テクニカルアーティストとは?仕事内容や気になる年収、求人例まで紹介
2023年10月25日
近年、ゲーム業界で「テクニカルアーティスト」という職種の有効性がささやかれるようになり、求人を行っているゲーム会社が増えています。しかし、比較的新しい職種なので「テクニカルアーティストってなに?」、「テクニカルアーティストに興味はあるが、具体的な仕事内容や必要なスキルを知りたい」という人も多いでしょう。
そこでこのコラムでは、ゲーム業界のテクニカルアーティストについて、仕事の内容や年収、必要なスキルや将来性のほか、求人例まで紹介します。ぜひ最後まで読んで、テクニカルアーティストという職種への理解を高めてください。
テクニカルアーティストとは
「テクニカルアーティスト」は、デザイナー職の人と、エンジニア(プログラマー)職の人の間に立って仲介を行うこと、両者の技術を利用して開発業務を円滑にするツールなどを導入すること、などを主な仕事とします。
テクニカルアーティストの詳しい仕事内容は次の項目で紹介します。
テクニカルアーティストの仕事内容
この項目では、テクニカルアーティストの仕事内容をくわしく紹介します。
デザイナーとエンジニアの橋渡し
ゲーム業界では、2DCGデザイナーや3DCGデザイナー、キャラクターデザイナーや背景デザイナーなど、多数のデザイン系の職種の人が就業しています。
一方、エンジニアもインフラサイドエンジニアやサーバーサイドエンジニア、フロントサイドエンジニアなど複数の職種があり、それぞれに割り当てられた仕事を遂行することで、ゲームを完成させていきます。
このように、多数の職種の協力無しには達成できないゲーム開発ですが、業務内容や知識、立場の違いなどから、意思疎通が難しくなることも起こり得ます。異なる意見がぶつかり合うだけでは、やがて収拾がつかなくなって、リリースの遅れやプロジェクトの崩壊など、最悪な事態に発展することすら無いとは言えません。とはいえ、お互いに遠慮が先行してしまい、言うべきことを言わないようになると、本気度が高い作品を生み出すことはできません。
そんなとき活躍するのが、テクニカルアーティストなのです。デザイナーとエンジニアの両方の知識、立場を理解する人が間に立てば、意思疎通に齟齬があったとしてもそれを解決できます。また双方ができることを十分に把握していれば、誰が何をすれば事態を改善できるかを整理できます。さらに、遠慮が生じたことから品質が置き去りになるような事態も、テクニカルアーティストが指摘することで柔軟に解決していけるでしょう。
業務の効率化ツールの検証・開発・導入
デザイナーとエンジニアの仕事内容や技術を理解していれば、双方に有効なツールを発想し、検証・開発・導入を行うこともできます。また、双方の作業内容を把握すれば、被って行っている無駄な作業を整理して効率化できる場合もあるでしょう。
さらに、個々の業務の手順書を作ることで、新人の加入やメンバー交代があったときの業務導入を円滑化することも可能です。
データの負荷対策
ゲームを開発する中では、円滑な動作を行うためにデータの負荷を抑える必要があります。そしてデータ量を抑えるためには、デザイナーとエンジニアの双方が協力することが有効な場合も少なくありません。そんなとき、テクニカルアーティストがいると連携がスムーズにできますから、業務効率を上げることができます。
テクニカルアーティストになるには
ここからは、テクニカルアーティストになるために必要なスキルや、持っていると役立つ資格などを記載していきます。
テクニカルアーティストに必要なスキル・能力
まず、テクニカルアーティストに必要なスキルや能力を紹介します。
DCCツールのスキル
DCCツールとは、Digital Content Creation Toolの略語です。具体的には、モデリングやライティング、リギングやシェーディング、レンダリングなどの3DCGを扱う機能を網羅したソフトウェアを指します。
使用するツールは会社やプロジェクトによって異なりますが、SideFX Houdiniや3dsMax、Autodesk Mayaなどが代表的です。
テクニカルアーティストはDCCツールのスペシャリストである必要はありませんが、プロとして使用できるスキルを持つことで、デザイナー系の人たちと対等に話すことができますし、業務の実態を把握した提案もできます。
プログラミングスキル
デザイナーとエンジニアの仲介を行うには、プログラミングの理解ができていることが必須です。会社やプロジェクトによって使用する言語は異なりますが、テクニカルアーティストを目指すのであれば、JavaScriptやPythonなどを用いてある程度のプログラミングができるようになっておきましょう。
コミュニケーションスキル
ゲーム開発はプロジェクトで行うので、どの職種の人もコミュニケーションスキルを持っていることは重要です。しかしその中でも、テクニカルアーティストは特にコミュニケーションスキルが重視されます。
