内容や会社の規模によって日々の活動は異なりますが、デザインやアートの部分のスケジュールや予算、品質の責任を負うのは、ほかの分野のアートディレクターと同様です。
アートディレクターの仕事内容
この項目では、アートディレクターの仕事内容を紹介します。
クライアントへのヒアリング
アートディレクターの仕事は、まずゲームの世界観やテーマ、狙いやターゲット、予算や納期などを、クライアントやゲームプロデューサーからヒアリングすることから始まります。このヒアリングは、これから作るゲームの映像制作のもととなるので非常に重要です。
作品コンセプトの考案
前述のヒアリングに基づいて、アートディレクターは作品の映像的コンセプトを考えなければなりません。
例えば異世界ファンタジーであっても、リアルさを重視する場合とデフォルメを効かせる場合がありますし、細かく書き込む方向なのか、あえてラフな仕上がりを強調するのかで印象は大きく異なります。
選択肢は無数にありますが、そもそものゲームの企画を生かすデザインを考え、クライアントやゲームプロデューサーの了解を得るまでがこの工程の目的です
必要なスタッフをアサイン
コンセプトが決定したら、ゲームの映像制作に必要なスタッフをアサインします。アートディレクターとしては納期を守るためのマンパワーを確保する必要がありますが、単に人数を集めればよいわけではありません。チーフ級のデザイナーについては、ゲームのコンセプトや世界観にあうスキルやセンスをもつ人が必要だからです。
とはいえ予算の都合もありますから、クオリティを守るためとはいえ無限にリソースを投入するわけにもいきません。そのため、品質、納期、予算などのバランスを考えながらスタッフをアサインするのもアートディレクターの重責のひとつです。
ディレクションを通じてクオリティを高める
プロジェクトが組まれて具体的な作業が始まったら、アートディレクターの仕事は各セクションにディレクションを出すことにシフトしていきます。求められるクオリティを守りながらコンセプトとのズレが出ないように目を配り、納期も守る必要があります。
プレゼンテーションの実施
アートディレクターはコンセプト決定時などに、クライアントや社内の責任者に向けてプレゼンテーションを行う役割ももっています。単純にデザインの方向性を見せるだけでなく、映像的な狙いや効果を、ゲーム自体のコンセプトと絡めてプレゼンを行うスキルが欠かせません。
アートディレクターの年収・給与事情
アートディレクターの平均的な年収は、450万円から650万円程度と言われています。ただし、企業の規模や業績によっても大きな差があります。
例えば350万円程度の年収でアートディレクターを募集している求人もありますし、大手ゲーム会社であれば800万円前後の年収を得ている人もいます。
年収を高く提示するゲーム会社には応募が殺到するのが一般的ですから、経験値の高さなど何らかのアピールができないと競争相手に勝てません。そのため、自身の経験値に自信がない人は、多少年収が低くてもまずは実績を積むことに専念し、スキルアップしてからより上位の企業への転職を目指すという選択肢もあります。
なお、ゲームデザイナーの平均年収は400万円から600万円と言われており、アートディレクターの方が高い年収を得られていることがわかります。このため、アートディレクターはデザイナーのキャリアプランのひとつとしても知られています。
ゲーム業界大手企業の平均年収や、職種ごとの年収を解説したコラムもあるので、以下もあわせてご参照ください。
→「【プロが語る】ゲーム業界年収徹底解説ガイド 年収は高い?低い?」
アートディレクターに向いている人の特徴はあるのか
この項目では、アートディレクターに向いている人の特徴を記載します。
課題解決力の高い人
アートディレクターは、映像制作現場における課題を解決する立場です。例えばプロジェクト内でスタッフ間のトラブルが発生したときや、納期が遅れそうなときなどに、スタッフ内に不満が残らないように調整する調停能力や、具体的な対策が提示できる人が向いています。
また、上記のように誰の目にも明確な問題だけでなく、進行している仕事の方向性やクオリティが問題ないのか、といった目線で課題に気づき、何らかの対策を打てるとアートディレクターとして活躍しやすいでしょう。
チームでの仕事が得意な人
アートディレクターは基本的にディレクションを出すことが仕事なので、常に人と接する立場です。そのため、自分ひとりで作業を進めるのが得意な人よりも、チーム全体でゴールに向かう意識をもてる人の方が向いています。
制作の観点のみならずマーケティング視点を持てる人
アートディレクターはデザイン系の職種出身の人が多いので、クオリティを高める方法や技術的な面に目が行きがちです。しかし開発しているゲームを人気タイトルにするには、制作的な視点だけでなくユーザーにどのように評価されるのかを意識する必要があります。
アートディレクターを目指すために持っていると有利なスキル・資格
アートディレクターはゲームの映像制作全般を指揮する立場なので、クリエイティブな能力と、現場をまとめていく力や管理者としての力も必要です。それを踏まえて、ここではアートディレクターがもっていると便利なものを、資格とスキルに分けて解説します。
資格
この項目では、アートディレクターを目指す人が持っていると便利な資格を紹介します。
Illustratorクリエイター能力認定試験
Illustratorクリエイター能力認定試験は、株式会社サーティファイが運営する資格認定試験です。IllustratorはAdobe社が販売しているデザイン専用ソフトで、デザイン業界の標準ソフト的な位置づけを占めています。そのため、Illustratorに対して一定以上の使用スキルや知識を持っていることはデザインを扱う仕事に就くうえでプラスになります。
Illustratorクリエイター能力認定試験には、「スタンダード」と「エキスパート」という2つの級種があり、受験者のレベルや要求される技能によって選択できます。
スタンダードはIllustratorの基本的な操作ができることや、出題に沿って正確で合理的な扱いができることを試験によって確認します。一方エキスパートでは、スタンダードより高い操作スキルと、知識を問う問題も出題されます。
Photoshopクリエイター能力認定試験
Illustratorクリエイター能力認定試験と同様に、株式会社サーティファイが運営する資格試験です。Photoshopもデザイン業界で標準的なソフトとして扱われています。
イラスト(方程式で示されるベクターデータ)を扱うIllustratorに対して、Photoshopは点の集まりであるビットマップデータを扱いますので、用途によって使い分けが行われています。
Photoshopクリエイター能力認定試験も「スタンダード」と「エキスパート」の2級腫が設定されており、スタンダードはPhotoshopのユーザーとして基本的な操作ができることや、出題の意図を踏まえて正確で合理的な操作ができることを確認します。エキスパートでは、スタンダードより高い操作スキルを持っていることが要求されますし、知識問題も出題されるので操作ができるだけでは合格できません。
ゲームクリエイターにおすすめの資格をまとめたコラムがありますので、ぜひ以下も読んでみてください。
→「ゲームクリエイターに必要な資格とは?転職に有利になる資格を紹介」
スキル
ここからは、アートディレクターが持っていると便利なスキルについて解説します。
提案力
アートディレクターには提案力も要求されます。提案力とは、単に多くのことを思いつくことではありません。アートディレクターはゲームディレクターやゲームプロデューサー、あるいはクライアントに向けてデザインのプレゼンを行う場合もあるからです。
アートやデザインに精通していない人に、色合いやデザインの意味、ユーザーに与えるイメージなどを説明し、デザインを専門としない人が持つぼんやりしたイメージを提案によって具体化していく力が必要なのです。
スケジューリングする力
アートディレクターの仕事には、スケジュールや予算の管理も含まれます。ゲーム開発はスケジュールに沿って行われますから、日々の日程フォローは非常に重要です。また、単に遅れが無いかを確認するだけでなく、遅れが出そうなときや遅れが出てしまったときも管理者の手腕が問われます。
根性論で「頑張れ」というだけではチームメンバーはついてきませんし、無理な残業が続けば健康を害するメンバーも出てきます。そのためそもそもピンチに陥らないように日々の管理を行うことや、遅れが出そうなときの対策を持っておくことも重要です。
デザインスキル・ツール利用スキル
アートディレクターはアートやデザインを統括する役割を担いますから、デッサン力や画力は必須のスキルです。
自分自身がデザインを仕上げる場合もあるでしょうが、配下のデザイナーに指示を出す場合も、言葉で伝えるよりも絵で伝えた方が早いということはあるでしょう。そのため、完成品として外部に出る作品とは別に、指示をするために描く絵もあるケースは存在するでしょう。
このとき書くのはラフな絵でしょうが、それでも一定の画力や説得力がなければ配下のデザイナーにイメージが伝わりません。また、必要十分な情報を絵で伝える能力があることが、チーム内の上位にいることの根拠にもなるでしょう。
さらに、ゲーム開発においては、場面に合ったツールを利用できるスキルも要求されます。指揮・監督する立場になれば、日進月歩で開発されるツールのすべてをトップレベルで使いこなすのは難しいでしょうが、少なくとも、各ツールがもたらす効果や使い分けを理解していることは必須でしょう。
コミュニケーション能力
ゲーム開発は、多くの場合プロジェクトで進行するので、多くの人が話し合いながら進めていきます。そのため、デザイン部門の管理者であるアートディレクターにコミュニケーションスキルは非常に重要です。
例えばデザインの実働をのみを行うデザイナーであれば、コミュニケーションを取る対象は上司や同僚のみに限定され、同じデザイナー同士の共通認識も利用できます。一方、アートディレクターは他部署との打ち合わせも行う必要がありますから、異なる立場の人と打ち合わせをして、その決定事項をチームに伝えるスキルを持っていなければなりません。
また、複数のデザイナーを統括しながら、ゲームの世界観と品質を守ることも要求されますから、聞く、話すという単純なコミュニケーションスキルだけでなく、適切な指示を出し、チームメンバーが納得して仕事ができるように対話することも欠かせません。
ディレクションスキル
アートディレクターは日々進行するプロジェクトの成果を管理し、複数のクリエイターに指示・助言・指導を与えなければなりません。そのため、相手に言いたいことを適切に伝えるスキルが必要ですし、相手によっては理解度・納得度を見ながら表現を変えなければならないこともあるでしょう。
また、局面に応じた判断力を発揮できることや、変化に対応して柔軟にプロジェクトを導けることもディレクションスキルの大事な要素です。
マネジメントスキル
マネジメントスキルとは、目標を設定して適切に伝達する力、プロジェクトの進捗を管理する力、現状を把握する力、業務に必要な専門性などが結集したものです。
ゲーム開発現場のアートディレクターとしては、まずそのプロジェクトで達成すべき使命を設定してメンバーに共有し、品質、納期、予算を守っていく必要があります。
アートディレクターのキャリアパスは?