そもそもテクニカルアーティストは、デザイナーとエンジニアを仲介する役割を担うので、人の話を聞いたり、双方に理解しやすい話し方をしたり、円滑に話して場をまとめたりする素養が無い人には向いていません。
ディレクション能力
「ディレクション」とは、ものごとの方向性を決めたり、指揮や指導を行ったりすることを指します。テクニカルアーティストは、デザイナーとエンジニアを仲介するだけでなく、職種間で何らかの問題が生じたときに解決に導くスキルも要求されます。
そのため、状況を冷静に把握して、実現可能な案を出し、デザイナーとエンジニアの双方が納得できる方向性を示すことができなければなりません。
テクニカルアーティストに役立つ資格
テクニカルアーティストの求人で必須の資格が上げられていることはあまりありませんが、持っていると便利な資格は複数ありますので、具体的に紹介します。
エキスパート テクニカルアーティスト:リギング & アニメーション
ゲーム開発エンジンを提供しているUnity社が運営する資格試験です。
受験に当たっては、ゲーム開発において2つ以上のタイトルをリリースした実働経験があり、数年以上業務に就いていること、C#やC++、UnityScriptなどの使用経験があること、ゲームの初期コンセプト段階からリリースまでのサイクルを体験していることのほか、複数の知識や経験があることを前提としたプロ向けの資格です。
この資格を取得していることで、テクニカルアーティストとしてデザイナー系の職種の人と対等に話し、エンジニア系の職種との橋渡しや提案を行うこともできるでしょう。
出題範囲としては、アセットやエディターのカスタマイズ、カスタムツールを使ったプロセスの自動化のほか、リギングとアニメーションのためのプロトタイプ作成、リグのセットアップとアニメーション、シーンの最適化などが上げられています。
エキスパート テクニカルアーティスト:シェーディング & エフェクト
ゲーム開発エンジンを提供しているUnity社が運営する資格試験です。受験に当たっては、ゲーム開発において2つ以上のタイトルをリリースした実働経験があり、数年以上業務に就いていること、C#やC++、UnityScriptなどの使用経験があること、物理ベースのレンダリングパイプラインに役立つマテリアルオーサリングに対して深い理解があることのほか、複数の知識や経験があることを前提としたプロ向けの資格です。
この資格を取得していることで、シェーディングとエフェクトを扱う上で必要な知識や技術を持っていることが証明できますから、テクニカルアーティストとしてデザイナー系の職種の人と対等に話すことができます。
出題範囲としては、アセットのカスタマイズ、カスタムツールを使ったプロセスの自動化のほか、レンダーパイプラインやポストプロセッシングエフェクト、レンダーやシェーダーに関する知識やエフェクトのテクニックなどが上げられています。
Photoshopクリエイター能力認定試験
株式会社サーティファイが運営する資格試験です。イラスト(方程式で示されるベクターデータ)を扱うIllustratorに対して、Photoshopは点によって描写されるビットマップデータを扱います。テクニカルアーティストとしては、IllustratorとPhotoshopを使い分けられるようになっておくと何かと便利です。
Photoshopクリエイター能力認定試験は「スタンダード」と「エキスパート」の2つのレベルが用意されています。「スタンダード」はPhotoshopの基本操作を習得していること、出題に沿って合理的な操作ができることが合格の要件とされています。一方「エキスパート」では、スタンダード以上の操作スキルが要求されますし、知識問題も出るので、操作スキルのみでは合格できません。
テクニカルアーティストの年収
テクニカルアーティストの年収にはばらつきがありますが、400~600万程度が平均的なところと言われています。テクニカルアーティストの平均年収が400~600万円であれば、一定の水準に達したテクニカルアーティストは500万円程度の年収を得ていると考えて良いでしょう。
一方、2023年9月に国税庁が発表した「令和4年分 民間給与実態統計調査 調査結果報告」によれば、日本の1年を通しての給与所得の平均は458万円とされています。
そのため、ある程度の技能を持つテクニカルアーティストであれば、周囲の多くの人より高い年収を得られると考えて良いでしょう。
テクニカルアーティストのキャリアパスと将来性
ここからは、テクニカルアーティストのキャリアパスや将来性を確認していきましょう。
キャリアパス
テクニカルアーティストは、その職に就いた時点で、デザイナーとエンジニアの両方の技術と知識を持っていること、異なる部署の人を仲介できるスキルを持っていること、状況を冷静に判断してディレクションを行えることが前提とされています。
そのため、テクニカルアーティストは、1点の技術を徹底追及するスペシャリストタイプではなく、広く状況を見て全体を統括するゼネラリストタイプの人であることが予想できます。
これを踏まえてテクニカルアーティストのキャリアパスを考えていきましょう。まずはテクニカルアーティストとして一定以上の技能や経験値を得ることが先決ですが、その先にはディレクターやプロデューサーなどの職種にステップアップしていく道が考えられます。また、海外であれば日本よりもテクニカルアーティストという存在自体を高く買ってくれることが予想できるので、海外の大手ゲーム会社でテクニカルアーティストとして活躍するという道もあり得るでしょう。
将来性
テクニカルアーティストはデザイン系のスキルとエンジニア系のスキルの両方をある程度持っており、仲介的な役割をこなすことから他者との折衝能力が高いことも裏付けられています。そのため、そのまま複合スキルを活かす道と、デザイン系やエンジニア系のどちらかに専念する道のほか、総合性を活かしてゲームを統括する職種に就くこともできるでしょう。
そのように考えると、テクニカルアーティストの仕事をこなせているのであれば、ゲーム業界内での位置はさまざまに選択できますから、将来的に職が無くなるようなことは考えにくいでしょう。
また、角川アスキー総合研究所が2023年8月29日に出した「ファミ通ゲーム白書2023」によれば、日本のゲーム業界は2019年の新型コロナウイルス感染拡大に関連する巣ごもり需要で一気に上昇し、その後2022年まで高い水準を維持しています。
そもそも日本のゲーム業界は2013年から2019年まで右肩上がりで成長していますから、ゲーム業界内だけでもテクニカルアーティストの需要は多数あります。この点からも、テクニカルアーティストの将来性は非常に明るいと考えることができます。
テクニカルアーティストの求人例
この項目では、ゲーム業界に特化した転職エージェント:G-JOBエージェントのサイトから、テクニカルアーティストの求人をピックアップして紹介します。
なお、ここで紹介するのは2023年10月時点に掲載されている求人例であり、エントリーの対象ではありません。あくまでも例としてご覧ください。
・職種:テクニカルアーティスト:プロシージャル【ジュニアクラス】
・募集年収:年収要相談
・雇用形態:正社員
・勤務地:東京都世田谷区
・業務内容:Houdiniを活用したプロシージャルワークフローの構築
・必須スキル:
〇グラフィックデザイナーもしくはプログラマーとしての実務経験
〇Houdini使用経験
〇各種DCCソフトウェアのスクリプト/プラグインの制作経験
〇ゲーム開発におけるグラフィックアセット制作全般の基礎知識
・求める人材
〇新しい技術をキャッチアップするのが好きな方
〇主体的に動き、発信することができる方
〇誰にどう利用されるか、どのように利用して欲しいかを考えられる方
〇周りと協力しながら制作できる方
https://game-matching.jp/g-job-agent/find_jobs/14730
テクニカルアーティストへの転職例
テクニカルアーティストは比較的新しい職種なので最初から目指している人は少なく、デザイナー系の職種やエンジニア系の職種から転職した人が多数存在します。もちろんゲーム業界内の転職もありますが、業界外からの転職も多数あります。
例えばテレビや映画などの映像制作で培ったCGデザインスキルをテクニカルアーティストとして活かしている人がいますし、ほかにもWebエンジニアなどからゲーム業界のテクニカルアーティストになっている例も見られます。
以下にゲーム業界のデザイナーとプログラマーの仕事について詳しく書いたコラムを張り付けますので、興味がある方はぜひご参照ください。
→「ゲームデザイナーの仕事内容とは?年収・必要なスキル・資格を紹介!」
→「ゲームプログラマーがきついと言われる理由は?年収やメリット・キャリアプランを解説」
まとめ
ゲーム業界の「テクニカルアーティスト」という職種について、仕事の内容や年収、キャリアパスや将来性などをまとめました。
テクニカルアーティストは、デザイン系の職種とエンジニア系の職種の仲介役になったり、双方に役立つツールの導入を検討したりするなど、ゲーム開発のプロジェクトを円滑に進めるために非常に大きな役割を担います。
そのため、デザインとプログラムの両方の知識や技術を持っていることが要求されますし、立場の異なる人たちを仲介し、ディレクションするスキルも求められますから、大変ではあるものの非常にやりがいがある職種でもあります。
また、将来的な活躍の場が大きいことを考えても、テクニカルアーティストはこれからさらに人気が出る職種のひとつと言って過言ではないでしょう。
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