アートディレクターはデザイナーの中で統括的な立場を担うので、アートディレクターを問題なく務めた人であれば、デザイン現場での十分な知識や管理能力、コミュニケーション能力があることが実証できていると考えて良いでしょう。
この経験やスキルを活かしてキャリアアップするのであれば、ゲーム開発業務でアートディレクターより上流側に立つ、ゲームディレクターやゲームプロデューサーを目指す方向が考えられます。ゲームディレクターやゲームプロデューサーになれば、ゲームの立ち上げ段階の企画から携わることができます。そのため、デザインという限定的な職種を離れて、ゲーム自体の全体像を作りたい人に向いている選択肢です。
あるいは、デザインの実働業務にこだわっていきたいのであれば、フリーランスとして自分自身のスキルを活かしながら生きていく方法もあります。
さらに、デザインと経営の両面に興味があれば、独立起業して、経営をしながらクライアントの要求を満たすデザインを続けていく選択もあるでしょう。
アートディレクターの求人例
この項目では、ゲーム業界に特化した転職エージェントである「G-JOBエージェント」のサイトから、アートディレクターの求人の具体例を紹介します。
なお、下記の求人は当コラムが募集を推薦するものではありません。また、以下の求人は2024年6月30日時点で実際に掲載されていた求人ですが、恒久的なものではないので、あくまでも求人例としてご参照ください。
・株式会社サイバーエージェント 【PIGG PARTY】イラストレーター(アートディレクター候補)の求人(14906) | ゲーム業界の求人・転職ならG-JOBエージェント (game-matching.jp)
【募集年収】
前職をベースに考慮
【雇用形態】
正社員、契約社員
【業務内容】
・アバターアイテム、ビジュアルのイラストレーションの制作やデザイン、アートディレクション
・プロデューサー、プランナー、技術者と連携した企画、提案や実行
・サービスの運営に関わる周辺のアートワークの制作
【必須スキル】
・イラストレーター、アートディレクターとしての実務経験
・PhotoshopやIllustratorの実務経験3年以上
・ゲームやコミュニケーションのスマホアプリや、Webデザインの経験
・基礎的なデッサン力、造形力、色彩能力
・ディレクションやマネジメントの業務経験
【歓迎スキル】
・美術系の大学や専門学校でのデザイン学習経験
・After Effects等を用いたアニメーション表現のスキル
・アバターサービスでの業務経験
【求める人物像】
・ゲームが好きでデザイントレンドにも興味がある人
・イラストレーションの可能性を一緒に広げていける人
・デザイナーとしてメディア事業に関わることに興味がある人
・幅広いサービスでチャレンジしたい意欲がある人
・コミュニケーションスキルが高い人
・常に前向きで能動的に動くことができ、チームでの成果を徹底して求めたい人
※コラムよりコメント
ゲーム業界大手の一角であるサイバーエージェントが提供しているアバターサービスに関する求人です。
有名企業でイラストレーションやグラフィックの仕事ができますし、「アートディレクター候補」としての募集なので、これからアートディレクターを目指して転職する方に適した内容です。
「G-JOBエージェント」は、上記以外にもアートディレクターに関連する求人を多数扱っています。G-JOBエージェントはゲーム業界内に太いパイプをもっているので、一般的求人サイトには掲載されない求人が豊富にありますし、業界に精通したスタッフが適切なサポートを行います。
ゲーム業界への転職希望であれば、ぜひG-JOBエージェントをご利用ください。
「アートディレクター」のゲーム業界求人情報一覧 | ゲーム業界の求人・転職ならG-JOBエージェント (game-matching.jp)
まとめ
ゲーム業界のアートディレクターという職種について、業務の内容や関連業務との違い、平均年収や必要なスキルなどをまとめました。
ゲーム業界のアートディレクターは、ゲームの開発現場において映像系の指揮・統括を行う重要な役職です。さまざまなスキルが求められる大変さはありますが、ゲーム開発の深い部分に関わる醍醐味や、プロジェクトを率いてゲームを生みだしていく喜びがあります。
また、ゲームデザイナーのキャリアパスのひとつとしても知られていますから、目指している人も多いでしょう。ゲーム業界でアートディレクターを目指すのであれば、ぜひ当コラムを参考にしてください。